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第7章 老狐の野望
その9 蜜壺に堕ちた虫
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老人は三つ子ビルの最上階の夜景を見下ろす窓を背にして座っている。
ノックの音がする。体格の良い給仕がドアを開けて中年男を連れてくる。男のタキシードはヨレヨレになり蝶ネクタイが解けている。
「お客様をお連れいたしました」
給仕は頭を下げて去ってゆく。男は特別室の豪華な調度を珍しそうに眺めている。老人がステッキのハンドルでコツコツと机を叩く。
「あんた…」
「はい」
「なぜ、ここに連れて来られたかわかっているか?」
「いや、どうでしょう」
「ふむ、わからんか」
「あの、わたしに御用ですか?」
老人は黙ったまま手もとのパネルを操作する。部屋の中央の空間に立体動画が投影される。
赤い光に照らされたステージで中年男がむきだしの尻を上下に動かしている。組み敷かれた娘の脚が同じリズムで揺れている。男の荒い息の下から両手で顔を隠した娘のかすかな喘ぎが漏れてくる。
腰の動きがピタリと止まる。娘は薄目を開けて指の隙間から男の様子を確かめる。男の顔が間近に迫りニッコリとほほえみかける。
「君も気持ちが良いんだね?」
「イヤ…!」
「え…そうなの? こんなに濡れてるのに」
「…だから、イヤなの」
「ああ、刺激が足りないのか」
「違う、そうじゃない!」
男は娘の手首をつかむと床の上に押しつける。腕を振りほどこうともがくたびにシュミーズからこぼれた胸が左右に揺れる。男は顔を近づけてもぎたての珈琲の実のように艶やかな乳首を舐めまわす。
「ん…あ、ああ」
「これは、好きだろ?」
「…」
「違うのか…それなら」
「イタい!」
「ほら、これだ。もっとかな?」
「イタい! 咬まないで!」
「でも、締まってるよ。ほら」
「イタい! 止めて、お願い…」
「そうか…じゃあ、これは?」
「あっ、あっ、あっ!」
男は娘の両肩を押さえてペニスをガンガン突き入れる。亀頭が子宮頚部にぶつかるたびに快感と苦痛が入り混じる。娘は涙を流しながらよがり声を押し殺す。
「どう? 良いよね?」
「…」
「君が喋らなくても、ここは正直だ」
「…」
「仕方ない、わたしは、もうイクよ」
男は大人しくなった娘の首に手を伸ばす。親指を交差させて指を巻きつけると頸動脈を圧迫する。娘の背中がのけ反って歪んだ顔が紅潮する。
「ほら、これで一緒にイケる」
「…ぐ、ぐ、ぐ」
苦悶の声と表情で男の股間が燃え上がる。膨れ上がったペニスが灼熱の金棒になってヴァギナをドロドロに溶かしてゆく。二つの体が震えながら絶頂にむかって駆け上る。
男が爆発する直前に砂を詰めた革袋が後頭部を直撃する。娘の上にグニャリと体が崩れ落ちる。体格の良い給仕が男の襟首をつかんでステージの上を引きずってゆく。
娘が息を吹き返し大きく胸を波打たせる。膝を立てて開いたままの股間が大写しになる。パックリ開いたピンクの唇から男の白い置き土産がドロリと流れ出す。
男は口を開けてうっとりと宙を見つめている。
「感謝しろ」
「え…?」
「あんたは、人殺しにならずに済んだ」
「いや、そういうつもりは…そういえば、あの娘は大丈夫ですか?」
「バカ者!」
「ひ!」
老人は手のひらを机に叩きつける。
「どの口が、それをいう!」
「なんのことですか?」
「あの娘は愛の奴隷ではない。舞台に出演したただの素人だ」
「まさか、そんな…」
「つまり、あんたは大勢の客の前で、素人娘を強姦したということだ」
「…」
「公娼制度の復活と引き換えに、強姦は殺人や放火と等しい重罪になった。レイプ犯が物理的去勢をされることは知っているだろう。おまけにこの娘は処女だ。量刑の加算も半端ない。もちろんあんたの個人情報は公開されて、基本的人権が生涯にわたって制約される」
「待ってください。わたしだけじゃない。みんな、楽しんでいましたよ」
「あの客たちは、見ていただけだ。身体芸術を見ることを罰する法律がどこにある。あんたと娘のえげつない絡みを珍しい余興だと思って楽しんでいたのだ」
男はがっくりと膝をつく。
「わたしはどうなるんでしょう」
「助かりたいのか」
「もちろんです」
「なるほど」
「お願いします。なんとかして下さい」
男は床に頭を擦りつける。
「あの娘は、ワシと関わりがある。話をつけられなくもない」
「本当ですか?」
「ワシはウソをつかん」
「ありがとうございます!」
「では、こちらからの連絡を待て」
「はい、わかりました」
男は立ち去ろうとしてふと振り返る。
「あの…」
「なんだ?」
「あの動画を頂けませんか」
「なぜ?」
「わたしの初体験の思い出にしたいんです」
「たわけ者! 恥を知れ!」
「ひ!」
尻に火がついたように男は部屋を飛び出してゆく。
ノックの音がする。体格の良い給仕がドアを開けて中年男を連れてくる。男のタキシードはヨレヨレになり蝶ネクタイが解けている。
「お客様をお連れいたしました」
給仕は頭を下げて去ってゆく。男は特別室の豪華な調度を珍しそうに眺めている。老人がステッキのハンドルでコツコツと机を叩く。
「あんた…」
「はい」
「なぜ、ここに連れて来られたかわかっているか?」
「いや、どうでしょう」
「ふむ、わからんか」
「あの、わたしに御用ですか?」
老人は黙ったまま手もとのパネルを操作する。部屋の中央の空間に立体動画が投影される。
赤い光に照らされたステージで中年男がむきだしの尻を上下に動かしている。組み敷かれた娘の脚が同じリズムで揺れている。男の荒い息の下から両手で顔を隠した娘のかすかな喘ぎが漏れてくる。
腰の動きがピタリと止まる。娘は薄目を開けて指の隙間から男の様子を確かめる。男の顔が間近に迫りニッコリとほほえみかける。
「君も気持ちが良いんだね?」
「イヤ…!」
「え…そうなの? こんなに濡れてるのに」
「…だから、イヤなの」
「ああ、刺激が足りないのか」
「違う、そうじゃない!」
男は娘の手首をつかむと床の上に押しつける。腕を振りほどこうともがくたびにシュミーズからこぼれた胸が左右に揺れる。男は顔を近づけてもぎたての珈琲の実のように艶やかな乳首を舐めまわす。
「ん…あ、ああ」
「これは、好きだろ?」
「…」
「違うのか…それなら」
「イタい!」
「ほら、これだ。もっとかな?」
「イタい! 咬まないで!」
「でも、締まってるよ。ほら」
「イタい! 止めて、お願い…」
「そうか…じゃあ、これは?」
「あっ、あっ、あっ!」
男は娘の両肩を押さえてペニスをガンガン突き入れる。亀頭が子宮頚部にぶつかるたびに快感と苦痛が入り混じる。娘は涙を流しながらよがり声を押し殺す。
「どう? 良いよね?」
「…」
「君が喋らなくても、ここは正直だ」
「…」
「仕方ない、わたしは、もうイクよ」
男は大人しくなった娘の首に手を伸ばす。親指を交差させて指を巻きつけると頸動脈を圧迫する。娘の背中がのけ反って歪んだ顔が紅潮する。
「ほら、これで一緒にイケる」
「…ぐ、ぐ、ぐ」
苦悶の声と表情で男の股間が燃え上がる。膨れ上がったペニスが灼熱の金棒になってヴァギナをドロドロに溶かしてゆく。二つの体が震えながら絶頂にむかって駆け上る。
男が爆発する直前に砂を詰めた革袋が後頭部を直撃する。娘の上にグニャリと体が崩れ落ちる。体格の良い給仕が男の襟首をつかんでステージの上を引きずってゆく。
娘が息を吹き返し大きく胸を波打たせる。膝を立てて開いたままの股間が大写しになる。パックリ開いたピンクの唇から男の白い置き土産がドロリと流れ出す。
男は口を開けてうっとりと宙を見つめている。
「感謝しろ」
「え…?」
「あんたは、人殺しにならずに済んだ」
「いや、そういうつもりは…そういえば、あの娘は大丈夫ですか?」
「バカ者!」
「ひ!」
老人は手のひらを机に叩きつける。
「どの口が、それをいう!」
「なんのことですか?」
「あの娘は愛の奴隷ではない。舞台に出演したただの素人だ」
「まさか、そんな…」
「つまり、あんたは大勢の客の前で、素人娘を強姦したということだ」
「…」
「公娼制度の復活と引き換えに、強姦は殺人や放火と等しい重罪になった。レイプ犯が物理的去勢をされることは知っているだろう。おまけにこの娘は処女だ。量刑の加算も半端ない。もちろんあんたの個人情報は公開されて、基本的人権が生涯にわたって制約される」
「待ってください。わたしだけじゃない。みんな、楽しんでいましたよ」
「あの客たちは、見ていただけだ。身体芸術を見ることを罰する法律がどこにある。あんたと娘のえげつない絡みを珍しい余興だと思って楽しんでいたのだ」
男はがっくりと膝をつく。
「わたしはどうなるんでしょう」
「助かりたいのか」
「もちろんです」
「なるほど」
「お願いします。なんとかして下さい」
男は床に頭を擦りつける。
「あの娘は、ワシと関わりがある。話をつけられなくもない」
「本当ですか?」
「ワシはウソをつかん」
「ありがとうございます!」
「では、こちらからの連絡を待て」
「はい、わかりました」
男は立ち去ろうとしてふと振り返る。
「あの…」
「なんだ?」
「あの動画を頂けませんか」
「なぜ?」
「わたしの初体験の思い出にしたいんです」
「たわけ者! 恥を知れ!」
「ひ!」
尻に火がついたように男は部屋を飛び出してゆく。
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