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第7章 老狐の野望
その6 あるす・あまとりあ
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踊りの輪に入れない若い女が壁の花なら輪から弾かれた中年男は壁の汚点だ。
花は蝶が蜜を求めてやってくるのを待っている。目障りな壁の汚点には眉をひそめる。ほの暗い会場では汚点があることさえ気づかない。
彼の目の前で親子ほど年の離れたカップルが踊っている。女は男の首に腕を回して頭をユラユラと揺らしている。男は女の腰を抱き耳もとでヒソヒソと囁いている。
男の右手が女の尻に降りてくる。丸みに沿って手のひらを滑らせるとくねくねと指を動かす。女は手を払いのけるがチャイナドレスからのぞく太腿が男の脚をギュッと挟みこんでいる。
「お客様、こちらをどうぞ」
「うん…ああ」
給仕がトレイに載せて差し出すシャンパンを不器用に受け取る。ここでは給仕さえ彼より背が高く堂々としている。
彼は酒を飲まない。一時的な酩酊のためにやがて有害な物質に変わる液体を摂取する愚かな行動を理解できない。ただ恰好がつかないという理由でグラスを手にしている。
なにを期待してここにまで来たのかは自分でもわからない。
招待状には「愛の奴隷からご主人様へ」と書かれている。気になって開封すると古風な平面静止画が展開する。
全裸でベッドに横たわる黒髪の女が主人の爪弾く異国の弦楽器を物憂げに聞いている。自由と引き換えに与えられた腕輪や足輪や首飾りを真っ白な素肌に身につけている。女の左手はテーブルの上の水煙管から伸びたホースの先の吸い口を握っている。
彼はゴクリと喉を鳴らす。金に手足を縛られて薬物と性交に溺れた女の姿態に見惚れている。
招待状には「ブラックタイ着用」と書かれている。彼は言葉を真に受けて黒のスーツに葬式用の黒いネクタイで現れる。
受付嬢が彼を別室に案内する。美人のスタッフがにこやかに出迎えてタキシードに着替えさせる。鼻の下で揺れる長い髪から甘い香りが漂ってくる。
彼にも性欲はある。時おり訪れる苛立ちを解消するために人造女中のオプション機能を使って定期的に処理している。性欲処理の専用機ではないが家庭用の最上位機種なので十分に役目を果たしている。
彼はキッチンで食事の支度をしている時に後ろからするのが好きだ。彼女は嫌がる素振りを見せるがすぐに大人しくなる。シンクの縁に両手をつくと頭を下げて尻を突き出す。
メイド服の裾をめくって白いパンティを膝まで下ろす。着古したジャージのズボンを脱いで勃起しているペニスを握る。平均よりやや小さいがヴァギナが生体情報を読みとって調律するので問題はない。
両手でつかんだ細い腰は皮膚の手触りから骨格まで人体をそっくり模倣している。
「…優しくしてください」
彼女の発する言葉は日によって違う。そんな日は確かに職場の心理的負荷で攻撃衝動得点が高くなっている。彼は彼女の言葉で自分の精神状態を理解する。
彼がうなずくと彼女はニッコリとほほえむ。笑顔に誘われて固くなったペニスをまだ乾いているヴァギナに無理やり挿入する。彼女は目を閉じて唇を噛み小さく声を漏らす。
腰をグイグイと突き込むうちに入り口から分泌された疑似バルトリン腺液と膣分泌液が混じり合う。ペニスとの摩擦係数が下がるが膣壁の圧力が高まって適度な刺激が持続する。
やがて興奮が高まると彼は人造女中の尻を平手で叩く。
「あん…だめ…止めて」
彼女は振りむくと喘ぎながら彼を見つめる。快感と苦痛が入り混じった横顔は彼の出向先の若い部下にそっくりだ。
上司の権限でアクセスした人事情報の画像から作った頭部は顔立ちから表情の変化まで実物を見事に再現している。男好きする身体の仕様は彼の理想と妄想に基づいている。
「うう…イヤ…痛い」
彼は無言で職場のマドンナの尻を叩き続ける。嫌がる言葉と裏腹に熱く濡れたヴァギナがギュッとペニスを締めつける。彼の脊髄の射精中枢に刺激が蓄積されてゆく。
苦悶の表情と切ない声が彼の目と耳を刺激する。心拍数が上がり毛細血管にトクトクと血液が送りこまれる。膨張を続けるペニスの根元に睾丸がニュッとせり上がる。
短命な男の快感の高原状態に到達すると彼は彼女の首を絞める。ヴァギナがギュッと収縮して怒張したペニスを絞りあげる。尿道括約筋が極限まで高まった前立腺の圧力を押さえこむ。
背骨に沿ってゾクゾクと嗜虐的な快感が這いあがる。
「う、う、う…」
二人の呻きが重なってダムが一挙に決壊する。括約筋の呪縛から解放された精液がドクドクと噴きあがる。
彼は手を離してまだ震えている背中に覆いかぶさる。彼女の喉が開いて壊れた笛のようにヒューヒューと音を出す。ペニスをしっかり咥えたまま彼女はしばらくじっとしている。
子宮では事後処理が進んでいる。膣内に放出された精液を子宮頚管が吸い上げて精子の数と成分を分析する。皮膚のセンサーが計測した体温や心拍数の記録と合わせて医療情報システムのクラウドに転送する。
苛立ちが消えてペタンと床に座り込む。彼女はふりむいてしゃがみこむと彼の目の前に這ってくる。小さくなったペニスをそっと咥えて生温い精液と自分の体液を舌と唇で掃除する。
彼は目を閉じて彼女の柔らかな髪を指先でまさぐっている。無心に尽くしてくれる人造女中が愛しくなる。
ふと我に返る。
音楽が止んで会場の奥に人が集まっている。衣装を着替えたオダリスクたちが順番に明るいステージに現れる。
ある者はカルメンのハバネラをフランス語で歌いあげる。またある者は白鳥の湖のオデットのヴァリエーションを踊ってみせる。バルコニーでロミオを搔き口説くジュリエットを女優さながらに演じる者もいる。
彼は高級娼婦の隠し芸に興味はない。気の抜けたシャンパンを一息に飲み干すとグラスを置く。今夜は久しぶりに人造女中をベッドの上で可愛がってやろう。
あの手この手を考えながらにやけた顔で出口にむかう。
花は蝶が蜜を求めてやってくるのを待っている。目障りな壁の汚点には眉をひそめる。ほの暗い会場では汚点があることさえ気づかない。
彼の目の前で親子ほど年の離れたカップルが踊っている。女は男の首に腕を回して頭をユラユラと揺らしている。男は女の腰を抱き耳もとでヒソヒソと囁いている。
男の右手が女の尻に降りてくる。丸みに沿って手のひらを滑らせるとくねくねと指を動かす。女は手を払いのけるがチャイナドレスからのぞく太腿が男の脚をギュッと挟みこんでいる。
「お客様、こちらをどうぞ」
「うん…ああ」
給仕がトレイに載せて差し出すシャンパンを不器用に受け取る。ここでは給仕さえ彼より背が高く堂々としている。
彼は酒を飲まない。一時的な酩酊のためにやがて有害な物質に変わる液体を摂取する愚かな行動を理解できない。ただ恰好がつかないという理由でグラスを手にしている。
なにを期待してここにまで来たのかは自分でもわからない。
招待状には「愛の奴隷からご主人様へ」と書かれている。気になって開封すると古風な平面静止画が展開する。
全裸でベッドに横たわる黒髪の女が主人の爪弾く異国の弦楽器を物憂げに聞いている。自由と引き換えに与えられた腕輪や足輪や首飾りを真っ白な素肌に身につけている。女の左手はテーブルの上の水煙管から伸びたホースの先の吸い口を握っている。
彼はゴクリと喉を鳴らす。金に手足を縛られて薬物と性交に溺れた女の姿態に見惚れている。
招待状には「ブラックタイ着用」と書かれている。彼は言葉を真に受けて黒のスーツに葬式用の黒いネクタイで現れる。
受付嬢が彼を別室に案内する。美人のスタッフがにこやかに出迎えてタキシードに着替えさせる。鼻の下で揺れる長い髪から甘い香りが漂ってくる。
彼にも性欲はある。時おり訪れる苛立ちを解消するために人造女中のオプション機能を使って定期的に処理している。性欲処理の専用機ではないが家庭用の最上位機種なので十分に役目を果たしている。
彼はキッチンで食事の支度をしている時に後ろからするのが好きだ。彼女は嫌がる素振りを見せるがすぐに大人しくなる。シンクの縁に両手をつくと頭を下げて尻を突き出す。
メイド服の裾をめくって白いパンティを膝まで下ろす。着古したジャージのズボンを脱いで勃起しているペニスを握る。平均よりやや小さいがヴァギナが生体情報を読みとって調律するので問題はない。
両手でつかんだ細い腰は皮膚の手触りから骨格まで人体をそっくり模倣している。
「…優しくしてください」
彼女の発する言葉は日によって違う。そんな日は確かに職場の心理的負荷で攻撃衝動得点が高くなっている。彼は彼女の言葉で自分の精神状態を理解する。
彼がうなずくと彼女はニッコリとほほえむ。笑顔に誘われて固くなったペニスをまだ乾いているヴァギナに無理やり挿入する。彼女は目を閉じて唇を噛み小さく声を漏らす。
腰をグイグイと突き込むうちに入り口から分泌された疑似バルトリン腺液と膣分泌液が混じり合う。ペニスとの摩擦係数が下がるが膣壁の圧力が高まって適度な刺激が持続する。
やがて興奮が高まると彼は人造女中の尻を平手で叩く。
「あん…だめ…止めて」
彼女は振りむくと喘ぎながら彼を見つめる。快感と苦痛が入り混じった横顔は彼の出向先の若い部下にそっくりだ。
上司の権限でアクセスした人事情報の画像から作った頭部は顔立ちから表情の変化まで実物を見事に再現している。男好きする身体の仕様は彼の理想と妄想に基づいている。
「うう…イヤ…痛い」
彼は無言で職場のマドンナの尻を叩き続ける。嫌がる言葉と裏腹に熱く濡れたヴァギナがギュッとペニスを締めつける。彼の脊髄の射精中枢に刺激が蓄積されてゆく。
苦悶の表情と切ない声が彼の目と耳を刺激する。心拍数が上がり毛細血管にトクトクと血液が送りこまれる。膨張を続けるペニスの根元に睾丸がニュッとせり上がる。
短命な男の快感の高原状態に到達すると彼は彼女の首を絞める。ヴァギナがギュッと収縮して怒張したペニスを絞りあげる。尿道括約筋が極限まで高まった前立腺の圧力を押さえこむ。
背骨に沿ってゾクゾクと嗜虐的な快感が這いあがる。
「う、う、う…」
二人の呻きが重なってダムが一挙に決壊する。括約筋の呪縛から解放された精液がドクドクと噴きあがる。
彼は手を離してまだ震えている背中に覆いかぶさる。彼女の喉が開いて壊れた笛のようにヒューヒューと音を出す。ペニスをしっかり咥えたまま彼女はしばらくじっとしている。
子宮では事後処理が進んでいる。膣内に放出された精液を子宮頚管が吸い上げて精子の数と成分を分析する。皮膚のセンサーが計測した体温や心拍数の記録と合わせて医療情報システムのクラウドに転送する。
苛立ちが消えてペタンと床に座り込む。彼女はふりむいてしゃがみこむと彼の目の前に這ってくる。小さくなったペニスをそっと咥えて生温い精液と自分の体液を舌と唇で掃除する。
彼は目を閉じて彼女の柔らかな髪を指先でまさぐっている。無心に尽くしてくれる人造女中が愛しくなる。
ふと我に返る。
音楽が止んで会場の奥に人が集まっている。衣装を着替えたオダリスクたちが順番に明るいステージに現れる。
ある者はカルメンのハバネラをフランス語で歌いあげる。またある者は白鳥の湖のオデットのヴァリエーションを踊ってみせる。バルコニーでロミオを搔き口説くジュリエットを女優さながらに演じる者もいる。
彼は高級娼婦の隠し芸に興味はない。気の抜けたシャンパンを一息に飲み干すとグラスを置く。今夜は久しぶりに人造女中をベッドの上で可愛がってやろう。
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