44 / 78
第6章 転落の日々
その1 喪失の一夜
しおりを挟む
「ほら、かいでみろ…」
老人は椅子に座ったモナの顔に香炉を近づける。
蓋を開けると薄紫の煙が縁を超えて流れ落ちる。モナは両手を差し出して手のひらで受け止める。たゆたう煙にそっと鼻を寄せる。
夏の夜どこでかいだことがあるねっとりと甘い花の香りだ。頭がフワッと軽くなり体がポカポカと火照ってくる。
「どんな気分だ?」
「…落ち着きます」
「それから…?」
「いえ、別に…」
「よし、下がっていいぞ」
老人に頭を下げて昼下がりの書斎を後にする。渡された封筒を開けると思いがけない金額が入っている。
その日から週に二日モナは書斎に来るように言いつけられる。香の匂いをかぐだけでほかに用事はない。渡される金額も同じだ。
もらった金は家族に送る。母が亡くなって家からの便りは途絶えがちになっている。それでも弟や妹のために稼いだ金のほとんどを父親に送っている。
何事もなくひと月が過ぎる。
真夜中モナが目を覚ます。体が熱くてたまらない。頭はふらつき喉が渇く。
下着姿で起き出して裸足のまま部屋を出る。真っ暗なキッチンで蛇口から直接水を飲む。頭から水をかぶっても体の火照りは収まらない。
鼻の奥で絡みつくような甘い匂いがよみがえる。得体の知れない渇望が身を焦がし頭の後が痺れてくる。モナは這うように屋敷の階段を上る。
書斎の扉をノックする。
「…入れ」
モナがドアを押し開ける。鍵はかかっていない。
ガウンを着た老人が椅子に座っている。モナはよろけながら足もとにたどり着く。
「こんな夜更けに、なんの用だ?」
「あの、わたし…」
「ふむ、その恰好は…追い剥ぎにでもあったか?」
「…ああ、どうしよう」
モナは両手に顔を埋める。
「モナ、遠慮するな」
「…え?」
モナが見上げる。老人の口もとに冷笑が浮かんでいる。
「お前の欲しいものを手に入れろ」
「旦那様…」
震える手が伸びてガウンをめくる。シワのよった下腹から親指大の陰茎が生えている。モナが股間に顔を近づける。
「…失礼を…お許し…ください」
爪のない親指を口に含む。乳首に吸いつく赤ん坊のように夢中で割れ目を吸いあげる。モナが驚いて目を見開く。
親指は唇を押し分けて口いっぱいに膨れ上がる。塞がった喉から呻き声が漏れてくる。自分の手首より太い男根を吐き出して激しく肩で息をする。
「ガツガツするな…根元を握って先を舐めろ」
言葉のままに指を動かし舌を使う。皮膚が敏感になってわずかな動きが快感に変わる。老人の言う通りに動くだけで何度もイカされてしまう。
「…子供の頃から働き詰めで男と遊ぶ暇もなかったか。どうだ、いいものだろう?」
モナの頭がゆらゆらと揺れる。物欲しそうな目が老人を見上げている。
「…よし、いいぞ」
濡れた唇が老人を深く咥えこむ。男根に巻きついた喉は膣になり舌がクリトリスになる。脳が溶け出して体がグニャグニャになる。
老人はモナの後ろ髪を握って上を向かせる。
「…あの香にはワシの精が練り込んである。匂いの記憶は鼻の奥に深く刻み込まれてメスの本能を突き動かす。いまのお前はワシが欲しくてたまらない。そうだな?」
塞がれた口からダラダラと涎が垂れている。
「…お前の渇きを癒すには、もはやこれしかあるまい」
モナの目を覗きこみグイと腰を突き入れる。男根は静止したまま三度爆発をくり返す。ねっとりと甘い精液がドブドブと喉に流れこむ。
「…うう…うう…うう」
モナは目をつむり身を震わせて飢えと渇きの妙薬を吸いあげる。
老人が手を離す。モナはストンと暗やみに落ちる。わずかに開いた赤い唇が咲き損ねて地に落ちた薔薇の蕾のようだ。
書斎のドアが閉まり足音が遠ざかる。
カラスが鳴く。
薄明りの中でモナが目を覚ます。
下着姿の自分を見て昨夜の記憶が甦る。こぼれ落ちる涙の意味を指先で確かめる。モナには老人に奪われたものの名前がわからない。
両腕に顔をうずめて書斎を出る。廊下はしんと静まりかえっている。夜明け前の人気のない階段を泣きながら下りてゆく。
老人は椅子に座ったモナの顔に香炉を近づける。
蓋を開けると薄紫の煙が縁を超えて流れ落ちる。モナは両手を差し出して手のひらで受け止める。たゆたう煙にそっと鼻を寄せる。
夏の夜どこでかいだことがあるねっとりと甘い花の香りだ。頭がフワッと軽くなり体がポカポカと火照ってくる。
「どんな気分だ?」
「…落ち着きます」
「それから…?」
「いえ、別に…」
「よし、下がっていいぞ」
老人に頭を下げて昼下がりの書斎を後にする。渡された封筒を開けると思いがけない金額が入っている。
その日から週に二日モナは書斎に来るように言いつけられる。香の匂いをかぐだけでほかに用事はない。渡される金額も同じだ。
もらった金は家族に送る。母が亡くなって家からの便りは途絶えがちになっている。それでも弟や妹のために稼いだ金のほとんどを父親に送っている。
何事もなくひと月が過ぎる。
真夜中モナが目を覚ます。体が熱くてたまらない。頭はふらつき喉が渇く。
下着姿で起き出して裸足のまま部屋を出る。真っ暗なキッチンで蛇口から直接水を飲む。頭から水をかぶっても体の火照りは収まらない。
鼻の奥で絡みつくような甘い匂いがよみがえる。得体の知れない渇望が身を焦がし頭の後が痺れてくる。モナは這うように屋敷の階段を上る。
書斎の扉をノックする。
「…入れ」
モナがドアを押し開ける。鍵はかかっていない。
ガウンを着た老人が椅子に座っている。モナはよろけながら足もとにたどり着く。
「こんな夜更けに、なんの用だ?」
「あの、わたし…」
「ふむ、その恰好は…追い剥ぎにでもあったか?」
「…ああ、どうしよう」
モナは両手に顔を埋める。
「モナ、遠慮するな」
「…え?」
モナが見上げる。老人の口もとに冷笑が浮かんでいる。
「お前の欲しいものを手に入れろ」
「旦那様…」
震える手が伸びてガウンをめくる。シワのよった下腹から親指大の陰茎が生えている。モナが股間に顔を近づける。
「…失礼を…お許し…ください」
爪のない親指を口に含む。乳首に吸いつく赤ん坊のように夢中で割れ目を吸いあげる。モナが驚いて目を見開く。
親指は唇を押し分けて口いっぱいに膨れ上がる。塞がった喉から呻き声が漏れてくる。自分の手首より太い男根を吐き出して激しく肩で息をする。
「ガツガツするな…根元を握って先を舐めろ」
言葉のままに指を動かし舌を使う。皮膚が敏感になってわずかな動きが快感に変わる。老人の言う通りに動くだけで何度もイカされてしまう。
「…子供の頃から働き詰めで男と遊ぶ暇もなかったか。どうだ、いいものだろう?」
モナの頭がゆらゆらと揺れる。物欲しそうな目が老人を見上げている。
「…よし、いいぞ」
濡れた唇が老人を深く咥えこむ。男根に巻きついた喉は膣になり舌がクリトリスになる。脳が溶け出して体がグニャグニャになる。
老人はモナの後ろ髪を握って上を向かせる。
「…あの香にはワシの精が練り込んである。匂いの記憶は鼻の奥に深く刻み込まれてメスの本能を突き動かす。いまのお前はワシが欲しくてたまらない。そうだな?」
塞がれた口からダラダラと涎が垂れている。
「…お前の渇きを癒すには、もはやこれしかあるまい」
モナの目を覗きこみグイと腰を突き入れる。男根は静止したまま三度爆発をくり返す。ねっとりと甘い精液がドブドブと喉に流れこむ。
「…うう…うう…うう」
モナは目をつむり身を震わせて飢えと渇きの妙薬を吸いあげる。
老人が手を離す。モナはストンと暗やみに落ちる。わずかに開いた赤い唇が咲き損ねて地に落ちた薔薇の蕾のようだ。
書斎のドアが閉まり足音が遠ざかる。
カラスが鳴く。
薄明りの中でモナが目を覚ます。
下着姿の自分を見て昨夜の記憶が甦る。こぼれ落ちる涙の意味を指先で確かめる。モナには老人に奪われたものの名前がわからない。
両腕に顔をうずめて書斎を出る。廊下はしんと静まりかえっている。夜明け前の人気のない階段を泣きながら下りてゆく。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる