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第3章 丘の上の屋敷

その6 おもちゃのチャチャチャ

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「あんた、あのじいさんの、オモチャだろ?」
「…ちがうよ」

 キュリオの声が震えている。マリアはキュリオの顔をのぞきこむ。

「オモチャっていうのはね、好きなときに好きなことをされて、飽きたらすぐにほうりだされる。そういうものを、いうんだよ」

「ちがう」
「どう、ちがうの?」
「おじい様は…ボクを愛してくれるんだ」

「へえ、そうなんだ」
「そうさ、殴ったりしないし、いつも優しくしてくれる。ボクのいうことならなんでも聞いてくれる」

「じゃあ、あんたはなにをしてあげるの?」
「おじい様の好きなことだよ」

「どんなこと?」
「…」
「いえないの?」
「…」

「触られたり、舐められたりするのかな?」
「…うるさい」

「それとも、あんたが舐めてあげるの?」
「うるさい」

「お尻の穴に入れられるの? でも、あの年じゃ、無理かな…ああ、そうか、あんたが入れてやるんだ…ほら、さっきみたいに、ハアハアいいながら汚いケツの穴にぶちまけるんだ。ね、そうでしょ?」
「うるさい!」

 キュリオがマリアを押し倒す。マリアの上にまたがって肩を押さえつける。頬が赤くなり目は血走っている。

「…ほら、また」

 マリアは静かな目でキュリオを見つめている。

「キュリオ…あんた、ここに来て変わったっていったよね。あたしにも、変われっていったよね。ぜんぶ、ウソなんだ。あんたも、やっぱりクズなんだ」

 キュリオの体から力が抜ける。手のひらで顔をおおってシクシク泣きはじめる。

「ボクは、クズなんかじゃない。オモチャでもないよ。おじい様は、ボクを…」

 マリアがキュリオの頭を抱きよせる。涙にぬれた頬がマリアの素肌に触れる。

「あんたは、淋しかったんだ。また、一人になるのが、怖いんだよね」

 キュリオがうなずくとマリアはキュリオの頭をなでる。

「あんたが、クズでもオモチャでもいいの。あたしは見捨てたりしないから。だれかに捨てられたら、あたしが拾ってあげる。だから、もうクズじゃないよ」
「マリア…」

 キュリオが顔をあげるとマリアはにっこりとほほえんでいる。
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