Cat☆Girls 《猫娘たち》 ー 月光のシュバリエル ー

Soda Village

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第2章 天使の家

その5 壊れた人形

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 パグが目を開ける。

 ぼやけた視界の中でノッポが背中を反らせて激しく腰を動かしている。脇の下から突きだした白い脚がユラユラと揺れている。

「う、う、う…」

 ノッポの喉から声が漏れる。腰の動きが加速していまにもイキそうになっている。

 パグの心臓がドクンと音を立てる。灰色の景色が真っ赤に染まる。縛られた両脚で立ち上がるとノッポの背中を蹴り飛ばす。

 ノッポがマリアから転げ落ちる。倒れた勢いでペニスから白い噴水が吹きあがる。

「マリア…!」

 マリアは目を見開いて天井を眺めている。ブラウスの胸をはだけて縛られた両腕を頭の上に伸ばしている。むしり取られた下着が床の上に落ちている。

 ノッポがペニスをしごきながらフラフラと近づいてくる。

「お前、最高だよ…なあ、もう一回」

 パグがノッポに飛びかかる。二人が床を転げまわる。

「ぎゃ!」

 叫び声があがる。パグが身を起こして口から真っ赤な唾を吐く。ノッポの耳が床の上に転がっている。

「そこまでだ…」

 ドアのかたわらに神野司が立っている。

「君たち、兄弟を連れて行きなさい」

 外に立っているサルと半開きに声をかける。二人があわてて部屋に入る。サルがノッポに肩を貸して三人で出ていこうとする。

「あ、ちょっと…忘れ物だ」

 ポケットからハンカチを取り出して落ちている耳を拾いあげる。サルが包みを受け取ると三人はそそくさと去ってゆく。

 マリアの側にしゃがみこむ。ガラス玉のようなマリアの瞳に司な顔が映っている。

「可愛そうに…」

 床に散らばった下着を集めてポケットにしまう。結束バンドを引きちぎりブラウスのボタンをとめる。上着を脱いでマリアの体にかけると抱きあげてドアにむかって歩きだす。

「まてよ!」
「ああ、君か…忘れていたよ」

「あんたが、やらせたんだろ?」
「なんのことかな?」
「あいつらに命令して、おれを閉じこめたんだ」

 司が溜息をつく。

「彼らには君の世話を頼んだ。だが、殴れとはいっていない」
「同じことだ」
「そうだね。これはやりすぎだ。後できちんと叱っておくよ」

「つまり、あんたがボスってことだ」
「今日は弟や妹たちの大切な日だ。君がよけいなことをしてぶち壊さないようにしたまでだ。いずれ君にもチャンスが来る」

「来るわけないだろ!」
「うん、いまのままじゃ無理だね。君も彼らも」

 司の腕の中のマリアは身じろぎもしない。

「少し、頭を冷やしなさい」
「待てよ、マリアをどうする?」

「話しても分からない。分かっても、君にはなにもできない」
「…」
「それから、今日のことは人にいわない方がいい。君のためにも、マリアのためにもね」

 ドアが閉まり外から鍵がかかる。コツコツと固い足音が遠ざかる。

 部屋の中で物がぶつかり壊れる音がする。
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