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第1章 社会科見学
その10 酸素と花
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放課後の屋上に花がやってくる。
酸素は壁にもたれて花を待っている。白衣を着ているつもりだが微妙に色が変わっている。ぼさぼさの髪に奇妙な寝ぐせがついている。
花は酸素の1メートル手前でピタリと立ち止まる。
「なんのよう?」
「水木、悪いな」
「薫に頼まれたから来たんだよ」
「うん。ちょっと頼みがあって…」
「なあに?」
「まあ、たいしたことじゃない。お前のツバをくれ」
屋上にピシャリと音が響く。花が足を踏みならして去ってゆく。酸素は頬を押さえて後姿を見送っている。
イチコは両手で頭を抱える。
「うわあ、ヘンタイだ!」
「そうだよ。だから、薫に文句をいったの」
薫は花の話を聞いて爆笑する。
「なにがおかしいの?」
「あいつはカップルの相性診断テストを作ってるんだ。お互いの唾液のDNAをマッチングさせるらしいよ。女子のサンプルが欲しいっていうから、花ちゃんを紹介したんだ」
イチコが頭を搔きむしる。
「やっぱり、ヘンタイだ!」
「でも、本人は真剣だったみたいだよ」
ニコがふと顔をあげる。
「あのさ」
「なあに?」
「もしかして、あげちゃった?」
「え、まあ…うん」
花の顔がポッと赤くなる。
「いやだあ、花ちゃんまで!」
イチコは床に倒れてゴロゴロと転げまわる。
花がふたたび屋上に呼び出される。酸素との距離は2メートルに広がっている。
「今度はなに?」
「うん、例のサンプルのことだ。実はおれとお前の相性を確かめてみた」
「それで?」
「最悪だ」
「で、しょうね」
「でも、おれは気にしない」
「え?」
「だから、おれとつき合ってくれ…」
屋上にピシャリと音が響く。花が足を踏みならして去ってゆく。酸素は頬を押さえて後姿を見送っている。
「でも、つき合っちゃったんだ」
「そう、好奇心に負けたの」
花とニコは二人でうなずき合っている。
「あは、あは、あは…」
イチコは天井をむいて死にかけのゴキブリのように手足を痙攣させている。
酸素は壁にもたれて花を待っている。白衣を着ているつもりだが微妙に色が変わっている。ぼさぼさの髪に奇妙な寝ぐせがついている。
花は酸素の1メートル手前でピタリと立ち止まる。
「なんのよう?」
「水木、悪いな」
「薫に頼まれたから来たんだよ」
「うん。ちょっと頼みがあって…」
「なあに?」
「まあ、たいしたことじゃない。お前のツバをくれ」
屋上にピシャリと音が響く。花が足を踏みならして去ってゆく。酸素は頬を押さえて後姿を見送っている。
イチコは両手で頭を抱える。
「うわあ、ヘンタイだ!」
「そうだよ。だから、薫に文句をいったの」
薫は花の話を聞いて爆笑する。
「なにがおかしいの?」
「あいつはカップルの相性診断テストを作ってるんだ。お互いの唾液のDNAをマッチングさせるらしいよ。女子のサンプルが欲しいっていうから、花ちゃんを紹介したんだ」
イチコが頭を搔きむしる。
「やっぱり、ヘンタイだ!」
「でも、本人は真剣だったみたいだよ」
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「あのさ」
「なあに?」
「もしかして、あげちゃった?」
「え、まあ…うん」
花の顔がポッと赤くなる。
「いやだあ、花ちゃんまで!」
イチコは床に倒れてゴロゴロと転げまわる。
花がふたたび屋上に呼び出される。酸素との距離は2メートルに広がっている。
「今度はなに?」
「うん、例のサンプルのことだ。実はおれとお前の相性を確かめてみた」
「それで?」
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「でも、おれは気にしない」
「え?」
「だから、おれとつき合ってくれ…」
屋上にピシャリと音が響く。花が足を踏みならして去ってゆく。酸素は頬を押さえて後姿を見送っている。
「でも、つき合っちゃったんだ」
「そう、好奇心に負けたの」
花とニコは二人でうなずき合っている。
「あは、あは、あは…」
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