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おはよう、アリス
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※残り少ないですが、この章より試験的に視点者の名前を記載します。
*******
《アリス視点》
「ひゃお……!?」
目が覚めた。
急に視界が広がり、いつもの天井が私を出迎えてくれる。どうやら、またベルの身体に戻ってきたみたい。
首を動かして周囲を見ようとしたけど、動かなかった。何か、固定されてるの? 身体もとても重い。それだけじゃない。「シャロン」と口にしようとしたけど……声が出ないわ。喉奥に何かが突っかかっているような、それでいて、何かを欲しているような。
とりあえず起きましょう。起きて、シャロンのところに行かないと。
どうしてあそこにシャロンが居たのか。私の思い過ごしであってほしい。早く、彼女に会いたいわ。今日もきっと、マルティネス皇帝陛下のお側でお仕事に励んでいるはず。そうであってほしい。
「っ……ぁ、あ!」
起き上がろうと身体に力を入れたけど、びくともしなかった。しかも、全身に激痛が走る。それが、とんでもなく痛い。骨が折れてしまったような、そんな痛みがするの。
我慢できなくなって悲鳴を上げた。でも、それすら声になってない。
それと同時に、ガシャーンとそこからか派手な音が聞こえてくる。
……首を動かさなくてもわかるわ。何度もあったパターンね。きっと、イリヤがまた大袈裟に……。
「ベル……? え、ベル。起き……?」
「……あ、とい」
「べべべべ」
「……うぁ」
「べ!? え、あ起き……だ、誰か!!!」
違った。
なぜ居るのか不明だけど、あの声はパトリシア様のものだわ。挨拶をしようと声を出したけど、多分伝わってない。だって、私の声の数十倍は大きな声で何か叫び出したんだもの。耳が割れそうなほど、それは部屋の中に反響する。
パトリシア様は、私の顔を覗くなりものすごいスピードで走り去ってしまった。
……これは、どうすれば良いのかしら。何が起きたの? 私が起きただけじゃ、あんな驚かないと思うのだけど……。
「アリス、はよ」
「……お、あ」
「しゃべんな、喉痛めるぞ。起きたいのか?」
「う、う……」
「俺に寄りかかって。今、人呼んでるから」
これからどうしたら良いか悩んでいると、不意に真横からドミニクの声がした。それと同時に、彼の顔が真上に映し出される。覗き込んでくるその顔は、なぜか安堵の表情が大きい。
ドミニクは、私の声に反応して身体を起こしてくれた。
寄りかかるも何も、力が全く入らないから寄りかかるしかない。でも、先ほど感じた痛みは微塵も感じなかった。むしろ、その体温で身体の強ばりがなくなっていく感じがする。
「よかった、戻ってこれて」
「……?」
「お前、1ヶ月眠ってたんだぞ」
「!?」
「しばらく、俺がお前の護衛につくから。安心して休養しろ」
「おえぃ……?」
「後で、ちゃんと説明すっから。とりあえず、よかった。おかえり、アリス」
「……うぅ」
ドミニクは、よくわからないことを呟いてから私の身体を抱きしめてくれた。
眠ってたってことは、また倒れちゃったの? しかも、1ヶ月って! そんなに向こうに行ってたのかな。色々なところに行った記憶はあるけど、深く思い出せない。何か、ドミニクに聞きたいことがあった気がするんだけど……。
思い出そうとすればするほど、ドミニクの心地良い体温で更に思考が止まる。
ずっと、こうして居たいな。ジェレミーとして初めて王宮で会った時もそうだったけど、彼の身体から香ってくるベラドンナの甘い匂いがとても落ち着くの。ずっと嗅いでいたい。
「汗くせぇか?」
「……?」
「一応、アレンのとこで風呂借りたんだが」
「……う」
「そっか。じゃあ、良い匂いか?」
「う……」
「ははは! そうか、なら存分に堪能しろ」
しまった、バレたわ。
そうよね、失礼だわ。人の匂い嗅いでるなんて。私がされたら嫌だもの。
って、待って!?
私、1ヶ月寝てたって言ってた!? え、むしろ私の方こそ臭いんじゃないの!?
嘘嘘、ちょっとそんな近くに来ないでほしい! むしろ、半径100mは離れて! 嘘でしょ、待って時間よ戻れ!!
「アリスも良い匂いだよ。花の香りがする」
「う! あ! うぅ!!」
「んだよ、暴れんな。骨折れるぞ」
「うー! うっ、ごほっ」
「あーあ、ほら無理すんな。縛るぞ」
「っ……」
「そうそう、大人しくしてろ」
レディに向かって、縛るとは何よ!
って、声が出たら言ったと思う。でも、声が出ない。なんなら、声を出そうとしたら口から真っ赤な血が出てきたわ。喉奥を通り越して、胸元がとても痛い。口で息するのすら痛いんだけど、私の身体はどうしちゃったのかしら。
ドミニクは、どこから取り出したのか白いタオルで吐いた血を拭ってくれた。
でも今は、痛みより心配よりも、羞恥心が勝ってしまってる。なのに、動けない。なんなの、この拷問は。
「お嬢様! お目覚めになったと……って、なんでお前が先に来てるのさ」
「良いじゃんか。フォンテーヌ子爵から、直々に護衛を命じられたんだから」
「嘘だ。僕で事足りるじゃんか」
「お前じゃ心細かったんじゃねえの~?」
「僕には、他に調べ物もあるからね。そっちの方が暇だと思われたんでしょ」
「おい、こっち来い。もういっぺん足折ってやる」
「うー!!」
「……ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
ドミニクと会話? しているところに、ものすごいスピードでイリヤが走ってきた。
確か、彼はマクシムに折られて足を負傷していたはず。なのに、普通に歩いてるわ。というか、猛スピードで走ってきた気がする。よくフォーリーに怒られなかったわね。
なんて、驚いてる暇はない。
2人は、突然目の前で喧嘩を始めてしまった。止めようと思って「やめて」って声を出したけど、多分単語になってなかったと思う。
でもまあ、2人とも止まってくれたから結果オーライかも。
というか、ドミニクはベルのお父様から護衛を依頼されたの? どうして?
聞きたいけど、声がうまく出てくれない。
「お嬢様、声が……」
「少量だけ片栗粉溶かした白湯を持ってこい。あと、スプーン」
「わかった。他は?」
「俺が診察して良いなら、白湯持ってきた後にアインスの使ってる道具一式くれ。予備があんだろ」
「あるけど……本当に免許持ってんの?」
「持ってるっつーの! んだよ、みんなして疑って。こちとら、天下のロイヤル社ファミリーだっつの!!」
「……?」
また喧嘩が始まっちゃう? でも、そんな雰囲気でもないか。どうしたんだろう。2人の会話が早口すぎて、うまく聞き取れない。
これも、1ヶ月も眠っていたから? いまだに、頭がボーッとするわ。前はこんなことなかったのに。
そんな私に、近づいてきたイリヤが頭を撫でてくれた。……うん、いつものイリヤだわ。最後に記憶してるイリヤは、なんだか空元気だった気がしたの。でも、今は普通に元気そう。というか、嬉しそう。
イリヤが頭を撫でると、すぐにドミニクが抱きしめてくる。ちょっと苦しい。いえ、だいぶ苦しい。
でも、身体が動かなくて抵抗できない。声で抵抗してみたけど、「はいはい、ぎゅー」ですって! もしかして、馬鹿にされてる?
イリヤは、不審なものを見るかのような目でそんなドミニクを睨みつけて、パッとメイド服を翻して部屋を出て行ってしまった。やっぱり、普通に歩けている。
「……お前が寝てる間に、色々状況が変わったんだよ。少し休んでから説明すっから、今は休養に集中しろ」
「……う」
「手が動くようになったら、筆記で会話しような。多分、しばらくは肺が痛んで声出せねえから」
「……」
「心配すんな。俺が居る」
というか、アインスはどこに行ったの? それに、さっきのパトリシア様は何? どうして、私を見る顔がみんな暗いの? 身体が重いのと、それって関係してる?
思考を巡らせたけど、何一つ答えは出ない。
まさか、今の自分が急激に痩せ細ってしまったことなんて想像もできない私は、この後ドミニクの診察に顔を真っ赤にしながら受けることになる。「変なことしないように、イリヤも監視します」「では、私フォーリーも」「それじゃあ、僕アランも」ってゾロゾロとみんな集まってきたのはまた別のお話で。
*******
《アリス視点》
「ひゃお……!?」
目が覚めた。
急に視界が広がり、いつもの天井が私を出迎えてくれる。どうやら、またベルの身体に戻ってきたみたい。
首を動かして周囲を見ようとしたけど、動かなかった。何か、固定されてるの? 身体もとても重い。それだけじゃない。「シャロン」と口にしようとしたけど……声が出ないわ。喉奥に何かが突っかかっているような、それでいて、何かを欲しているような。
とりあえず起きましょう。起きて、シャロンのところに行かないと。
どうしてあそこにシャロンが居たのか。私の思い過ごしであってほしい。早く、彼女に会いたいわ。今日もきっと、マルティネス皇帝陛下のお側でお仕事に励んでいるはず。そうであってほしい。
「っ……ぁ、あ!」
起き上がろうと身体に力を入れたけど、びくともしなかった。しかも、全身に激痛が走る。それが、とんでもなく痛い。骨が折れてしまったような、そんな痛みがするの。
我慢できなくなって悲鳴を上げた。でも、それすら声になってない。
それと同時に、ガシャーンとそこからか派手な音が聞こえてくる。
……首を動かさなくてもわかるわ。何度もあったパターンね。きっと、イリヤがまた大袈裟に……。
「ベル……? え、ベル。起き……?」
「……あ、とい」
「べべべべ」
「……うぁ」
「べ!? え、あ起き……だ、誰か!!!」
違った。
なぜ居るのか不明だけど、あの声はパトリシア様のものだわ。挨拶をしようと声を出したけど、多分伝わってない。だって、私の声の数十倍は大きな声で何か叫び出したんだもの。耳が割れそうなほど、それは部屋の中に反響する。
パトリシア様は、私の顔を覗くなりものすごいスピードで走り去ってしまった。
……これは、どうすれば良いのかしら。何が起きたの? 私が起きただけじゃ、あんな驚かないと思うのだけど……。
「アリス、はよ」
「……お、あ」
「しゃべんな、喉痛めるぞ。起きたいのか?」
「う、う……」
「俺に寄りかかって。今、人呼んでるから」
これからどうしたら良いか悩んでいると、不意に真横からドミニクの声がした。それと同時に、彼の顔が真上に映し出される。覗き込んでくるその顔は、なぜか安堵の表情が大きい。
ドミニクは、私の声に反応して身体を起こしてくれた。
寄りかかるも何も、力が全く入らないから寄りかかるしかない。でも、先ほど感じた痛みは微塵も感じなかった。むしろ、その体温で身体の強ばりがなくなっていく感じがする。
「よかった、戻ってこれて」
「……?」
「お前、1ヶ月眠ってたんだぞ」
「!?」
「しばらく、俺がお前の護衛につくから。安心して休養しろ」
「おえぃ……?」
「後で、ちゃんと説明すっから。とりあえず、よかった。おかえり、アリス」
「……うぅ」
ドミニクは、よくわからないことを呟いてから私の身体を抱きしめてくれた。
眠ってたってことは、また倒れちゃったの? しかも、1ヶ月って! そんなに向こうに行ってたのかな。色々なところに行った記憶はあるけど、深く思い出せない。何か、ドミニクに聞きたいことがあった気がするんだけど……。
思い出そうとすればするほど、ドミニクの心地良い体温で更に思考が止まる。
ずっと、こうして居たいな。ジェレミーとして初めて王宮で会った時もそうだったけど、彼の身体から香ってくるベラドンナの甘い匂いがとても落ち着くの。ずっと嗅いでいたい。
「汗くせぇか?」
「……?」
「一応、アレンのとこで風呂借りたんだが」
「……う」
「そっか。じゃあ、良い匂いか?」
「う……」
「ははは! そうか、なら存分に堪能しろ」
しまった、バレたわ。
そうよね、失礼だわ。人の匂い嗅いでるなんて。私がされたら嫌だもの。
って、待って!?
私、1ヶ月寝てたって言ってた!? え、むしろ私の方こそ臭いんじゃないの!?
嘘嘘、ちょっとそんな近くに来ないでほしい! むしろ、半径100mは離れて! 嘘でしょ、待って時間よ戻れ!!
「アリスも良い匂いだよ。花の香りがする」
「う! あ! うぅ!!」
「んだよ、暴れんな。骨折れるぞ」
「うー! うっ、ごほっ」
「あーあ、ほら無理すんな。縛るぞ」
「っ……」
「そうそう、大人しくしてろ」
レディに向かって、縛るとは何よ!
って、声が出たら言ったと思う。でも、声が出ない。なんなら、声を出そうとしたら口から真っ赤な血が出てきたわ。喉奥を通り越して、胸元がとても痛い。口で息するのすら痛いんだけど、私の身体はどうしちゃったのかしら。
ドミニクは、どこから取り出したのか白いタオルで吐いた血を拭ってくれた。
でも今は、痛みより心配よりも、羞恥心が勝ってしまってる。なのに、動けない。なんなの、この拷問は。
「お嬢様! お目覚めになったと……って、なんでお前が先に来てるのさ」
「良いじゃんか。フォンテーヌ子爵から、直々に護衛を命じられたんだから」
「嘘だ。僕で事足りるじゃんか」
「お前じゃ心細かったんじゃねえの~?」
「僕には、他に調べ物もあるからね。そっちの方が暇だと思われたんでしょ」
「おい、こっち来い。もういっぺん足折ってやる」
「うー!!」
「……ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
ドミニクと会話? しているところに、ものすごいスピードでイリヤが走ってきた。
確か、彼はマクシムに折られて足を負傷していたはず。なのに、普通に歩いてるわ。というか、猛スピードで走ってきた気がする。よくフォーリーに怒られなかったわね。
なんて、驚いてる暇はない。
2人は、突然目の前で喧嘩を始めてしまった。止めようと思って「やめて」って声を出したけど、多分単語になってなかったと思う。
でもまあ、2人とも止まってくれたから結果オーライかも。
というか、ドミニクはベルのお父様から護衛を依頼されたの? どうして?
聞きたいけど、声がうまく出てくれない。
「お嬢様、声が……」
「少量だけ片栗粉溶かした白湯を持ってこい。あと、スプーン」
「わかった。他は?」
「俺が診察して良いなら、白湯持ってきた後にアインスの使ってる道具一式くれ。予備があんだろ」
「あるけど……本当に免許持ってんの?」
「持ってるっつーの! んだよ、みんなして疑って。こちとら、天下のロイヤル社ファミリーだっつの!!」
「……?」
また喧嘩が始まっちゃう? でも、そんな雰囲気でもないか。どうしたんだろう。2人の会話が早口すぎて、うまく聞き取れない。
これも、1ヶ月も眠っていたから? いまだに、頭がボーッとするわ。前はこんなことなかったのに。
そんな私に、近づいてきたイリヤが頭を撫でてくれた。……うん、いつものイリヤだわ。最後に記憶してるイリヤは、なんだか空元気だった気がしたの。でも、今は普通に元気そう。というか、嬉しそう。
イリヤが頭を撫でると、すぐにドミニクが抱きしめてくる。ちょっと苦しい。いえ、だいぶ苦しい。
でも、身体が動かなくて抵抗できない。声で抵抗してみたけど、「はいはい、ぎゅー」ですって! もしかして、馬鹿にされてる?
イリヤは、不審なものを見るかのような目でそんなドミニクを睨みつけて、パッとメイド服を翻して部屋を出て行ってしまった。やっぱり、普通に歩けている。
「……お前が寝てる間に、色々状況が変わったんだよ。少し休んでから説明すっから、今は休養に集中しろ」
「……う」
「手が動くようになったら、筆記で会話しような。多分、しばらくは肺が痛んで声出せねえから」
「……」
「心配すんな。俺が居る」
というか、アインスはどこに行ったの? それに、さっきのパトリシア様は何? どうして、私を見る顔がみんな暗いの? 身体が重いのと、それって関係してる?
思考を巡らせたけど、何一つ答えは出ない。
まさか、今の自分が急激に痩せ細ってしまったことなんて想像もできない私は、この後ドミニクの診察に顔を真っ赤にしながら受けることになる。「変なことしないように、イリヤも監視します」「では、私フォーリーも」「それじゃあ、僕アランも」ってゾロゾロとみんな集まってきたのはまた別のお話で。
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