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新情報はまだまだ続く
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「さっきの返事なんだけど……」
今、返事くれるってことだよな……。
俺は、鉛筆の動きを止めて鈴木の言葉を待った。でも、視線はキャンバスだ。直では見れねえ。
「まずは、濁しちゃってごめんね」
「い、いや。別に。青葉の前で、その……。あいつに、告白って怖くないぞって教えようとしてだな、その」
「うん。眞田くんって優しいね。知らなかった」
「……」
「私、親が仕事で居なくて、兄弟見たり家のことしたりで忙しくてクラスメイトに目を向けてなかったんだ。青葉くんと話して、それに気づいたよ」
「そうなのか」
「内緒ね。苦労人、なんて同情されたくないんだ」
「わかるなあ。大変だーなんて言われるくらいなら、お笑いとかドラマとかの話してぇ」
「そうなの! 私も、楽しい話がしたくて。自分じゃない人に、大変だって感情を押し付けられたくないというかなんというか」
俺も、その気持ちわかる。家が花屋だから。
男なのに花屋なんて、っていう言葉はまあ聞き飽きた。それよりも、「家の手伝いやらされるのが大変だよな」とか「遊ぶ時間なくて可哀想」なんて言葉が許せねえ。それを決めるのは、お前じゃなくて俺だ、って何度思ったことか。
そっか、鈴木もそう思ってたのか。
ってことは、もしかして俺ら相性良いのでは!?
告白、受けてくれるって流れか!?
「私、眞田くんとは付き合えない」
「……そっか」
「うん。好きな人がいるんだ」
「……青葉か?」
「……うん。これも、内緒ね」
「わかったよ。言わな「でもね」」
だよな。
やっぱ、青葉は特別だった。
俺の目から見ても、鈴木と青葉はお似合いだ。顔が良いとか外見の話じゃなくて、内面がお似合いだ。
俺なんかより、ずっと。
鈴木は、俺の返事に被せて口を開く。そして、
「でもね、眞田くんとは……その。仲良くしたいというか。付き合えないんだけど、これからも普通に会話とかしたいって言うのは難しいかな」
と、こっちを向きながら言ってきた。
え? 待て待て。
鈴木に告って、そんなこと言われたやつ居ねえぞ。みんな、「ごめんなさい」までだったぞ。
どう言うことだ!?
俺は驚いて、膝の上に置いてあったキャンバスの上を転がる鉛筆を受け止められなかった。鉛筆は、そのまま芝生の上に落ちていく。
「……それって」
「私、好きですって告白されたの初めてなんだ。今まで「付き合ってください」ばっかりで、気持ちよりも私と付き合うっていうのが目的になってるというかなんというか。もちろん、中には気持ちがある人もいるだろうけど、言ってこない時点で論外」
「……」
確かに、鈴木と付き合えたら「~奢る」とか、「~円」とかやってるやついたな。俺は、そういうの嫌いでやってねぇけど。
そうやって、遊びに使われるのって嫌だよな。
論外って手厳しいけど、それって鈴木が真剣に向き合ってる証拠だと思う。そういうところも、俺は好きだ。
「でね、眞田くんは青葉くんとかマリとも仲良いし、これからも普通におはようとか言ったり、時間あったらみんなでクレープ食べに行ったりしたいなって私は思ってるんだけど……」
「……く」
「え?」
「全っ然行く! むしろ、行こう。家の用事ない日とかにさ。俺、美味しいクレープ屋さん知っててその」
「良かったあ。ありがとう」
むしろ、こっちがありがとうなんだけど!!
何この展開……。手の震えが止まんねえぜ。気づかれてねえよな。
鈴木ってば、なんでそんな安心した顔してんだ? 俺の方が安心なんだけど。
これって、これからも鈴木と話しかけて良いし、ラインとかもして良いってことだよな!?
……やべえ、今青葉とすげえ話してぇ。
っと、鉛筆落としたんだった。拾わねぇと……。あ……。
「はい、鉛筆。……今話したこと、ここだけの話ね」
「話したこと……」
「家のことでいつも早く帰ってることとか、青葉くんのこととか」
「……良いけど。青葉のことは、本人に言わねえのか?」
「言わないよ。青葉くんのトラウマを深くしたくない。もし、克服できたら、その時は……」
「……そっか。応援くらいは、させろよな」
「ありがと」
「こちらこそ」
俺は、鈴木が拾ってくれた鉛筆を受け取りながらお礼を言った。
……2人とも、良いやつ。これで妬んでたら、俺はすげー嫌な性格の人だ。
でも、どっちも相手のこと大切に思い過ぎ。これは、すれ違い多発案件だぞ。
青葉も鈴木も、お互いのこと好きだって知ってるのって俺だけだよな。
さっき、告るってラインきてたけど、いつ告るんだ?
「あ、チャイム。どこまで描けた?」
「え? ……桜の木とベンチまで」
「うわ、絵上手なんだ!」
「え、あ、ありがとう」
「すごい! 桜の木だ!」
「……お、おう」
鈴木の絵を覗くと、なんだかよくわからないものが描かれている。
……うん。鈴木は、絵が芸術的いや、「前衛的」っていうのも新情報だな。
今、返事くれるってことだよな……。
俺は、鉛筆の動きを止めて鈴木の言葉を待った。でも、視線はキャンバスだ。直では見れねえ。
「まずは、濁しちゃってごめんね」
「い、いや。別に。青葉の前で、その……。あいつに、告白って怖くないぞって教えようとしてだな、その」
「うん。眞田くんって優しいね。知らなかった」
「……」
「私、親が仕事で居なくて、兄弟見たり家のことしたりで忙しくてクラスメイトに目を向けてなかったんだ。青葉くんと話して、それに気づいたよ」
「そうなのか」
「内緒ね。苦労人、なんて同情されたくないんだ」
「わかるなあ。大変だーなんて言われるくらいなら、お笑いとかドラマとかの話してぇ」
「そうなの! 私も、楽しい話がしたくて。自分じゃない人に、大変だって感情を押し付けられたくないというかなんというか」
俺も、その気持ちわかる。家が花屋だから。
男なのに花屋なんて、っていう言葉はまあ聞き飽きた。それよりも、「家の手伝いやらされるのが大変だよな」とか「遊ぶ時間なくて可哀想」なんて言葉が許せねえ。それを決めるのは、お前じゃなくて俺だ、って何度思ったことか。
そっか、鈴木もそう思ってたのか。
ってことは、もしかして俺ら相性良いのでは!?
告白、受けてくれるって流れか!?
「私、眞田くんとは付き合えない」
「……そっか」
「うん。好きな人がいるんだ」
「……青葉か?」
「……うん。これも、内緒ね」
「わかったよ。言わな「でもね」」
だよな。
やっぱ、青葉は特別だった。
俺の目から見ても、鈴木と青葉はお似合いだ。顔が良いとか外見の話じゃなくて、内面がお似合いだ。
俺なんかより、ずっと。
鈴木は、俺の返事に被せて口を開く。そして、
「でもね、眞田くんとは……その。仲良くしたいというか。付き合えないんだけど、これからも普通に会話とかしたいって言うのは難しいかな」
と、こっちを向きながら言ってきた。
え? 待て待て。
鈴木に告って、そんなこと言われたやつ居ねえぞ。みんな、「ごめんなさい」までだったぞ。
どう言うことだ!?
俺は驚いて、膝の上に置いてあったキャンバスの上を転がる鉛筆を受け止められなかった。鉛筆は、そのまま芝生の上に落ちていく。
「……それって」
「私、好きですって告白されたの初めてなんだ。今まで「付き合ってください」ばっかりで、気持ちよりも私と付き合うっていうのが目的になってるというかなんというか。もちろん、中には気持ちがある人もいるだろうけど、言ってこない時点で論外」
「……」
確かに、鈴木と付き合えたら「~奢る」とか、「~円」とかやってるやついたな。俺は、そういうの嫌いでやってねぇけど。
そうやって、遊びに使われるのって嫌だよな。
論外って手厳しいけど、それって鈴木が真剣に向き合ってる証拠だと思う。そういうところも、俺は好きだ。
「でね、眞田くんは青葉くんとかマリとも仲良いし、これからも普通におはようとか言ったり、時間あったらみんなでクレープ食べに行ったりしたいなって私は思ってるんだけど……」
「……く」
「え?」
「全っ然行く! むしろ、行こう。家の用事ない日とかにさ。俺、美味しいクレープ屋さん知っててその」
「良かったあ。ありがとう」
むしろ、こっちがありがとうなんだけど!!
何この展開……。手の震えが止まんねえぜ。気づかれてねえよな。
鈴木ってば、なんでそんな安心した顔してんだ? 俺の方が安心なんだけど。
これって、これからも鈴木と話しかけて良いし、ラインとかもして良いってことだよな!?
……やべえ、今青葉とすげえ話してぇ。
っと、鉛筆落としたんだった。拾わねぇと……。あ……。
「はい、鉛筆。……今話したこと、ここだけの話ね」
「話したこと……」
「家のことでいつも早く帰ってることとか、青葉くんのこととか」
「……良いけど。青葉のことは、本人に言わねえのか?」
「言わないよ。青葉くんのトラウマを深くしたくない。もし、克服できたら、その時は……」
「……そっか。応援くらいは、させろよな」
「ありがと」
「こちらこそ」
俺は、鈴木が拾ってくれた鉛筆を受け取りながらお礼を言った。
……2人とも、良いやつ。これで妬んでたら、俺はすげー嫌な性格の人だ。
でも、どっちも相手のこと大切に思い過ぎ。これは、すれ違い多発案件だぞ。
青葉も鈴木も、お互いのこと好きだって知ってるのって俺だけだよな。
さっき、告るってラインきてたけど、いつ告るんだ?
「あ、チャイム。どこまで描けた?」
「え? ……桜の木とベンチまで」
「うわ、絵上手なんだ!」
「え、あ、ありがとう」
「すごい! 桜の木だ!」
「……お、おう」
鈴木の絵を覗くと、なんだかよくわからないものが描かれている。
……うん。鈴木は、絵が芸術的いや、「前衛的」っていうのも新情報だな。
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