121 / 247
10
橋下くんは、演技が得意……?
しおりを挟む「あれ、梓じゃん」
「……橋下くん?」
後ろを振り向くと、そこには橋下くんともう1人……校章を見る限り同学年の芸術科の子が、こちらを見ていた。
「え、梓……。知り合い?」
「嘘……。いつ知り合ったの」
「……」
「えっと……」
橋下くんたちだけじゃないわね。
ふみか以外も、呆気に取られて私を見てるわ。もちろん、周りで勉強してる生徒も。
なんて言ったら良いのかわからない私は、橋下くんの顔を見てヘルプを送る。すると、それに気づいてくれたのか、
「オレが説明する!」
と言って、私の肩に手を置いて来た。
こういう時、パッと発言できる人って羨ましいよね。私は、テンパっちゃって何話してるかわからなくなるタイプ。
橋下くん、ごめん。よろしく!
「梓は、今度オレが主演のドラマにエキストラで出るんだ。現場で会って、聞いたらオレと同じ学校だって言うから仲良くなったんだよ」
うんうん。
やっぱり、橋下くんは頼り、に……な………………!?!?!?!?
待って!
今、なんて言った!?
「え、梓。芸能人目指してるの?」
「もしかして、スカウトされたとか!?」
「え、あ、う……。う……?」
話についていけない私は無意識に、持っていたシャーペンでノートへグルグルと円を描き続ける。
私が? エ、エキストラ!?
あれ、エキストラってなんだっけ? オリーブオイル?
あ、そうだ。マッシュルーム残ってるから、アヒージョ作ろうかな。
いやいや! そんなん後でいいでしょ!
今は、こっち!!
「偶然、オレのマネージャーにスカウトされたんだよな。知った時はびっくりしたぜ!」
私も、現在進行形でびっくりしてるわ!!
コレ、どうするつもりなの?
嘘だって、すぐバレそうだけど……。
「へえ、噂のギャルちゃんだ。そんなことになってたんだね」
「こ、こんにちは……」
「こんにちは。僕は、相田正樹。奏のクラスメイトだよ」
「あ、昇降口に絵が飾ってある人!」
「あの虹のやつ?」
「すごーい!」
「良く見てるね。ありがとう」
相田くん、か。
確かに、昇降口に飾ってある大きな絵は結構目を惹くんだよね。あれ描いたなんて、すごい才能だなあ。
「ってことで、次の集合場所とかの連絡したいからライン教えて」
「え……。あ、うん」
「QRコード頂戴」
と、いつの間にかトントン拍子に話が進んでいく。
……もう、どうにでもなれって感じ。
私は、ニコニコとアイドルスマイルをし続けている橋下くんへ、ラインのQRコード画面を見せた。すると、すぐに読み取って「登録OK」なんて軽い調子で言ってくる。
もちろん、マリたちも連絡先ゲットしたいって気持ちを隠そうともせず。でも、橋下くんは私と連絡先を交換するとすぐにスマホをしまっちゃった。
「じゃあ、後で連絡するから」
「う、うん……」
「あ、そうそう。その撮影なんだけど、……———五月も一緒な」
「……え?」
「じゃあなー」
去り際、相変わらずニコニコ顔の橋下くんは私の耳元であまり嬉しくない情報を呟く。
だって、理花に応援するって言っちゃったと思うし。下手に青葉くんと会わない方が良いよね。
そもそも、あまり目立ちたくないって本人が言ってるんだから、私は極力近づかない方が良いって。用事があれば別だけど。
それより、こっちをどうにかしないと。
「梓すごいじゃん!」
「スカウトって、都市伝説じゃなかったんだね」
「黙ってるなんて、梓ずるい!」
「ほ、本物だとは思ってなかったのよ……」
「私も奏くんと連絡先交換したあい!!」
橋下くんと相田くんが居なくなると、一気に私へと視線が集まってくる。
これ、どうやって収集付ければ良いの?
今のうち、「嘘です」って行った方が良い?
でも、それなら連絡先交換した理由を探さないといけないわね。全く、橋下くんったら!
なんだか、勉強どころじゃなくなった気がするわ。
しかも、問題はもうひとつあったの。
「……え?」
ラインを開き、交換した連絡先を見ていると「牧原ソラ」の文字を見つけちゃったんだ。
「梓?」
「どうしたの?」
「奏くんからメッセ来た?」
私、牧原先輩とライン交換までしてたってこと?
「いえ……。その」
理花に、エキストラに先輩に。
もう! 頭を悩ませる問題は、テストだけにしてほしいよね!!
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる