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橋下くんは、演技が得意……?

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「あれ、梓じゃん」
「……橋下くん?」

 後ろを振り向くと、そこには橋下くんともう1人……校章を見る限り同学年の芸術科の子が、こちらを見ていた。

「え、梓……。知り合い?」
「嘘……。いつ知り合ったの」
「……」
「えっと……」

 橋下くんたちだけじゃないわね。
 ふみか以外も、呆気に取られて私を見てるわ。もちろん、周りで勉強してる生徒も。

 なんて言ったら良いのかわからない私は、橋下くんの顔を見てヘルプを送る。すると、それに気づいてくれたのか、

「オレが説明する!」

 と言って、私の肩に手を置いて来た。

 こういう時、パッと発言できる人って羨ましいよね。私は、テンパっちゃって何話してるかわからなくなるタイプ。
 橋下くん、ごめん。よろしく!

「梓は、今度オレが主演のドラマにエキストラで出るんだ。現場で会って、聞いたらオレと同じ学校だって言うから仲良くなったんだよ」

 うんうん。
 やっぱり、橋下くんは頼り、に……な………………!?!?!?!?

 待って!
 今、なんて言った!?

「え、梓。芸能人目指してるの?」
「もしかして、スカウトされたとか!?」
「え、あ、う……。う……?」

 話についていけない私は無意識に、持っていたシャーペンでノートへグルグルと円を描き続ける。

 私が? エ、エキストラ!?
 あれ、エキストラってなんだっけ? オリーブオイル?
 あ、そうだ。マッシュルーム残ってるから、アヒージョ作ろうかな。

 いやいや! そんなん後でいいでしょ!
 今は、こっち!!

「偶然、オレのマネージャーにスカウトされたんだよな。知った時はびっくりしたぜ!」

 私も、現在進行形でびっくりしてるわ!!

 コレ、どうするつもりなの?
 嘘だって、すぐバレそうだけど……。

「へえ、噂のギャルちゃんだ。そんなことになってたんだね」
「こ、こんにちは……」
「こんにちは。僕は、相田正樹。奏のクラスメイトだよ」
「あ、昇降口に絵が飾ってある人!」
「あの虹のやつ?」
「すごーい!」
「良く見てるね。ありがとう」

 相田くん、か。
 確かに、昇降口に飾ってある大きな絵は結構目を惹くんだよね。あれ描いたなんて、すごい才能だなあ。

「ってことで、次の集合場所とかの連絡したいからライン教えて」
「え……。あ、うん」
「QRコード頂戴」

 と、いつの間にかトントン拍子に話が進んでいく。
 ……もう、どうにでもなれって感じ。

 私は、ニコニコとアイドルスマイルをし続けている橋下くんへ、ラインのQRコード画面を見せた。すると、すぐに読み取って「登録OK」なんて軽い調子で言ってくる。
 もちろん、マリたちも連絡先ゲットしたいって気持ちを隠そうともせず。でも、橋下くんは私と連絡先を交換するとすぐにスマホをしまっちゃった。

「じゃあ、後で連絡するから」
「う、うん……」
「あ、そうそう。その撮影なんだけど、……———五月も一緒な」
「……え?」
「じゃあなー」

 去り際、相変わらずニコニコ顔の橋下くんは私の耳元であまり嬉しくない情報を呟く。
 だって、理花に応援するって言っちゃったと思うし。下手に青葉くんと会わない方が良いよね。
 そもそも、あまり目立ちたくないって本人が言ってるんだから、私は極力近づかない方が良いって。用事があれば別だけど。

 それより、こっちをどうにかしないと。

「梓すごいじゃん!」
「スカウトって、都市伝説じゃなかったんだね」
「黙ってるなんて、梓ずるい!」
「ほ、本物だとは思ってなかったのよ……」
「私も奏くんと連絡先交換したあい!!」

 橋下くんと相田くんが居なくなると、一気に私へと視線が集まってくる。
 これ、どうやって収集付ければ良いの?
 今のうち、「嘘です」って行った方が良い?

 でも、それなら連絡先交換した理由を探さないといけないわね。全く、橋下くんったら!
 なんだか、勉強どころじゃなくなった気がするわ。

 しかも、問題はもうひとつあったの。

「……え?」

 ラインを開き、交換した連絡先を見ていると「牧原ソラ」の文字を見つけちゃったんだ。

「梓?」
「どうしたの?」
「奏くんからメッセ来た?」

 私、牧原先輩とライン交換までしてたってこと?

「いえ……。その」

 理花に、エキストラに先輩に。

 もう! 頭を悩ませる問題は、テストだけにしてほしいよね!!
 

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