94 / 247
08
脱水症状にご注意を
しおりを挟む「あー、目が痛い!」
「ね。自主学習続きだと逆に疲れる」
やっと放課後!
テスト範囲終わっちゃったらしく、殆どの授業が自主学習だったの。
やっぱり、自主学習って退屈だわ。特にお昼後! 眠気との戦いって感じ。
「でも、これで英語は5確定だね」
「うん。回答欄ズレなきゃ赤点取ることないし」
私たちは、いつも通り双子の待つ学童へと向かっていた。
日差しがものすごく照りつけるものだから、校門出たあたりから上着を脱いじゃったわ。……青葉くんは未だにセーターも着込んでるけどね。
「……暑いの平気?」
「なわけない……。視界ヤバい」
「ちょっと! 待ってて、そこの自販機で飲み物買ってくる」
「ごめん……」
ですよね……。
隣を見ると、少しだけ顔を赤くした……いや、青くした青葉くんがよろよろになりながら歩いていた。今にでも、倒れそう。
私は、青葉くんを身近なベンチに座らせて、目の前にあった自動販売機に向かった。
倒れたら大変!
***
「あぢー……」
学校帰りのオレは、帰路についていた。
今日は、現場が早上がりして3限目から授業に出られたぜ! 正樹からテスト範囲も聞けたし、今日から本格的に勉強しないとな。
「……!?」
なんて考えながら歩いていたら、目の前のベンチで倒れそうになってる奴がいるじゃんか。しかも、よく知った人物。
「五月、大丈夫か?」
「……? あ、奏」
「あっつ! お前、セーター脱げよ。脱水症状起こすぞ」
「うん……」
そこには、真っ青な顔した五月がいた。
こいつ、焦点合ってるか? ……うん、合ってるな。脱水症状手前って感じ。
五月は、オレの言葉でやっと上着とセーターを脱ぎ出した。……おぉ、ガッツリ見えるな。刺青。
更に髪の毛を縛り上げると、いつもの五月が顔を出す。やっぱ、顔色やべぇ。
「飲み物は? 買ってくる」
「今、鈴木さんが買ってきてくれてる」
「お! 梓もいんのか!」
「……いるけど」
「嫌そうな顔すんなよ! 今から帰んの?」
「いや、鈴木さんちの双子迎えに行く」
オレが嬉しそうな声を出すと、すぐさま「消えろ」的な冷たい視線でこっち向いてやんの。まるで嫉妬じゃんか。
別に、梓のこと取らねぇよ。
「お待たせ、ポカリでい……あ、橋下くんだ」
「よっ!」
五月と並んで座っていると、梓がペットボトルを1本持って走ってきた。
こいつ、結構男子から人気あるらしいな。正樹に名前言ったら、知ってたよ。まあ、面倒見良さそうだし納得。……見た目ギャルだけどな。そのギャップも良いらしい。
「今日はお仕事ないの?」
「おう。テスト前だから、少し減らしてんだ」
「あ、そっか。……青葉くん、飲んで」
「ありがとう……」
梓がペットボトルのキャップを外して渡すと、五月ってば一気に飲んじまった。500mlあったのに、1分もかかってないぞ……。
「あと1本いる?」
「いや、大丈夫。お金は」
「いいよ、元気になってくれれば」
「もう大丈夫、ありがとう。……あ、迎えの時間」
「あ! 忘れてた。行かなきゃ」
「なあ、オレもついてっていいか? 仕事ないから暇なんだ」
オレがそう言うと、梓は嬉しそうな、五月は嫌そうな表情でこっちを見ている。
……おい、その顔やめろ。もちろん、五月のことな。
「あ、じゃあ夕飯食べてく?」
「マジ!? いいの?」
だから! そんなに睨むなって、五月!
梓の手料理かあ。五月とどっちがうまいんだろ。
「私はいいよ。今から買い物だし」
「……鈴木さんがいいなら、いいよ」
「よっしゃ! 買い出し前に迎え?」
「うん。妹と弟を小学校にある学童へ迎えに行くの。16時20分までに行かないといけないんだ」
「走らないと間に合わなくね?」
「大丈夫。東小だから、ここから10分かからない」
「あそこか! 行こう」
腕時計を確認していると、五月が立ち上がった。さっきより、だいぶマシな顔色になってる。よかった。
……梓に見えないようにしてる、こっちへの睨みはすごいけどな。見なかったふりしよう。そうしよう。
「奏、顔隠して行けよ」
「うい。帽子かぶるわ」
「あ、そっか。有名人だもんね」
カバンから帽子を取り出し被ったオレは、五月と梓の後をついて東小へと向かう。
……なんだか後ろから視線感じんだけど、ファンのやつか? 話しかけてくれれば、サインくらいするんだけどな。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
雪の王子と火だまりの少女 ~王立魔法学園グランツ・アカデミーより~
ゴリエ
恋愛
〝魔力譲渡契約は、互いの唇を重ねることで成立する――〟
いつまでたっても魔法が使えないソルエルに突き付けられたのは、魔法学園の退学予告通知だった。
在学継続のためには、炎の魔力をためこんでしまう〝火だまり〟の体質を克服するしかない。
ソルエルは立派な炎使いになるため、幼馴染の男子生徒ルビ・マイスの二人とともに、四週間にも及ぶ厳しい野外実習に挑む。そこに突然、口のきけない冬魔法使いの美男子転校生が現れて――。
火だまりを解消するための魔力譲渡契約は「唇」から。
夜ごと代わるがわる別の相手と契約(キス)を交わさなければならなくなったソルエルの恋の行方は――?
終わらない冬、謎の転校生、野外実習に隠された真意。
鮮やかな四季が巡る、恋と魔法と精霊世界の物語。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる