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渡り廊下の途中で
しおりを挟むなんか、教室に人少なくない?
5限は、小林先生の授業だからいつも出席率良いんだけど……。
休みの人が居ないのは当たり前だけど、ふみかもどっか行っちゃったし梓は帰ってこないし。
「結局、梓帰ってこなかったね」
「うん……。お弁当、そのまま持ち帰ってきちゃったけど大丈夫かな」
「連絡はしといたから、大丈夫じゃない?」
一回温めたお弁当って、そのまま常温にしてて大丈夫なのかな?
夏だから腐りやすいってお姉ちゃんが言ってた気がする。
「授業始めるぞー」
しおりんと由利ちゃんで話していると、小林先生がチャイム音と同時に教室へ入ってきた。
授業始まっちゃうんだけどな。梓、どこ行っちゃったんだろ。もしかして、告白OKしてサボってるとか?
そしたら、後で話聞かないと!
「また後でね」
「うん。5限終わっても来なかったら探しに行こう」
「そうしよ!」
私は、2人にそう言って急いで席につき、5限の準備をする。
「!?」
と、同時に、後ろのドアが勢いよく開いた。びっくりした私は、……いや、他の人もそっちに目を向ける。
すると、ジミーくんが息を切らして教室に入ってきた。
こりゃ、遅刻ギリギリだな。
「おい、青葉。遅刻だぞ」
「……すみません、吐き気が酷いので5限は保健室に居ます」
「お、お、そうか。顔色悪いから、ゆっくり休めよ」
「……」
ああ、体調不良かあ。
そりゃ、あんな暑い格好してたら脱水症状とかで倒れるよね。
ジミーくんは、机にかかってる鞄を持つと走って教室を出て行ってしまった。
……体調不良にしては、元気に走るなあ。
***
昼休み終盤。
『とりあえず、更衣室が怪しいと思う』
「わかった。オレはそっち行くから、正樹は」
『待って。今芸術棟にいるから、こっちの方が更衣室近い。僕が見に行く』
「わかった、悪いな。そしたら、オレは渡り廊下と屋上見てくる」
『そうして。居たら連絡するから。茶髪ロングの女の子だよね』
「サンキュー。そう、鈴木アズサっていう人」
『おけー。後でスタバ奢れ』
「いくらでも!」
オレの話を聞いた正樹は、いくつかスポ専のやつが行きそうな場所をピックアップしてくれた。
第一候補は、更衣室だな。あそこ、先生たちが行かないから結構無法地帯化してんだよ。正樹にかけるしかない。
とりあえず、渡り廊下を通って屋上に行くか。午後からは、屋上が開放されてんだよな。
「……ん?」
渡り廊下に出る階段を登っていると、上から声が聞こえてきた。
この時間帯、この辺って誰も通らないんだよな。芸術棟は反対側の階段降りないと行けないし、科学室行くときくらいしか使わない。今日、科学あるクラスあったか?
「……だ、嫌だ……助けて」
「!?」
違う!
この声、鈴木さんだ!
オレは、急いで階段を登った。
「はあ、はあ……」
息切れヤベェ。運動不足か?筋トレしてるんだけどな……。
一気に3階まで登り切ると、茶髪の奴に抱きしめられて泣きじゃくる鈴木さんがいた。足をガクガク震わせて、必死に抵抗している。
「……離せよ。嫌がってんじゃん」
オレは、息を整えつつその茶髪ヤローに向かって威嚇の言葉を言い放った。
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