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水曜日の朝

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『……?』

 これは、夢だ。

 そうよ、夢よ。
 私はまだ、自分のベッドで眠っているの。

『だれ……?』

 私は、誰かの体温を間近に感じていた。
 とても心地が良く、私の身体を包み込んでくれている。

 『……青葉くん?』

 返事はない。

 やっぱり、これは私の夢ね。
 夢だったら、覚めないでほしいな。
 

***


 水曜日の朝。

「おはよう~」
「おはよう、マリ」
「暑いねぇ」
「本当!」

 今日も、晴天だった。
 朝から、気温が28度をさしているほど暑い。
 梅雨が明けたというのに、まだ湿気もすごいわ。ジメジメしてて、嫌になる。

「ふみか、風邪大丈夫かなあ」
「ねぇ。季節の変わり目だから、体調崩してる人多いし心配」

 昨日、ふみかが休んだの。高校に入って、初めてじゃないかしら?詩織が代表でライン送ったら、「大丈夫」って返ってきたらしいけど……。

 ふみかの分までノート取っておいたから、後で見せるんだ。昨日の授業、期末の範囲モロ被りしてたし。

「今日は午後から来るって言ってたけど」
「無理はしない方がいいよね」
「昨日電話したんだけど、出なかったんだよね。大丈夫かなあ」

 ご飯、ちゃんと食べてるのかなあ。熱あったら、食べるの大変だよね。ふみかの家はお母さんが専業主婦だから、そこまで心配いらないんだけど。
 でも、やっぱり顔を見るまでは心配になっちゃう。

「ところで、マリは宿題終わってるの?」
「…………忘れた!」
「はあ。どうする?」
「写す!!」
「はいはい」

 今日も、なんやかんやで賑やかになりそうね。



***


「お疲れ様でした。次の撮影が15:30からなので、15:00にはここを出ます」
「はーい。高久さんもお疲れ様ー。オレ、途中高校行くわ。やり残した課題あんの」
「承知です。出かけと戻りで連絡ください」
「ういー」
「では、おやすみなさい奏」
「おやすみ、高久さん」

 マネージャーの高久さんを見送ったオレは、すぐ五月にラインを送った。昨日撮影で使った、ビジネスホテルの部屋から。

 撮影が長引いて、テッペン超えるどころか気づいたら朝日が登ってた。完全に終わったのも30分前だから、眠いよ全く!
 でも、やることはやらないとな。幸い、撮影したホテルが学校に近いから、あと2時間は仮眠できそう。

『今日、昼休みにそっち行ける』

『わかった。鈴木さん、お弁当だから学食いると思う』

『OK。変装していくわ』

『うい。終わったら報告して』

『おう。とりあえず、教室行くわ』

 ……もう怒ってないみたいだな。
 今日は、クマのぬいぐるみみたいなキャラのスタンプと一緒にメッセージ送られてくるし。ほんと、あいつ女みたいなかわいいの送るよなあ。

 結局、今週オフの日はなかった。仮眠時間使って、なんとか今日行けるって感じ。
 まあ、徹夜とか慣れてるしいいけど。

「アラームを2時間後にセットして……」

 ラインを送り終えたオレは、モーニングコールを頼んで一眠りする。


 
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