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似ている境遇

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「にいちゃんだ!」
「おにいちゃん、いらっしゃい!」
「お邪魔します、要くん、瑞季ちゃん」

 リビングへ入ると、これから遊園地にでも行くみたいなはしゃぎようで双子が出迎えをしてくれた。
 私なんか視界に入っていないくらい、青葉くんの方へと向かって行ったわ。本当、彼のこと好きよね。

「おにいちゃん、遊ぼう」
「トランプする!大富豪!」
「ゲームがいいっ!スマブラやろう!」
「いいけど、2人とも宿題終わってるの?」
「……あ」
「……あ」

 ……終わってないのね、その顔は。

 私がそう言うと、2人はシュンとした表情になる。やっぱり双子ね、顔がそっくり。
 そう思って笑っていると、隣にいた青葉くんも同じことを思ったのか2人を見て笑っている。

「じゃあ、宿題終わってご飯食べたら遊ぼうか」
「本当?」
「すぐやる!」
「そうしてちょうだい。青葉くん、ケーキも持ってきてくれたからご飯後に食べましょうね」
「ケーキ!?」
「わーい!にいちゃん大好き!!」
「よかった。食べようね」

 ご褒美があれば、2人はすぐ行動するの。
 ケーキと聞いて、すぐさまランドセルから宿題を取り出し始めたわ。今日は甘いものばかりだから、ちゃんと歯を磨かせないと。

「青葉くん、あの」
「はい、なんですか?」
「……ケーキ、開けていいですか」

 そんな光景を見つつ手に持つ箱を持ち上げると、青葉くんが急に吹き出した。

「え、え?な、なに」
「真剣な顔してなに言うのかと思ったら。あはは、鈴木さんかわいい」
「……」

 ……前も言われたけど、すぐ「かわいい」って言う人なのかな。

 私は、涙を浮かべて笑う青葉くんを見ながら持ち上げた手を下ろす。だって、ケーキ見たいじゃないの。顔がまた熱くなってきた。

「キッチンで開けましょう。2人、宿題始めてるから集中途切れると可哀想」
「……うん」
「俺もキッチン入っていいですか?」
「どうぞ……」

 私がそう言うと、青葉くんは私の手を引いてキッチンへと移動する。……もしかして、私、子ども扱いされてる?

「5つで良かったですか?」
「え?4つじゃなくて?」
「お母さんの分と思って……」
「……ありがとう。喜ぶわ、お母さん甘いもの好きだから」
「もしかして、好きなのは遺伝だったり?」
「……パパも好きだからそうかも」
「あ、お父さんの分も必要だったかな」
「ううん。パパは単身赴任で関西いるから。考えてくれてありがとう」

 キッチンに入ると、すぐ手が離れた。

 そうなの。
 パパは、関西でお仕事をしてる。たまに帰ってくるけど、あてにはしてない。そのくらい、帰宅頻度が低いから。

「同じだ。俺の父親は海外で単身赴任、母親は仕事であまり家に帰ってこない」
「なんだか、似てるわね」

 だから、ご飯ちゃんと食べてないのかな?
 私は子どもたちいるから作らないといけないけど、1人だったらめんどくさくなって作らないと思う。

「そうですね」

 青葉くんのこと、ひとつ知れた。
 私は、なんだか嬉しくなりながらケーキの箱を開ける。すると……。

「わあ、見て!ショートケーキ!あ、ガトーショコラに生クリーム付いてる!モンブランにベリータルトも……」
「……ぶはっ!」
「…………あ」

 ああああああ!!!
 もう!私のバカ!

「……笑わないで」
「ご、ごめんなさい。ふふっ、ご、ごめ」
「……」

 ケーキ目の前に、テンション爆上がりしてしまった私が相当面白かったらしい。
 青葉くんは、顔を歪めて大笑いしている。…… 顔が整ってると、笑ってる顔も絵になるなあ。

 いやいや!待ってよ!恥ずかしすぎる!!

「買ってきてよかった。ここまで喜んでくれるとは思ってなかった」
「……恥ずかしい」
「笑ってごめん。鈴木さんはかわいいなあ」
「……」

 またこの人は。
 すぐかわいいって言う。やめて、言われ慣れてないの。

「あ、ありがとうございます。夕飯後に、みんなで選びましょう」
「俺の分も食べていいですからね」
「嫌!太る!」
「ケーキ1個多く食べても太りませんよ」
「……嫌。青葉くんと食べるの」
「わかりました。そうしましょう」

 私は、未だに肩を震わせて笑う青葉くんを視界に入れつつ、ケーキの箱を冷蔵庫にしまった。
 あーあ、恥ずかしすぎる!



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