41 / 247
05
似ている境遇
しおりを挟む「にいちゃんだ!」
「おにいちゃん、いらっしゃい!」
「お邪魔します、要くん、瑞季ちゃん」
リビングへ入ると、これから遊園地にでも行くみたいなはしゃぎようで双子が出迎えをしてくれた。
私なんか視界に入っていないくらい、青葉くんの方へと向かって行ったわ。本当、彼のこと好きよね。
「おにいちゃん、遊ぼう」
「トランプする!大富豪!」
「ゲームがいいっ!スマブラやろう!」
「いいけど、2人とも宿題終わってるの?」
「……あ」
「……あ」
……終わってないのね、その顔は。
私がそう言うと、2人はシュンとした表情になる。やっぱり双子ね、顔がそっくり。
そう思って笑っていると、隣にいた青葉くんも同じことを思ったのか2人を見て笑っている。
「じゃあ、宿題終わってご飯食べたら遊ぼうか」
「本当?」
「すぐやる!」
「そうしてちょうだい。青葉くん、ケーキも持ってきてくれたからご飯後に食べましょうね」
「ケーキ!?」
「わーい!にいちゃん大好き!!」
「よかった。食べようね」
ご褒美があれば、2人はすぐ行動するの。
ケーキと聞いて、すぐさまランドセルから宿題を取り出し始めたわ。今日は甘いものばかりだから、ちゃんと歯を磨かせないと。
「青葉くん、あの」
「はい、なんですか?」
「……ケーキ、開けていいですか」
そんな光景を見つつ手に持つ箱を持ち上げると、青葉くんが急に吹き出した。
「え、え?な、なに」
「真剣な顔してなに言うのかと思ったら。あはは、鈴木さんかわいい」
「……」
……前も言われたけど、すぐ「かわいい」って言う人なのかな。
私は、涙を浮かべて笑う青葉くんを見ながら持ち上げた手を下ろす。だって、ケーキ見たいじゃないの。顔がまた熱くなってきた。
「キッチンで開けましょう。2人、宿題始めてるから集中途切れると可哀想」
「……うん」
「俺もキッチン入っていいですか?」
「どうぞ……」
私がそう言うと、青葉くんは私の手を引いてキッチンへと移動する。……もしかして、私、子ども扱いされてる?
「5つで良かったですか?」
「え?4つじゃなくて?」
「お母さんの分と思って……」
「……ありがとう。喜ぶわ、お母さん甘いもの好きだから」
「もしかして、好きなのは遺伝だったり?」
「……パパも好きだからそうかも」
「あ、お父さんの分も必要だったかな」
「ううん。パパは単身赴任で関西いるから。考えてくれてありがとう」
キッチンに入ると、すぐ手が離れた。
そうなの。
パパは、関西でお仕事をしてる。たまに帰ってくるけど、あてにはしてない。そのくらい、帰宅頻度が低いから。
「同じだ。俺の父親は海外で単身赴任、母親は仕事であまり家に帰ってこない」
「なんだか、似てるわね」
だから、ご飯ちゃんと食べてないのかな?
私は子どもたちいるから作らないといけないけど、1人だったらめんどくさくなって作らないと思う。
「そうですね」
青葉くんのこと、ひとつ知れた。
私は、なんだか嬉しくなりながらケーキの箱を開ける。すると……。
「わあ、見て!ショートケーキ!あ、ガトーショコラに生クリーム付いてる!モンブランにベリータルトも……」
「……ぶはっ!」
「…………あ」
ああああああ!!!
もう!私のバカ!
「……笑わないで」
「ご、ごめんなさい。ふふっ、ご、ごめ」
「……」
ケーキ目の前に、テンション爆上がりしてしまった私が相当面白かったらしい。
青葉くんは、顔を歪めて大笑いしている。…… 顔が整ってると、笑ってる顔も絵になるなあ。
いやいや!待ってよ!恥ずかしすぎる!!
「買ってきてよかった。ここまで喜んでくれるとは思ってなかった」
「……恥ずかしい」
「笑ってごめん。鈴木さんはかわいいなあ」
「……」
またこの人は。
すぐかわいいって言う。やめて、言われ慣れてないの。
「あ、ありがとうございます。夕飯後に、みんなで選びましょう」
「俺の分も食べていいですからね」
「嫌!太る!」
「ケーキ1個多く食べても太りませんよ」
「……嫌。青葉くんと食べるの」
「わかりました。そうしましょう」
私は、未だに肩を震わせて笑う青葉くんを視界に入れつつ、ケーキの箱を冷蔵庫にしまった。
あーあ、恥ずかしすぎる!
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる