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夏バテ気味の小動物、みたいな?
しおりを挟む「鈴木さん!」
家の場所、わかったみたい。
バイト終わりの連絡が来てから20分くらいで、青葉くんは来てくれた。さっきお店で見た笑顔よりも柔らかい表情で、手を振っている。
一応、場所が不安って言ってたから玄関外まで出てたけどたどり着いてよかった。
「いらっしゃい、青葉くん」
「はいっ!お邪魔します!」
なんだ、元気そうじゃないの。
黒いノースリーブに身を包んだ彼は、その腕からトライバル柄?の刺青を披露してくる。もちろん、ピアス穴も真っ赤なインナーカラーも、教室では見えない目も。
やっぱり、目を見て話せるって良いわね。
それに、結構鍛えてるのかな、意外と腕の筋肉もすごい。男の子なんだなあ。要もこんな風になると思うと、なんだが複雑。
「迷わなくて良かった」
「1回行った場所ならなんとなくは分かるので……。それに、あそこの公園の近くにある果物屋さんへ、良くバイトで買い出し行ってて」
「え、あの高級フルーツ店!?」
「本当、高いですよね」
「通りで美味しいわけだ」
さっき見たときより顔色が良くなってる。良かった。
青葉くんは、私の驚いた顔を見てまた笑っている。
今日は、良く笑うな。学校でも、こうやって居ればいいのに。
でも、本当痩せちゃったわね。何があったんだろう?バイトのしすぎとか?
「何かやることあります?」
「後、味付けしてコーンと牛乳入れるだけなので、もうちょっと待っててくれると……」
「じゃあ、瑞季ちゃんと要くんと一緒に食べる準備しますね」
「い、いいわよ。バイト、ずっと立ってたでしょう?ソファで座っててくださいな」
「……何かしたいです」
なんだか今日の青葉くん、小動物みたい。喜び方とか、眉の下がり具合とか。ずっと後ろついてくる子犬みたいな感じ。
さっき会った時なんか、ブンブン振ってる尻尾見えたもの。そんなにお腹空いてるのかな?
玄関の扉を開けながら、私たちは会話を続ける。
「じゃあ、サラダとか運んでくれますか?」
「はいっ!やります!」
「とりあえず、いらっしゃい」
「お邪魔します。……あと、これ。バイト近くにあるお店の美味しいケーキです。甘いもの好きだって言ってたから」
「ケーキ……?」
青葉くんは、そう言って靴を脱ぐ前に白い箱の入った可愛らしいビニール袋を手渡してきた。ちょうどサンダルを脱いだ私は、家に上がりながらそれを受け取る。
ケーキ……、嬉しい。
ケーキ、生クリームかなカスタードかな。イチゴにチョコにチーズ?それとも、タルト?久しぶりかも。
「……あはは、そんなに好きなんですね」
「え?」
「顔、緩んでる」
「……」
「ここで開けないで、入ってからにしてくださいね」
「そ、そんながっつかない!」
「あはは」
「……ありがとう、いただきます」
……そんな緩んでた?
私は、前より楽しそうに笑う青葉くんと一緒にリビングへと向かう。なんだか、しょっぱなから顔が熱いわ。
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