上 下
14 / 247
02

学食が混んでいる理由

しおりを挟む

 学食は、普通科の人たちでいっぱいだった。
 スポーツ科や芸術科は、別棟があるからあんまこっち来ないのよね。だから、必然的に普通科の人しか使わなくなるの。たまにスポーツ科の子を見かけるけど、芸術科の子は見た事がない。

「ひゃー、なんか今日は混んでるね」
「本当。後少し遅かったら席取れなかったかも」
「何かあった?」
「さあ……。安くなる日じゃないし、人気メニューって訳でもないし」

 私と由利ちゃんは、奥のテーブルの一角を確保できた。いつもよく使っていた入り口近くは、他の人が座っていたの。
 こういう時、本当は入り口に近い方が良いんだよね。だって、ギリギリまでここにいれるじゃない。学食って結構広いから、奥まで入ると出るの大変なのよ。

「おーい! スペパンゲット~!」
「マリ、うるさい! 耳元で声出さないでよ!」
「ごめんごめん~」

 由利ちゃんと座っていると、そこにマリとふみか、詩織がやってきた。どうやら、どこかで合流したらしい。みんな、購買の袋を下げている。その中でも、マリの袋がパンパンすぎるんだけど。何買ったらあんなになるの……?

「お疲れー。今日って、何かあるの? なんか人が多い」
「あ、そうそう。さっき購買のおばちゃんと話してきたんだけど、芸術科の橋下くんが登校してるんだって」
「へえ。何ヶ月ぶり?」
「前回来たのが入学式の時だったから、2ヶ月ぶりかなあ」
「芸能人って、忙しいよね」

 この学校の芸術科には、「橋下 奏」っていう芸能人が通っている。私はテレビ見ないから、マリが持ってくる雑誌でしか見た事ないけど、バラエティとかドラマにも出てるんだって。同い年なのに、もう働いてるってすごいよね。
 でも、その分学校に来る日は少ないみたい。
 まあ、そんな人が登校してるって聞けば、一目見たいと思う気持ちはわからなくもない。

「でもさ、なんで学食に人がいるの? 芸術棟行けばいいのに」
「なんか、橋下くんが学食食べたいって言ってたのを誰かが聞いたみたい」
「……それで、コレなのね」
「そんなファンが多い子なんだね……」

 よく見ると、そのほとんどが女子だ。入り口付近をチラチラ見ているという事は、まだ来てないんだろうな。こんな多くの人に見られながら、ご飯食べるってどんな気持ち何だろう。絶対落ち着かないよね。

「でも、ここまで来たら見たいな」
「私も~」
「話題作りになるし!」
「それより、ご飯食べようよ。お腹すいた」
「えー、後ちょっとだけ待ってようよ。5限目まで時間あるし!」
「全く、マリたちもミーハーなんだから!」

 どうやら、私と由利ちゃん以外はその橋下くんとやらを見たいらしい。ふみかなんか、スマホのカメラなんか起動させちゃって!

「じゃあ、私はお弁当温めてくる。マリは温かい方が好きだもんね」
「やった! ありがとう!」
「あ、私も行こうかな」
「行ってらっしゃい~。その間に来たら、写真撮っておくから見せてあげる!」
「はいはい、席だけは取っておいてよね!」
「オッケー! 行ってらっしゃい~」
 
 私と由利ちゃんは、入り口近くにある電子レンジコーナーへと向かった。
 4台しかないから、混んでないと良いんだけど……。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

処理中です...