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生クリームのあの人
しおりを挟む謎すぎる人物の正体が判明したのは、それからちょうど1週間が過ぎた日だった。
私が夕飯を作ってその間子どもたちは公園といういつも通りの日常に、その人は飛び込んできた。
「ただいま!」
「ただいま!」
双子が公園から帰ってきたみたい。
いつもは時間通りに帰ってこなくて、私が公園へ迎え行くんだけど。珍しいこともあるのね。
「こっち! 上がって!」
「え、いいの?」
「いいから!」
なんだか、いつもより騒がしいわね。もしかして、学校の友達でも連れてきた?
「要ー、瑞季ー。誰か来たの?」
私は、カレーの鍋をかき混ぜていたおたまを持ちながら、玄関へと向かう。……あとは、ルーを入れるだけだから火を消してね。
「あ、ねえちゃん!」
「あのね、公園でおにいちゃん見つけたから連れてきた!」
「お邪魔します、鈴木さん」
「……青葉くん!?」
玄関に行くと、そこには満面の笑みを浮かべた双子と、なぜか青葉くんの姿が。
前髪をダラッと垂らし、暑っ苦しいセーター姿という、教室にいる時と同じ格好で立っていた。
な、なんで?
私、青葉くんとそんな話したことないんだけど……。いつのまに、双子と知り合いになったの!?
「あ、先週はすみませんでした」
「先週……?」
なんのこと?
マリにぶつかったことかしら? でも、それを私に謝るのはおかしいよね。うーん?
「生クリーム、買えました?」
「……生、クリー……ム? …………?」
え、生クリーム?
なんかあったっけ?
「おねえちゃん、おにいちゃんとスーパーで会ったの忘れたの?」
「ボケた! ねえちゃんがばあちゃんになった!」
「ちょっと! うるさいわよ! 手洗いうがいしてきなさい!」
「はーい!」
「わかった!」
「あはは、賑やかですね」
洗面所に向かう双子を見ながらいくら考えても、青葉くんの言っていることがわからない私は、玄関で立ち尽くす。すると、
「これでわかりますか?」
そう言って、青葉くんは前髪を分けて後ろ手に縛るように持ち上げた。
……あ、この顔。
「あ、……ああああああああああ!!!」
この顔!
てか、脚!
あのド派手な人だ! 生クリーム2パック買ってた! あの!
「思い出してくれましたか?」
「あ、あ。生クリーム……、同じクラスの……あの」
「はい、マシロ高校2年の青葉です」
私は、ずっと探していた人物を目の前にして、無意識におたまを床に落とす。
それを拾いながら、青葉くんは笑顔で挨拶をしてくれた。
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