上 下
7 / 247
01

絶対知り合いじゃない!

しおりを挟む

 私は、その日もいつも通り双子と一緒にスーパーへ来た。
 ここ、高校から遠いからジャージで来れるんだ。間違っても、知り合いに会うことはないから気軽だわ。

「今日は、ハンバーグね」
「わーい!」
「ハンバーグ食べるっ!」

 本当、子どもってお肉料理好きよね。野菜も食べて欲しいわ。
 でも、うちのハンバーグは玉ねぎだけじゃなくてピーマンとかニンジンもみじん切りして入れちゃうんだ。そうすれば、瑞季たち食べるし。

「玉ねぎは家にあるから、ひき肉と牛乳買うよ」
「うん! 探す!」
「ぼくも!」

 いつもなら、合い挽き100グラム91円なんだけど今日は78円なの! 超お買い得!
 私たちは、お肉コーナーでひき肉を4パックカゴの中に入れる。今日2パック使って、残りは冷凍しておこう。

「おねえちゃん、牛乳!」
「あっち!」
「はいはい。行こうね」

 次は、牛乳!
 乳製品コーナーに向かうと、牛乳以外にも生クリームが安くなっていた。……たまには買っていいよね。
 他の人には言えないけど、みんな見てないところで生クリーム泡立てて食べるほど甘いものが好きなんだ。
 私は、牛乳に続いてカゴに入れるため生クリームに手を伸ばす。すると、

「あ、ごめんなさい」
「こっちこそ、すみません」
「い、いえ…………!?」

 隣に居た男性と、手が当たってしまった。その人も、生クリームを買おうとしてたみたい。

 謝ろうと顔をそちらに向けた私は、その人の格好に固まってしまう。

「…………」

 その男性、一言で表すと「ド派手」。

 だって、耳にこれでもか! ってほどのピアスつけてるし、髪だって男性にしては長めで後ろ縛りされてる。しかも、赤いインナーカラー入り。
 しかもしかも! 悔しいけど、私より脚がほっそい!!

「……あれ、鈴木さん?」
「!?」

 その容姿に見惚れていると、その男性はあろうことか私の苗字を口にしてきた。

 え!? 誰!?
 ……え、私のことだよね。振り向いて後ろを確認したけど、誰もいない。

「……えっと、鈴木ですけど」
「すずきです!」
「こんにちは!」
「兄弟?……こんにちは、元気だね」

 男性は、双子の挨拶に、腰をかがめて笑顔で返事をしている。なんだか、子ども慣れしてる感じだわ。誰だろう。
 高校の人? でも、こんな大人びた人知らないし。近所の人でもない。私、部活やってないから他の学年とか科と交流ないし。

 私の隣では、褒められて嬉しいのかニコニコする双子が。それを見た男性は、2人の頭を撫でている。……本当、子ども慣れしてるわね。

「え、えっと……」
「あ!鈴木さんごめんなさい、バイトの途中で」
「あ、そ、そうなんですか」
「じゃあ、また学校で」
「は、はい……」

 ってことは、高校生!?
 いやいや、若くて大学生でしょ。もしかして、先生とか?

 唖然とした私を置いて、その男性は生クリームを2つ手に取るとそのままレジの方へと行ってしまった。

「……結局、誰だったの?」

 私は、すっぴんジャージでいることを忘れて立ち尽くす。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

待ち遠しかった卒業パーティー

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。 しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。 それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...