【完結】純白の魔法少女はその身を紅く染め直す

細木あすか(休止中)

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3:レンジュ大国管理部メンバー、ここに見参!

11:水面に映るは太陽の照らし②

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 少し歩くと、目の前には水源が広がっていた。

「わあ……」

 この少し先まで飛ばされていたまことは、目の前に広がる光景に目を奪われた。小さくも立派な滝が、水しぶきをあげて存在を主張する。水面奥の地面が見えるほど澄んだ湖、その中で自由に泳ぐ魚。今まで見たどんな水源よりも綺麗で幻想的だった。
 そんな綺麗な水辺に我慢できなくなった彼は、湖の水を手ですくう。口に持っていくと、それを一気に飲み干した。

「……え」

 すると、すぐに体内から魔力が湧き出てくる。
 溢れ出しそうな魔力は、まことの張った気を緩めてくれた。こんなスポットがレンジュにあったのか。まことは、初めての出来事に感動する。しかし……。

「すごい、魔力の貯蔵庫だ。……っ!?」

 もう一口飲んでいるところ、後ろから感じた気配に振り向く。
 そこには、先ほどと同じく黒い戦闘服を着込んだ風音が立っていた。

「結構飛ばされたなあ」

 周囲をぐるっと見渡すと、まことに向かってそう言ってきた。余裕そうな表情が、どこまでもまことを馬鹿にしているような印象を与えてくる。これが、挑発というスキルだろう。冷静な分析をしつつ、その口を開く。

「……ええ、みんなの魔力が追えないくらい遠くでした」

 多少魔法を操れるようになると、知っている人の魔力であれば追うことができる。しかし、何度か試してもこの空間ではそれすら叶わなかった。となれば、答えは限られてくる。

「本当に、ここは魔警の中ですか?」

 その問いに、フッと笑う風音。間を取りながらも、その身体に纏われているうっすらとした殺気がまことの肌に鋭く突き刺さる。

「よく気づいたね。ここは、街外れの森だよ」
「やっぱり……」

 そう、先ほどの空間移動によって4人は屋外に飛ばされたのだ。他の2人は薄々気づいていたようだが、まことはそれに確信を持って気が付いた。さすが、アカデミーを首席で卒業しただけのことはある。

「主界の魔力はすごいですね。4人同時にここまで飛ばしちゃうとは」
「ああ、瀬田さんに魔力増強してもらってるからね」

 アリスの魔力増強はある程度離れた場所でも有効だ。よく見ると、風音は薄いオレンジ色の光に包まれていた。
 まことは、強い魔法使いが目の前にいればそれだけやる気が出る。目標は高い方が燃えるタイプだ。自身よりも未知数に強いであろう風音を、頬を紅潮させて睨みつける。

「僕も早く強くなりたいです」
「なら、実践を重ねるのみだよ。いくらでも付き合うから」
「はい!」

 風音の言葉が嬉しかったのか、笑顔でそれに答えるまこと。
 この子は、まだまだ伸び代がある。それを見た、風音は微笑みながら返事をした。とはいえ、その会話している場所の距離が縮まることはない。互いに警戒しているのだろう。

「じゃあ、本気で勝負させてください!」

 そう言い、まことは先制攻撃をすべく杖を取り出し精神統一を始める。青い光が全身から溢れ出し、まことを包んだ。周囲の水面が、その影響で波打つ。

「……やっぱり、真田はすごいな」
「行きます!」

 まことの魔力量は、上界レベル。だが、彼は自覚していない。
 青い光に包まれたまことを見た風音は、身構えた。アカデミーレベルで、この濃さの色はありえない。

「水龍!」

 まことが、風音の方を向きながら素早く湖の中に手を入れる。すると、湖から巨大な龍が出現した。先ほどゆり恵と出した龍よりも原型を保っていないが、それでも「龍」とわかる程度の形をしている。とはいえ、威力は先ほどと同等かそれ以上だろう。龍の纏っている魔力が、それを知らせてくれる。

「……やっぱり調子良い!」

 それは、いつも出している龍よりも倍大きかった。予期していなかったまことは、喜んで水龍を見た。

「全力で来いよ!」

 それを見た風音は、楽しそうに両手を広げる。その手は、太陽の光のような暖かい色に染まる。まことの青い光をも包み込むほどのそれは、素早く森の中へと広がっていった。風がないのに、草花が均等に揺れる。

「雷龍」

 すると、風音の手から水龍よりも大きな雷龍が現れた。唸り声をあげ、水龍に向かって威嚇をする。彼の身体がピンク色で包まれているということは、幻術か。

「すごい……」

 その迫力に押されるまこと。雷の幻術で作られたそれは、ヒゲまでもしっかりと表現されていた。原型を保つだけで精一杯の水龍とは、大きな差を見せつけてくる。

「負けてられない!……葉針準備!!」

 彼は、水龍に向かってさらに魔法を唱えた。すると、透き通った水龍の体内には、周囲にあった木々の葉が取り込まれていく。
 水龍を操りながら、風を起こして葉を集めているのだ。それは、周囲の状況を把握し、かつ、魔力のコントロールがないとできない高度な技。

「……いけ!」

 まことの合図で、水龍は竜巻を周囲に起こしながら雷龍に向かっていく。2人の頭上で、龍が激しくぶつかり合った。

「できた!」

 実のところまことは、今まで水龍の中に物質を入れ込むのができずにいた。
 この魔法は、魔力だけでなくバランス加減も重要な要素。魔力量をバランスよく放出させないと、物質がボロボロと崩れ落ちてしまうのだ。
 今の一連の流れで、まことは力加減を理解した。こうやって、演習でも彼は成長する。

「葉針!」

 水龍は、雷龍にぶつかりながら体内に溜め込んだ葉を針状にして風音へと向ける。いくら雷龍を攻撃しても、本体を断たなければ意味がない。それに、まことが気づいたということか。

「なるほどね」

 そう言って、シールドを展開し降ってくる葉を防ぐ風音。小さい範囲の攻撃だったため、展開されたシールドに全て吸収されてしまう。そして……。

「標的切り替え」

 シールドで吸収した葉を、そのままの勢いでまことへとぶち当てる。カウンターシールドだ。

「ああ……っ!」

 鋭い葉は、直にまことへと降り注がれる。それを防ぐ暇もなく、まことの皮膚を傷つけた。複数の浅い傷から、血がにじむ。

「油断するな」

 ふらっとしたまことに、風音が素早く距離を縮める。やられる!と目を閉じた瞬間。

「いてっ!」

 風音の魔力が込められた拳を避けるように、コケてしまった。空回りする風音。
 まことは、転けた痛みに顔を歪めるも「助かった」が本音だろう。攻撃が当たれば、今の数倍は痛かったはず。

「……え?」

 特に、滑るような地面ではない。かと言って、運動神経の良いまことが転ぶはずもなく……。疑問は残るが、そんな理由を考える隙もなく風音の攻撃が続く。
 浮遊を続ける龍同士も、激しくぶつかり合っている。

「攻撃してこないと終わらないぞ」

 と言われても、その隙がない。湖に近い場所にいるため、そこに落ちないよう注意しないといけない。風音だけに集中するだけの条件が整っていないのだ。できるわけがない。

「っ……」

 先ほどのすり傷がズキズキと痛む。しかし、ここで負けるわけにはいかない。まだ学びたいことがあるまことは、

「水波!」

 歯を食いしばり近くの湖に再度手を入れ、呪文を唱える。すると、今度は大きな波が湖に出現した。風が完全に止んでいるのに水面が大きく揺れ、波を作り出す。
 風音は、その様子を見てニコッと笑う。

「それを待ってたよ」

 そう言うと、一定の距離を保ち

「スパーク」

 と、素早く唱えてきた。

「うっ、あ……」

 もろに手を水へ入れていたため、まことは感電してしまう。そのまま前に倒れ、気絶してしまった。湖に落ちそうになった彼を、風音が近寄って素早く抱き寄せる。
 瞬間、ザパッと音がすると主人を失った水龍が崩れ落ち大量の水が2人に降り注ぐ。その水しぶきを魔法で乾かすと、

「お疲れさん、ちょっと休んでな」

 まことも、そのままフィールドへ隔離されてしまう。風音は雷龍を消し肩を回すと、

「さて、あと1人か……」

 まことを残してその場を後にした。
 演習で傷ついた周囲の草木は、彼の魔法によって元通りになっている。

「……やっぱ、まことはすごいな」

 全員の演習の様子を見ていたのは、ユキだった。木陰から満足げに呟いた彼は、湖から魔力回復の効果を取り除くとそのまま瞬間移動でどこかに消えていく。

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