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なんでこうなった。

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僕が深藤の求める返答ではないから同じ言葉しか返ってこないのかなという推測と、

もしかしたら逆に深藤が言わないと行けない言葉をド忘れしてたり、緊張して上手く言えない可能性もあるんじゃないか、とも思う。勿論その場合は、何に緊張してるかは知らないけどね。

多分前者だろうけど、後者にかけてみる。

「何?もしかして、セリフでも忘れたの?」 

一応小声で周りを少し気にしながら深藤に直接聞いてみる

「・・・」

困惑した表情のまま答えない 

ハァ…って小さくため息がでたのは許して欲しい。

「んー、深藤くん僕の口元見て声に出して」 

そうだ、いいこと思いついた。と口元に人差し指を当てながら目を見て促す。

「あ…さ、い、お、れ、と、わ、か、れない」

『なっっんでだよ!!!惜しい!なんで別れてくれないんだよっ、本命が見てんだろ!なに、なんかあんの?こんなんじゃ本命が満足しないとか??』

思わず舌打ちしかけたよね。

地団駄踏みそうになるのを抑えて、深藤から視線外して『落ち着け、落ち着くんだ。』と深呼吸をする。

本当にこの男は何がしたいんだろうか。

「涼、」

名を呼ばれて、ハッとする。

上手く話が流れず苛立ちで油断した。

名を呼ばれるのと一緒に腕を掴まれて気がつけば深藤の腕の中に抱きしめられていた。


「ちょっ!深「愛してるんだ!!」」

『いやそれ、抱きしめる相手間違えてない?』

こんなに力の差ってあったのかと思うほど、背中から肩を掴んで目の前の男を引き剥がそうとしてるが、ビクともしない。

「うん、君の愛してる人あっちにいるから」

「さっきから涼は何を言ってんだ?俺の本命がどうのこうの。そもそも本命は目の前にいるお前だ」

深藤の怪訝な声が静かに言葉を強調し強い言葉に変わる。

「…いい加減にしてよ」

『冗談含めて終わらせようとしてるのに、今更すぎだろ。』

「涼、愛してる」

その言葉は、付き合ってる時に欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。

「僕は、愛してない。」

「…っ、今まで、悪かった」

抱きしめてくる強さが少し増しても

声を振り絞ったように耳元で囁かれても

「…うん」

僕は君への気持ちが

無かったとは言わない
簡単に消え去ったとも言わない

たださ、全てを含めて
もう、どうでもいい という気持ちが
心を満たしてるんだ。

「涼っ、」

肩から手を離し、引き離すことをやめてだらけさせた腕が、許しだとでも思ったのか、二人の間に小さく隙間ができた。

目を合わせたいのか、顔を覗き込まれる

「…りょ…う」

今まで君のことで、ずっと傷ついてきたのは僕なのに、なんで君がそんな傷ついた表情をして、僕を見つめてくるの?

「もう帰ってもいい?」

苛立つのも、怒るのも、悲しむのも、
君の言葉で一喜一憂することが
本当に、どうでもよくなったんだよね。

君に言ったところで、
分かってはくれはしないだろうけど。

「嫌…だと言ったら」
「そう」

『今更だけど深藤ってこんなに、コロコロと表情を変えれたんだ。』

僕の知ってる彼の表情は、いつも自信に満ちていて、こんな辛そうな表情なんて1度も見たことなかった。

「涼、俺を捨てるなよ…」

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感想 9

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みんなの感想(9件)

ピスケ
2024.05.18 ピスケ

はじめまして😃とても読み易くて惹かれる好きなストーリーです✨ 更新をお気に入りして待っております😆失礼致しました🙇

解除
マサミ
2021.07.29 マサミ

更新楽しみにしてました!

奏 -sou-
2022.01.09 奏 -sou-

マサミさん、毎回お待たせ更新ですみませんm(_ _)m読んで頂けてることに感謝です。次の更新で完結させたいと思っていますので、また機会ありましたら読んでいただけると幸いです(*^^*)

解除
つき。
2020.09.17 つき。

更新ありがとうございます😭
とても楽しみにしてました😭

奏 -sou-
2022.01.09 奏 -sou-

つき。さんその様に言って頂けて嬉しい限りです。(*´`)アンケートの方もコメントありがとうございました。コメントしていただけてるの今気づき年月経ちすぎており本当に失礼致しましたm(_ _)mご期待に添えれるか分かりませんが本当に毎回更新前は悩み行き止まりの道にいたので今回もう終盤へと向かっていますがこういう道もあっていいんだ。とヒントを頂き感謝です。何年かかってるねん!と言った感じですが、もし今後またつき。さんの目にとまることがあれば幸いです。

解除

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