視界を埋めるのは貴方だけ

奏 -sou-

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変わり映えのない1日を望んで

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「ファントムさんどうしたんだい?」
「うんん、何でも無いの」

「そう?ならいいけど」

彼に気にかけてもらえてるだけで
幸せな気持ちになる。

ウキウキ気分が抜けないまま帰宅をして、夜は丹念に浴槽で隅々まで綺麗にする。

明日会えるかなんて分からないけど、急に道でばったり会うかもしれない。

そう思うと手は抜けないわと意気込んで
ニヤケ面が戻らず、食事中に母に

「ジェシカ、今日のあなた変よ」

心配をさせてしまったけど、
この感情は溢れて止まらないんだもの。

「ねぇ、お母さん」
「なぁに?」

幸せすぎて見落としそうになったけれど娘の初恋を祝うなんて事前に知ることなんてないでしょうし

「今日は何かの記念日?」

結婚記念日か何かかしら?

「え?あぁ、そうね、」

どこか寂しそうな笑みを見せてそれ以上話してくれそうになかったので、無理に聞かずにそのまま食べ進める。

「ジェシカ、美味しい?」

「うん、美味しいわ」
「ふふ、なら良かったわ」

頬を撫でたかと思えば、
そのまま優しく髪を梳くように撫でてくれる母。

父も何も言わずに私たちを見つめていた。

「どうしたの、お母さん?」
「うんん、何もないのよ。愛してるわよジェシカ」

「私も愛してるわ」

ぎゅっと横からハグをされたかと思えば母は静かに食べ終わった食器を手にキッチンに去っていった。

メイドさんがいないわけじゃないけど、自分で自分のことをするのが好きな母は基本的にメイドさんにそこまで求めはしない と言えど彼女たちの仕事でもあるんじゃないのかと友達のお家の話を聞いていたら驚きながらも思うことはあるけど、私の家は私の家のやり方があるんだものね。 

と母の背中を見て育ってきた私は過言する事なく変わらない生活を送ってる。

父は母のやることに対して何も言わない
何か言ってるところを見たことがない

でも無関心なわけじゃないと思う。

『今日のお母さんは何だか変ね。』

明日も何もかわり映えのしない1日が始まって

そこに彼と偶然会えるかもって言う少しの期待がある。


そう、変わり映えのない一日になるんだって

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