視界を埋めるのは貴方だけ

奏 -sou-

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二度目があったのね

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あの時、お兄さんと出会った場所でもある

毎年1度だけ夏が過ぎると開かれる各企業の社長が集うパーティへあの日以来参加する事もなく気がつけば10年の月日が経っていた。

子供の参加はある程度の年齢にならない限りは強制的なものでは無かった分、断り続けてきていたけど流石に17歳になった今年は両親から顔が立たなくなるから参加をするようにとお願いをされ渋々参加することになった

これが間違いだったなんてわかるわけないじゃない。

何処の屋敷かも分からないけれど馬車で連れてこられて、辺り一面見ても一流のドレスや紳士服を着こなしている階級の方々ばかりで嫌気が差しながら、『両親のためよ...逃げちゃダメ』と握り拳をバレないように作って自分に言い聞かせて会場の中に入る。

目の前に見える会食に集中してこの時間をやり過ごすしかないと、父から離れて1口2口で食べれそうなよりどりみどりな和洋折衷の品を気になるものから手を伸ばして食べていく。

お上品に、周りを気にしながら

こういうところの食事って美味しくないものだと勝手な思い込みだったけど『なかなか美味しいのね』と感心しながら口をつける。

緊張もだいぶほぐれてきた頃、父の急かすような声が聞こえて飲んでいたジュースを噴き出しそうになる。

「・・ジェシカ!ジェシカ、こっちへ来なさい!」

そこまで距離は離れていないと言えど、周りの人の目線がこちらに何事かとチラチラと刺さるような感覚で見えて恥ずかしさに、少し小走りで父の背に分からない程度に軽く体当たりをする

「お父様!!」
『声が大きいわ!!』という気持ちを込めて呼ぶ

「あぁ、すまない。ジェシカに紹介したい人がいてな、つい声を出してしまたよ」

 ハハハと笑う父に少し苛立ちを覚えながらも父の背からひょっこりと横に顔を出せば

「ハハハッ、あの頃と変わらずシャイなお嬢さんですな」 
「そうなんだ、なかなか娘の人見知りが抜けなくて・・・すまないね、ルイス君」

父の目の前にいる2人の男性

父と同じくらいの年齢の男性と、その男性の面影がどこか漂う整った顔立ちの青年に父が困ったように会話を流す。

その声音に父を困らせていることが理解できてビックとなりながらも様子を見ていれば

「いえ、気にしていませんよ。よければご挨拶だけでもさせていただけませんか?」

目と目が合うと同時に女性が一瞬で恋に落ちそうなスマイルを見せる。

「ジェシカ」

そのスマイルにトキメキを越してゾワッと背筋に悪寒が走ってしまい返事ができずいれば、少し怒りを含んだ声で名を呼ばれハッとする。

父に腕を引っ張られて、おずおずと横に出てくる。 

「初めまして、申し遅れましたがジェシカと申します。」

彼らだけに聞こえる程度の声でカーテシーをして挨拶をする。

そのまま、顔を上げれば軽く会釈をして顔をあげたルイスと言われた青年とまた目が合う。

「ジェシカさん、遅れましたが僕の名はルイスと言います。よろしく」

そういって、手を差し出される。 

その手に応えることに躊躇い、手を出す事もできずにいれば横からぐいっと父に腕を掴まれルイスさんの差し出した手とそれでもおずおずとなってしまったが握手を交わすことになった。

男性と関わることなんてこの歳になっても学校の先生か父ぐらいの私には、至近距離はまだ我慢できても触れ合うことに免疫などなくて早く男性の角ばった大きな手から伝わる人肌の温度に今すぐこの手をほどきたい。と願うも貼り付け笑みで彼を見るが手が離れる気配がない

『おかしいわ、握手って一瞬のようなもので普通は手を離すでしょう?なぜ離れないのこの手は・・・』

「ル、イスさん?」
引きつり笑みで名を呼べば

「なんでしょう、ジェシカさん?」 
『なんでしょう?じゃないわよ。』

「手をそろそろ・・離し「あぁ・・・」 

パッと離してくれたように見せかけて手のひらを指の腹でスーッと撫でて手を下ろして離れていく。

世の男性慣れしてる女性達ならこんな美形の御曹司が自分に興味を持っているのだと思い大いに喜ぶ行為かもしれないけど私からしたら鳥肌モノの行為でしかない。

あぁ、やっぱりこの人は苦手。

そのあと少しでも早く帰りたくて、此処へは渋々来ていたこともあり父に体調が悪いと先に帰らせて欲しいと二人から離れた後にお願いをしなんとか帰宅することができた。

帰宅後、母に顔色の悪さに心配をかけてしまい

「大丈夫よ。」

といいつつも、内心は美味しくいただいていた食べ物が彼の行動一つで今にも出てきそうなほどの拒否はんのを示していた。

パーティの参加はこれっきり。

父も今回の私の態度で連れてきたことが間違いだったと理解してくれたでしょうし、来年から断っても何も言わず聞き受けてくれるに違いないわ。そう信じてる。

ということは、もう彼とは二度会ってしまったけど三度目に合うことなんてない。

その日の夜は胸焼けと、あのひと時だけだったのに幼い時の記憶までごちゃ混ぜになった夢にうなされ


翌日、最悪な朝を迎える羽目になった。

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