騎士とお嬢様。

奏 -sou-

文字の大きさ
上 下
54 / 58
最終章

11

しおりを挟む

髪の雫で濡れた背中を拭いたあと、私の下着を手に取り身につけてくれる。

とても楽しそうな怪しい瞳と時々目線が合うが、無心を決めてされるがままにする。明日以降の事を考えたくとも、どこか人の心が読めているような節がみられるユーグス陛下に何か問い詰められるのは気が重くなるので今は無心でいるように自己暗示を心の中で唱える。

寝間着用のシルクのワンピース型のネグリジェを着せられ、髪にタオルが巻かれる。次にユーグス陛下も男性用のシルバーのネグリジェにチャスズを履き終える。

「我が姫、寝室へ戻り髪を乾かそう。」

額にキスを落として、横抱きに抱えられる。
そのまま寝室までは食堂に向かった時よりも半分ぐらいの速さで付き『もう着いたの?』と歩幅の違いに感心していると、ドレッサーの椅子に座らさせられる。

「明日はやっとサフィを妻に正式に迎えれる日だ」

噛み締めるように呟きながらタオルを外して髪を包むように拭き、私を鏡越しに見つめるユーグス陛下の青の瞳と目が合う。

「愛しいサフィ…やっとこの手に」

私の髪を掬いキスを落とす。
ドライヤーで時間をかけて乾かした後愛しそうに抱きしめてくる。

これがエドウィー王子だったならどれ程喜びと幸せに満ちて明日が来るのを楽しみしたことか、口が裂けてもユーグス陛下には言えない気持ちを呑み込む。

「ユーグス陛下ありがとう。…眠りたいですわ」
「あぁ、愛しの姫仰せのままに」

本当に機嫌がいいのだろう。
体を横抱きにしてベッドまで連れて行かれる。

背を向けて眠りにつこうとすれば、背中から包み込むように抱きしめられる。

「サフィ、子は欲しいか?」
「…」

結婚式前夜にこんな話をされて、エドウィー王子とならと考えてしまう。

「俺はお前と死ぬまで二人だけでいいと思っているが、国の事を考えれば次世を継ぐ者が必要となる。」

死ぬまで二人だけでいいなんて、王なのだから各王国から嫁を貰って囲えばいいのに。そして、私との子は望めなかったと他の女性に産んでもらい何ならこれから手にする王妃の座を空け渡したいわ。

「継ぐ者が必要だと知っているが、サフィと俺の時間を取られるかと思うと我が子すら手にかけてしまいそうだ」
「…まだ宿りもしていないですわ。」

私のお腹を角張った手を広げて優しく撫でる。

「あぁそうだ。だが想像しただけでも腹が煮えくり返る気持ちがふつふつと湧き、愛してやる自信が無い。」

「私の子で無くともその感情になるの?」
「…いや、どうだっていい女どもに子が出来たところで何も思わない。」

「そう、なら「サフィお前だけだと言っただろう」」

体の向きを強制的に向き合うように変えさせられ、ユーグス陛下と真正面から瞳と瞳がかち合う。

「サフィ、昔からそうだが俺がお前以外の女どもを性欲の処理程度とはいえ一夜を過ごしていても怒るどころか関心を寄せることすらしてこなかったな」

「…えぇ」

「俺だけか?お前を愛し兄弟ですらお前に触れることに苛立ちを感じていたのは」

貴方だけだと思うわ。
それよりも身勝手すぎる発言に、苛立ちを感じる

「私を愛していると言いながら欲に耐えれず他の女性と一夜を共にするような貴方にそのように言われても私には響かないわ。今までの貴方と関係を結んだ女性だってユーグス陛下を愛していた人は多いわ、なのに自分勝手にも性欲処理としか見てない。だなんて失礼にも程があるわ。婚約後ですが今まで通り他の人と夜の営みは過ごして頂戴。女性を性欲処理としてしか見れない御方に私は操を捧げる気はありませんわ。」

落ち着いた声で、ゆっくり目を見て伝える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。

砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。 ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。 その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、 この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。 顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。 前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?

処理中です...