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最終章
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動けず立ちっぱなしというのもしんどいものね。
だいぶ落ち着いてきたのか匂いを嗅ぐことをやめてただ抱きしめてくるユーグス陛下に、これがチャンスと声をかける。
「ユーグス陛下、お腹が空きましたわ」
「…あぁ」
食欲はそこまで復活はしていないが、このまま朝までこの姿勢でいさせられそうだと言っても過言ではない雰囲気を壊す為だ。
「このままは嫌よ。今朝のドレスでいいから着たいわ。」
「他のドレスがある。」
腰を抱いたままクローゼットの前迄連れていかれる。
「サフィ、どれがいい」
「これでお願いしてもいいかしら?」
「あぁ」
あれ程楽しそうな表情をしていたのに、御手洗済んでから接するユーグス陛下のあからさまな態度の変化を不審に思う。
自分でドレスを着ようとした私の手からドレスを奪い、着ていたワンピースを脱がせる所からドレスを着せ、今朝も履いていたシンプルなパンプスを拾いしゃがんで両足履かせてくれる。
「ありがとう。」
「あぁ」
そして自分も身なり整えたら上でドアまでエスコートをしてくれる。
ドアを開けて一歩踏み出すその時、ぐっと体が後ろに戻って「きゃっ」と声を出して見あげれば背後から包むように抱きしめられ
「サフィ、逃げるな。」
「…逃げてないわ」
何を言うかと思えば、逃げ道なんて何処にあると言うの?御手洗に窓なんて存在しない、ドアを出たところで護衛や兵士達がどこからともなく出てくるでしょうし、正面切って逃げようなんて思えるほど、強くなんてないわ。
「トイレに向かう時ドアの隙間を見ただろう」
「光が漏れていたのが視界に入ったから見ただけよ」
こんな薄暗い中よく見えてるわね。
抱きしめられながらだと顔が見えず、どう言う表情でそんなことを言ってるのか見てやろうと無理矢理腕を広げさせて、向き合う。
「何を疑っているのか知らないけれど、現に此処に私は居るわ!それなのに光が漏れていたことに目をやっただけでそんな風に言われるなんて心外よ。」
「あぁ、すまなかった。」
体の向きを変えようとしたタイミングで腰を引っ張られ真正面から抱きしめられる。
「お前が俺の元からいなくなる夢にここ最近うなされる。…現実になってしまいそうで少し離れるとこれだ。」
微かな震えを感じ取るが、気づかなかったことにした。
「ユーグス陛下、大丈夫よ。…ここに居るわ。」
「あぁ」
「さぁ、食堂へ行きましょう。」
体を離してユーグス陛下の手をとる。
こうでもしないと、抱き寄せられたり抱きかかえられたりとベッタリとひっつく形で食堂へ行くことになる。腰に手を回して歩くなんてほぼお互い無理な体勢を取ってるからこんな長い廊下でなんてお断りだもの。
私から手を握ったことに一瞬驚いた様子だが嬉しそうなオーラが身にまとっているのを感じる。
「サフィ、恋人同士みたいだな。」
「…えぇ、そうですわね。」
自分の身を守るためにしたことが、何だか望んでない解釈のされた方をしているけど気にしない、気にしないようにするのよ、サファリーア。
食堂が只ですら遠いのに、ユーグス陛下がゆっくりお歩きになるので食堂に着く頃には無駄にエネルギーを消耗してぐったりしたのは言うまでもない。
そして、そんな私を片足に乗せて朝と同様食べさせ方式だったがもう好きにさせていた。
だいぶ落ち着いてきたのか匂いを嗅ぐことをやめてただ抱きしめてくるユーグス陛下に、これがチャンスと声をかける。
「ユーグス陛下、お腹が空きましたわ」
「…あぁ」
食欲はそこまで復活はしていないが、このまま朝までこの姿勢でいさせられそうだと言っても過言ではない雰囲気を壊す為だ。
「このままは嫌よ。今朝のドレスでいいから着たいわ。」
「他のドレスがある。」
腰を抱いたままクローゼットの前迄連れていかれる。
「サフィ、どれがいい」
「これでお願いしてもいいかしら?」
「あぁ」
あれ程楽しそうな表情をしていたのに、御手洗済んでから接するユーグス陛下のあからさまな態度の変化を不審に思う。
自分でドレスを着ようとした私の手からドレスを奪い、着ていたワンピースを脱がせる所からドレスを着せ、今朝も履いていたシンプルなパンプスを拾いしゃがんで両足履かせてくれる。
「ありがとう。」
「あぁ」
そして自分も身なり整えたら上でドアまでエスコートをしてくれる。
ドアを開けて一歩踏み出すその時、ぐっと体が後ろに戻って「きゃっ」と声を出して見あげれば背後から包むように抱きしめられ
「サフィ、逃げるな。」
「…逃げてないわ」
何を言うかと思えば、逃げ道なんて何処にあると言うの?御手洗に窓なんて存在しない、ドアを出たところで護衛や兵士達がどこからともなく出てくるでしょうし、正面切って逃げようなんて思えるほど、強くなんてないわ。
「トイレに向かう時ドアの隙間を見ただろう」
「光が漏れていたのが視界に入ったから見ただけよ」
こんな薄暗い中よく見えてるわね。
抱きしめられながらだと顔が見えず、どう言う表情でそんなことを言ってるのか見てやろうと無理矢理腕を広げさせて、向き合う。
「何を疑っているのか知らないけれど、現に此処に私は居るわ!それなのに光が漏れていたことに目をやっただけでそんな風に言われるなんて心外よ。」
「あぁ、すまなかった。」
体の向きを変えようとしたタイミングで腰を引っ張られ真正面から抱きしめられる。
「お前が俺の元からいなくなる夢にここ最近うなされる。…現実になってしまいそうで少し離れるとこれだ。」
微かな震えを感じ取るが、気づかなかったことにした。
「ユーグス陛下、大丈夫よ。…ここに居るわ。」
「あぁ」
「さぁ、食堂へ行きましょう。」
体を離してユーグス陛下の手をとる。
こうでもしないと、抱き寄せられたり抱きかかえられたりとベッタリとひっつく形で食堂へ行くことになる。腰に手を回して歩くなんてほぼお互い無理な体勢を取ってるからこんな長い廊下でなんてお断りだもの。
私から手を握ったことに一瞬驚いた様子だが嬉しそうなオーラが身にまとっているのを感じる。
「サフィ、恋人同士みたいだな。」
「…えぇ、そうですわね。」
自分の身を守るためにしたことが、何だか望んでない解釈のされた方をしているけど気にしない、気にしないようにするのよ、サファリーア。
食堂が只ですら遠いのに、ユーグス陛下がゆっくりお歩きになるので食堂に着く頃には無駄にエネルギーを消耗してぐったりしたのは言うまでもない。
そして、そんな私を片足に乗せて朝と同様食べさせ方式だったがもう好きにさせていた。
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