騎士とお嬢様。

奏 -sou-

文字の大きさ
上 下
51 / 58
最終章

08

しおりを挟む

「あぁ、もっと欲しい。お前からの愛ならいくらあっても足らないからな。…俺からの愛はまだまだ足らないだろう?」

足らないってどういうことよ!

貴方からの愛情表現は足りに、足りまくってるわ。もうお腹いっぱい通り越して吐きそうよ。

「私はもう満足よ。…目が覚めてお腹空いたわ、でもその前に御手洗に行きたいから手を離して頂戴。」

「少ししか注ぐことが出来てない愛情で満足されては困る。あぁ、分かった。」

楽しそうに笑いながら返事をした癖に手を離すどころか、持ち上げて私の手の甲にキスをしてくる。

「ユーグス陛下」

楽しいのは貴方だけよ。

「サフィ、そう怒るな。連れて行ってやろうか?」
「怒っていません。いいえ結構ですわ、場所を教えて頂戴。」

離れていた身体を急に引き寄せられ、お互いの距離はゼロになる。

私の顔はユーグス陛下の胸の前にある。

「サフィ、愛してる。幸せで堪らない。俺はお前がいなくなったら生きていけない…出入口ドアの近くに扉がある。そこだ」

「必ず帰ってこい」と額にチュッとキスを落として手を離して私を解放してくれた。

重みある告白をされたが、あの出入口まで行くのにモンスターでも出てくるのかしら。

「心配しなくても済めば戻ってきますわ。」

ゆっくり起き上がりベッドから降りて、ロウソクの灯火を頼りに言われた通りの場所目指して歩く。

昼間よりまだマシにはなっていたが、まだまだ足の力の入れ方が不安定で歩き方にバランスの悪さが出てしまう。

やっとたどり着いた時、ふと目的のドアの横の外の光が漏れているドアを横目で見る。

逃げる。という考えは無きにしも非ず。
だがタイミングをミスれば死しかないのも事実

気にしないようにして、教えて貰ったドアを開けて手探りでスイッチを探す。
カチッと言う音と共に電気がついたので、状況を確かめてお花摘みをすることにした。

済んで手を洗い、鏡で身なりを確認してガチャりと音を立てて、ドアの外に出れば不安気な表現で此方を見て突っ立ているユーグス陛下が数歩先にいた。

「…ユーグス陛下?」

「サフィ…」
その場から動かずに両手を広げて私を呼ぶ

この数分の間に何があったというの?

「サフィ、」

小さく、弱い声で呼ぶので私もだんだん不安になる。

「ユーグス陛下、どうなさったの?」

そう言いながら、ゆっくり歩くが数歩分の距離しか離れていないので直ぐにユーグス陛下の胸の中へたどり着いてしまった。

ぎゅっと抱きしめ首に鼻をあてがい、私の匂いを嗅ぐ。その時間がとても長く感じるが何も言わずされるがまま真っ暗な天井を見つめていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...