騎士とお嬢様。

奏 -sou-

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最終章

07

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シルクの掛布をお互いの胴体部分にかけて、枕があるにも関わらず腕を差し出してくるユーグス陛下

「ユーグス陛下、枕がありますわ」
「あぁ、知っている。」

だからなんだ?頭を乗せろ。と目が言ってるわよ。

「サフィ、」

渋々と感じ取られないようゆっくりだが頭をユーグス陛下の腕に預ける。もちろんその分、顔の距離が縮まってしまったが仕方ない。

「俺の愛おしいサファリーア、いい夢をみろ。」

チュッと瞼の上にキスをして自由なもう片方の手で私の髪を梳きながら優しく撫でてくる。

何もかもに疲れを感じていた私にはユーグス陛下の充分な睡眠を誘う行動に、直ぐに意識を手放した。

.
.
どれだけ寝たのか分からないが目を覚まし、瞼を開ければロウソクの灯火が色んな所に置かれており、部屋が温かい色で灯されていた。

身体を起こそうとしたが、腰に乗っている手の重さで1人じゃないことを思い出す。

ふと横を見れば此方に向いて目を閉じているユーグス陛下の、整った顔がロウソクの灯火で見えた。

本当に眠っているのかしら?とロウソクの灯火では置いてる場所からの距離から限度もあり、顔を近づけて確認する。

『…まつ毛長いのね。鼻筋もしっかり通ってるし、肌も綺麗、ニキビすらないのね…凛々しい眉毛だこと。自分で整えてるのかしら?』こんなにまじまじとユーグス陛下の顔を見たのは初めてかも知れない。いつも私より先に起きているか、目を閉じているからと言ってこんな距離で顔を見ることなんて無かったもの。

「サフィ、キスはまだか?」

顔を近づけたまま、ボーッとしていたら寝てる筈のユーグス陛下の口から聞き間違えであって欲しい言葉が聴こえてきた気がする。

『えぇ、きっと気の所為ね。』
そう思うことにして、ぽすりと体をベッドに戻せばぱっちり澄んだ青色の瞳が此方を見ていた。

「サフィ、」
「おはよう、ユーグス陛下」

ベッドの中で、下半身を使って挨拶なんて出来ないので、笑顔を貼り付けて挨拶をする。

「サフィ、眠る王子に真実の愛を込めたキスをして目を覚ます物語を知っているか?」

知るわけないでしょ。
私が知っているお話はどれも男性の真実のキスでお姫様が目を覚ますということよ。
それはどこの国のお伽噺なのかしら、私が考えるに100%リヴォルノ王国産だと思うわ。

「残念ながら存じ上げませんわ。」
「なら調度良い機会だ、実践して学べるな」

ただ、キスをして欲しいだけでしょう。

「サフィ、真実の愛を込めて俺を起こしてくれ」

残念ね、一生起きれないんじゃないかしら。
私の片手を握り、目を閉じているユーグス陛下に『こんな事をしたがるような少年の様な心を持ち合わせていたのね。』と静かに見つめていてもいいのかも知れないけど、痺れを切らして襲われるなんてことが無きにしも非ず。

「ユーグス陛下、失礼しますわ」

そう言って、こめかみに触れるだけの軽いキスをすれば、ぱちりと瞼を開いたブルーの瞳と近距離で目が合う。

「…サフィ場所が違う。」
「いいえ、私の知っている物語ではこめかみになさっていましたわ。現に、ユーグス陛下お目覚めではございませんか。…私の愛が足らなかったと、おっしゃりたいの?」

少し寂し気な表情で下を見る。
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