37 / 58
第四章
03
しおりを挟む「…ィ…フィ…サフィ」
誰かが私の名を呼びながら優しく髪を梳くように頭を撫でてくれている。
その触り方や声から懐かしい気がする。
ずっと私を見守ってきたくせに肝心な時にいなかった人の声に似てる。
肝心な時…あれ?肝心な、何か忘れてる
…サラン…サランは?
あの時どうだったかしら、私は彼女を助けようとして、助けれた?
…いいえ、助けれてない?
そうよ、助けれてないわ!早く目を覚まさなきゃ!
早く起きて彼女を助けなきゃ!!!
「サラン!!!」
目を開けると同時に上半身を起こしサランの名を叫んでいた。
現実か夢か分からないけど、サランを探さなきゃと周りを見回すが見当たらない。
「…サラン?どこ、どこなの?」
自分の身体の上にあった布を横にやり、乗っていた場所からドアが見えたのでもしかしたらドアの外にサランがいるかもしれないと地に足をつく
思った通りに足に力が入らず前に倒れかける前にふわっと横から腕がさし伸ばされ身体を受け止められた。
「サラン?」
もしかしてサランは視界外れにいただけ?
「…サフィ」
こんなにサランが声が低いわけないわ、誰?
身体を受け止めてくれた人物を見れば
「騎士…」
「サフィ、やっと目が覚めたと思ったら…」
言葉も途中でぎゅっと抱きしめられる。
騎士の身体が少し震えているように感じたが、私の頭の中は悲痛な叫び声で此方を見ていたサランの顔がフラッシュバックしてそれどころでは無い。
騎士なら知っているかもしれないと
「騎士、サランは?」
抱きしめ返すこともせずに問う私に
抱きしめる力を緩めることなく
静かな間の後で
「サランは残念だが、」
「…な、に?」
それ以上聞きたくないけど、聞かなきゃ
「サフィを見つけた時には、サランは馬車と一緒に崖下へ」
「そんな…そんなのって…」
有り得ない、ありえないわ!
そうよ、お父様やお母様に聞けばわかるわ。
もし、分からなくても兄さん達か城に仕える誰かしらが知っているはずよ!!
そうなれば、早くドアの向こうに行かなきゃ。
抱きしめる騎士から離れようとお互いの胸の間に両手を滑り込ませてできた隙間から騎士の胸板を押す。
「サフィどこに行く」
その行動に、私が離れたがってることを理解したようだが離す気は全くない様で腕の力が緩まない。
「はな、して!」
「サフィ」
「お父様やお母様にも確認したいの!」
「サフィ、落ち着け!」
騎士の声にハッとなり、瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。それを自分ではとめることができず、「サランに会いたい…」騎士の胸元で小さく呟くように声に出してみたが、会えるわけなく
「守れなかった…守れなかったのよ!サランを守りたかっ…た、のに!なんで、私だけが生きてるのよおおぉ!」
騎士に当たったところで彼女は戻ってきやしないって分かってる、分かってるけど、止めどない涙を零しながら騎士の胸板をグーでドンドンと叩きながら、抑えきれない気持ちを騎士に訴える。
「サフィ…誰しも死に逆らえない。俺もサフィもだ。彼女は無惨だったが彼女の決められた最後だった、それを変えることはできない。だが、サフィがそれだけ悲しみ哀れんで悔いてくれてるなら彼女も嬉しいだろう。今やきっと天国へ導かれているはずだ。悲しみは直ぐには癒えぬだろうが彼女を思うならこれ以上彼女への未練を強く思ってやるな。」
抱きしめなおされ、頭から肩まで優しく何度も私を落ち着かせるためにゆっくり撫でながら優しく穏やかな声で語りかける。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。



夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる