騎士とお嬢様。

奏 -sou-

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第三章

08

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「サファリーアさん、此処の庭師は上手くお育てになられていますね」

迷路の様に続く道に高さの違う花を下から3色になるように植えており、時期的に満開ではないが殆どの花たちが元気に咲き誇っている。

「他のお屋敷のお庭を見た事がありませんので、よく分かりませんがそう言って貰えて嬉しいですわ」

幼い時から、兄さん達の剣の練習を見に来たついでにこの迷路みたいな造りをした庭の中で遊んだ記憶がある。

年々此処へ足を運ぶ回数は減っているが、当初薔薇園にする予定を幼い私が触れるであろう高さまで棘のない花にし1番上の並びに向日葵と色が被らないよに3色そして、これ以上進むと危ないという場所にだけ薔薇を全面に植えていたりする。

私の事を考えて造られたままずっと変わらず此処を守り続けてくれる庭師の作品を褒められて、とても嬉しい気持ちが溢れた笑みで返事を返せば

「サファリーアさん、貴女は本当に…此処にいる愛情が込められて育てられている花達に負けないほど愛らしく美しい女性ですね。」

いつの間にかエドウィー王子と空いていた一人分の距離がゼロに近くなっていた。

「…お褒め頂き光栄ですわ。」
「事実ですよ。」

片手をすくわれ、そのまま手の甲にキスを落とされる。

「サファリーアさん、貴女に我が国へ一緒に来て欲しい。…今日帰る予定です。」

エドウィー王子の瞳の力に吸い込まれそうに、顔を近づけてしまう。

鼻と鼻がくっつき、瞳を閉じようと瞼がゆっくり落ちかけながら

「…は…「サフィ!!」」

大きな苛立ちの含んだ声に驚いてパッとエドウィー王子から身を離して声のする方を見れば

「騎士…」

『兄さんとあっていたんじゃなかったのかしら?』

ズカズカと大きな一幅で、直ぐに私の目の前まできた騎士の瞳は怒りを帯びた強い力で私を見ていた。

「何をしていた」
「…見つめあっていたの」
「見つめあっていた?その男からのキスを待っている顔をしていたように見えたが」
「婚約者との一時よ、責めないで…」
「…責めていない。」

先程とは違った低く落ち着いた声で否定の返事と共に、騎士の大きな腕の中へと抱きしめられる。

騎士が本当に私の事が好きなんだと伝わってくる。

だからこそ、私とエドウィー王子のキス1つ許せないんだろうとも予想がつくけど、騎士のわがままばかり聞いていられない。

私だって、恋がしたい。

婚約者であるエドウィー王子を知ってみたいと思った。
彼の国へ行って、知らない世界を見てみたい、触れてみたいと思った。

私がイエスと言ってエドウィー王子について行くことに反対をすることなんて目に見えてる。

反対しなくても着いてくるだろうし、なんなら他国で無礼をしかねない。それこそ、騎士を守ってあげれないわ。

本当に、どうしたらいいの?

抱きしめられて上向きになった私の瞳には灰色の気持が広がって霞んでいた。

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