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第三章
06
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「エドウィー王子、庭を案内する前に1度着替えて参りますわ。よければ庭へ続く鍛錬場付近でお待ち頂けませんか?」
席を立ち、出入口付近で待機していたメイドに声をかける。
「エドウィー王子を案内して欲しいの。」
「かしこまりました。」
エドウィー王子も席を立ち、メイドと共に先に部屋を出ていく。私は軽く会釈をし微笑む。
「サファリーアさん、お待ちしています。」
「えぇ、少しの間お時間を下さい。」
エドウィー王子が出ていったのを確認してから、1度部屋に戻ろうと動けば騎士に腰を抱かれ、来た時と同様の姿で部屋に戻ることになった。
大人しくクローゼット近くにあった椅子に座って騎士の行動をみる。
「庭を歩くのであれば、そっちよりこっちのドレスの方が動きやすそうだ。」
勝手を知っている騎士はクローゼットを開けて先程は違う紺色の足元がスッキリしたドレスを選んでくれた。そのドレスに着替える前に先程洗えなかった手のひらを洗おうと1度椅子から立ち、部屋の一角に置いてあるボウルにポットから水を注ぎ手を洗う。
急ぐと水が飛び散るからと、あまり周りに飛び散らない程度のスピードで手を洗っていたら、上から影が差しふわりと温かみを感じ見知った大きな角張った手が私の手と重なる。
私の指先を撫でるように触れたかと思えば、指の間に指を入れてギュッと握ってみたり、軽く手を洗うはずが水中で水の流れに反した動きをしているため、水がボウルの壁にあたり、ちゃぷん、ちゃぷんと小さく波打つ音を出しながら跳ね返る。
何を考えているのか、手遊びだけでは飽き足らず騎士は腰を屈めて私の右首筋根に顔を押し当てる。
もう手を十分に洗えたので、ボウルから出したいと思うが騎士に握られてたら出すに出せない。
「騎士、手を拭きたいの」
「………」
おかしい、こんな近距離で聞こえてないわけが無い
「ねぇ騎士、手を離して」
「………」
人の首元に顔を埋めて、もしかして寝てしまったの?
「ユーグスさーん、起きてますかー?」
手を揺らしてみる。
「…起きてる。」
『起きてるなら返事返して頂戴よ!』
と少しムッとしたが、要件を伝える。
「騎士、手を拭きたいから離して欲しいの。」
「あぁ、分かった。」
そう言ってポット付近に置いてあったタオルを手に取り、水から出した手を包んで拭いてくれる。
「…ありがとう騎士」
さて、着替えなきゃと顔を上げれば
「サフィ」
耳の横で甘く囁くかのように名を呼ばれる
「騎士、着替えたいわ」
拭き終わったタオルをボウルの横に置いて、私の指の形をなぞるかのように触れる騎士に次の行動に移りたいことを伝える。
「あぁ」
そのまま手を握られてそんな遠くもないクローゼット前まで連れていかれる。
席を立ち、出入口付近で待機していたメイドに声をかける。
「エドウィー王子を案内して欲しいの。」
「かしこまりました。」
エドウィー王子も席を立ち、メイドと共に先に部屋を出ていく。私は軽く会釈をし微笑む。
「サファリーアさん、お待ちしています。」
「えぇ、少しの間お時間を下さい。」
エドウィー王子が出ていったのを確認してから、1度部屋に戻ろうと動けば騎士に腰を抱かれ、来た時と同様の姿で部屋に戻ることになった。
大人しくクローゼット近くにあった椅子に座って騎士の行動をみる。
「庭を歩くのであれば、そっちよりこっちのドレスの方が動きやすそうだ。」
勝手を知っている騎士はクローゼットを開けて先程は違う紺色の足元がスッキリしたドレスを選んでくれた。そのドレスに着替える前に先程洗えなかった手のひらを洗おうと1度椅子から立ち、部屋の一角に置いてあるボウルにポットから水を注ぎ手を洗う。
急ぐと水が飛び散るからと、あまり周りに飛び散らない程度のスピードで手を洗っていたら、上から影が差しふわりと温かみを感じ見知った大きな角張った手が私の手と重なる。
私の指先を撫でるように触れたかと思えば、指の間に指を入れてギュッと握ってみたり、軽く手を洗うはずが水中で水の流れに反した動きをしているため、水がボウルの壁にあたり、ちゃぷん、ちゃぷんと小さく波打つ音を出しながら跳ね返る。
何を考えているのか、手遊びだけでは飽き足らず騎士は腰を屈めて私の右首筋根に顔を押し当てる。
もう手を十分に洗えたので、ボウルから出したいと思うが騎士に握られてたら出すに出せない。
「騎士、手を拭きたいの」
「………」
おかしい、こんな近距離で聞こえてないわけが無い
「ねぇ騎士、手を離して」
「………」
人の首元に顔を埋めて、もしかして寝てしまったの?
「ユーグスさーん、起きてますかー?」
手を揺らしてみる。
「…起きてる。」
『起きてるなら返事返して頂戴よ!』
と少しムッとしたが、要件を伝える。
「騎士、手を拭きたいから離して欲しいの。」
「あぁ、分かった。」
そう言ってポット付近に置いてあったタオルを手に取り、水から出した手を包んで拭いてくれる。
「…ありがとう騎士」
さて、着替えなきゃと顔を上げれば
「サフィ」
耳の横で甘く囁くかのように名を呼ばれる
「騎士、着替えたいわ」
拭き終わったタオルをボウルの横に置いて、私の指の形をなぞるかのように触れる騎士に次の行動に移りたいことを伝える。
「あぁ」
そのまま手を握られてそんな遠くもないクローゼット前まで連れていかれる。
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