27 / 58
第三章
05
しおりを挟む「サファリーアさん、おはようございます。」
食堂に足を運べば、優雅にコーヒーを飲んでるエドウィー王子と目が合う。
「エドウィー王子、おはようございます。」
騎士から離れようと腰に回された腕を解くために出来るだけ目立たないように小さく抵抗する。
「体調は、いかがですか?」
騎士のことが目に入っていないわけはないはずだがまるでいないかのように私だけを見つめる。
「なんとか大丈夫ですわ、昨日は失礼致しました。」
騎士の腕が中々解けず、『本当に何を考えているの?』とせっかくスッキリとした目覚めのはずが昨日と一緒で最悪な気持ちに逆戻りしかけている。
「それはよかった。…サファリーアさんがよければ食事後、少し庭を案内してはいただけませんか?」
「えぇ、ぜひ!」
出入口で立ち止まっていたが、自分のいつも座る席へと向かう。
縦に長いテーブル、お父様の席が中央でその隣がお母様、左右に分かれて一人分空けながら兄さんと私の席があり、エドウィー王子が座ってる場所は、ハロルド兄さんの席から次の次辺りで、私はお母様の隣の隣だから斜め視線にズレてしまうけど致し方ないと騎士に椅子を引かれ着席する。
「ありがとう。騎士も座って頂戴」
「いいや、此処でいい。」
声をかけるが拒否されてしまい、私の斜め横の背後で立ち止まる。そのタイミングと同時に食事をメイドが運んできて私の前に本日の朝食が並んだ。
「騎士、食べないの?」
「あぁ、迎えに行く前に食べた」
気になって騎士に問えばもう朝食を食べた後だと言う。エドウィー王子の前でもあるし、あまり騎士に構うのは良くない気がしてそれ以上何も言わず、目の前のフルーツたっぷりのシリアルにミルクをかけて食べることに集中することにした。
「サファリーアさん、フルーツはお好きですか?」
「…えぇ、好きですわ。」
「それはよかった。我国のフルーツはみずみずしくきっとサファリーアさんにも喜んで貰えそうですね」
ニッコリと微笑まれて私もつられて微笑む。
「それは是非、頂いてみたいです。」
騎士とはまるで別のタイプの男性で、微笑みの裏があるんじゃないかと恐れていたが、早く食事を終わらせて二人でお喋りをしたいと思う気持ちが芽生えている。
「サフィ、ついてる」
そんな楽しい雰囲気を壊すかのように騎士が私の頬を撫で上に向かせて自分の親指で口端を拭う。
「騎士、言ってくれれば自分でするわ。」
『口を拭くためのナプキンをしているじゃない!』どうせならそれを使って欲しかった。
拭った指を自分の口元に持っていこうとする騎士の行動にすぐさまスプーンから手を離し手首を掴む。
「騎士ダメよ」
拭ける布が見当たらず、ドレスで拭くか一瞬悩むがエドウィー王子の手前躊躇しもう片方の手で私の口端のミルクを拭った親指の水気を拭う。
「サフィ、何をする」
「布が見当たらなかったから仕方ないじゃない、手を洗ってきて頂戴」
そう言って騎士から手を離してフィンガーボウルを探すがテーブルの上にある訳もなく自分も手を洗いに行かなければならないという事実に溜息が出そうになる。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる