騎士とお嬢様。

奏 -sou-

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第三章

05

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「サファリーアさん、おはようございます。」

食堂に足を運べば、優雅にコーヒーを飲んでるエドウィー王子と目が合う。

「エドウィー王子、おはようございます。」

騎士から離れようと腰に回された腕を解くために出来るだけ目立たないように小さく抵抗する。

「体調は、いかがですか?」

騎士のことが目に入っていないわけはないはずだがまるでいないかのように私だけを見つめる。

「なんとか大丈夫ですわ、昨日は失礼致しました。」

騎士の腕が中々解けず、『本当に何を考えているの?』とせっかくスッキリとした目覚めのはずが昨日と一緒で最悪な気持ちに逆戻りしかけている。

「それはよかった。…サファリーアさんがよければ食事後、少し庭を案内してはいただけませんか?」
「えぇ、ぜひ!」

出入口で立ち止まっていたが、自分のいつも座る席へと向かう。

縦に長いテーブル、お父様の席が中央でその隣がお母様、左右に分かれて一人分空けながら兄さんと私の席があり、エドウィー王子が座ってる場所は、ハロルド兄さんの席から次の次辺りで、私はお母様の隣の隣だから斜め視線にズレてしまうけど致し方ないと騎士に椅子を引かれ着席する。

「ありがとう。騎士も座って頂戴」
「いいや、此処でいい。」

声をかけるが拒否されてしまい、私の斜め横の背後で立ち止まる。そのタイミングと同時に食事をメイドが運んできて私の前に本日の朝食が並んだ。

「騎士、食べないの?」
「あぁ、迎えに行く前に食べた」

気になって騎士に問えばもう朝食を食べた後だと言う。エドウィー王子の前でもあるし、あまり騎士に構うのは良くない気がしてそれ以上何も言わず、目の前のフルーツたっぷりのシリアルにミルクをかけて食べることに集中することにした。

「サファリーアさん、フルーツはお好きですか?」
「…えぇ、好きですわ。」
「それはよかった。我国のフルーツはみずみずしくきっとサファリーアさんにも喜んで貰えそうですね」

ニッコリと微笑まれて私もつられて微笑む。

「それは是非、頂いてみたいです。」

騎士とはまるで別のタイプの男性で、微笑みの裏があるんじゃないかと恐れていたが、早く食事を終わらせて二人でお喋りをしたいと思う気持ちが芽生えている。

「サフィ、ついてる」

そんな楽しい雰囲気を壊すかのように騎士が私の頬を撫で上に向かせて自分の親指で口端を拭う。

「騎士、言ってくれれば自分でするわ。」

『口を拭くためのナプキンをしているじゃない!』どうせならそれを使って欲しかった。

拭った指を自分の口元に持っていこうとする騎士の行動にすぐさまスプーンから手を離し手首を掴む。

「騎士ダメよ」

拭ける布が見当たらず、ドレスで拭くか一瞬悩むがエドウィー王子の手前躊躇しもう片方の手で私の口端のミルクを拭った親指の水気を拭う。

「サフィ、何をする」
「布が見当たらなかったから仕方ないじゃない、手を洗ってきて頂戴」

そう言って騎士から手を離してフィンガーボウルを探すがテーブルの上にある訳もなく自分も手を洗いに行かなければならないという事実に溜息が出そうになる。
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