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第二章
07
しおりを挟むエドウィー王子の声と共にビュンと音がしたかと思えば騎士と私の目の前に鋭い刃先が見えた。
今手を離されると頭から地面にダイブしかねない程、後ろへ折れ曲がるような体制になっていた私を抱きしめる力は変わらず、ゆっくり上半身を持ち上げながら刃先の向こうを見据えていた。
「…何のつもりだ」
「何のつもりだと?私の妻になる女性を婚約者の前で手を出そうとしている貴方が何のつもりか是非聞きたいものですね。」
「…サフィの目の前にある剣をしまえ」
「えぇ、是非ともしまいたいのでサファリーアさんからその手を離してはいただけませんかね?」
エドウィー王子が私と騎士へ距離を詰めていることもあり刃先が騎士の喉仏へと近づく。
私を離せと言うけれど、体勢を元に戻しかけて止まってる私的には、剣が邪魔な上に今騎士に手を離されたらバランス崩して地面に後頭部からダイブよ。
「おいおい、これはどういう状況なんだ?」
エドウィー王子でも騎士でもない、聞き覚えのある声がした方向に視線をやれば、テラスの出入口のドアに片手で押し開けてつったている兄さんが困惑した表情でこちらを見ていた。
やっと救世主が到着したということね。
「…兄さま」
と、ホッと肩の力をぬけば、エドウィー王子が静かに剣を仕舞い、騎士も私をしっかりと立たせて手を離してくれた。その勢いで騎士から離れて兄さんの元へと駆け寄る。
「サファリーア」
駆け寄った私を片手で抱き寄せて心配そうな目で見つめてくる兄に微笑んでみせる。
「兄さま、おかえりなさい」
「ただいま、サファリーア」
少し安心したかのような表情で兄さんが頭を撫でてくれるその手が暖かくて目を細めていれば兄さんが騎士の方に目を向ける。
「ユーグス、この状況はなんだ?」
「……サフィを目の前の男から護っただけだ。」
「目の前の男とは、エドウィー王子のことか?」
「あぁ」
兄さんが、エドウィー王子の方を向いて、私を背後に腰を軽く折り曲げて会釈をする。
「今日は我が妹、サファリーアの喜ばしき17歳の誕生日を祝いに遠い所から遥々、お越し頂き誠に感謝をしています。」
「こちらこそ、この度は麗しきサファリーアさんの誕生日パーティーに招いて頂きありがとうございます。」
にこやかな笑みで会話している兄さんとエドウィー王子が怖くてたまらない。
「妹の姿がみえないと思い探せばこんな寒空の下でエドウィー王子が剣をユーグスに向けている、それだけなら何かしら事情があったのだと声をかける事はしないつもりでしたが、どういうことか妹がユーグスに抱きしめられている上に剣先が妹の顔の前にあった。…これは、どういう事なのかユーグスに聞けば護った。の一言、妹の顔の前に刃先があるにも関わらず何をどう護ったと言えるのか、エドウィー王子から是非ともご説明頂きたい。」
兄さんが静かに怒っていることが、言葉の節々から伝わってくる。
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