騎士とお嬢様。

奏 -sou-

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第二章

05

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確かに殺気を感じたけど、辺りを見回してもそんな視線を送っているような人物が見当たらない。

『もしかしたら、私の勘違いなのかもしれないわ。でも、何かあってからでは遅いものね。…周りの目は嫌だけど中に戻りましょう。』

そうと決まれば、

「エドウィー王子、肌寒くなってきましたわ。中へ入ってお喋り致しませんか?」

そう言って、エドウィー王子の右手を両手で包み、テラスの出入口の方へ誘導するかのように歩み始める。


「…サフィ」

風が囁くかのような音でここ数日聴くことが無かったたった1人だけが呼ぶ私の呼名を耳にする。

「騎士…?」
「騎士?」

私の顔を軽く覗きこみながら、エドウィー王子はオウム返しするように騎士の名を声に出して問う。

「えぇ、声が…」

声が聞こえた方に顔を向ければ、先程までエドウィー王子といた場所に屋内から漏れる明かりと星空の明かりで旅の友であり剣術の師である騎士がそこに立ってこちらを見ていた。

『テラスへの出入口で開いているのは、先程私達が入ってきたドアだけのはず、どうして私達がいた反対側では無くて居た場所に騎士がいるの?』少し奇妙な気持を抱きはするが、『騎士だものね、気配消せて当然よね』と気持を切替える。

「騎士、よね?…どこに行っていたの?」

エドウィー王子から手を離して、少し近寄れば

「あぁ、俺だ。サフィ」

そう言って向こうからもゆっくり一歩、一歩、歩み寄って来てくれたので、しっかりと顔を確認することが出来る距離まで近づいた。

「まぁ!今日はスーツを着ているのね!」
「サフィの誕生日だからな。」

いつもの騎士の格好と違うことや、久々に会えて嬉しい気持で話していれば

「サファリーアさん」

後ろからエドウィー王子に声をかけられる。

「あぁ、ごめんなさい。…エドウィー王子紹介するわ。」

歩み寄ってきたエドウィー王子に、目の前の騎士を片手で指して

「彼は私の剣術の師匠であり、兄の様な存在でもある騎士ユーグスよ。」

その手をそのままエドウィー王子の方に指し替えて

「そして騎士、紹介するわね!こちらのお方は私の婚約者の三国向こうの王子エドウィー王子よ。」

微妙な距離で間に挟まれながら二人に相手の紹介をする。

少しの間、静寂な時が流れる。

「二人ともどうしたの?」

「あぁ、サフィの婚約者が他の女の尻を追うような男では無いか見定めていた。」

他国の次期王様になる御方になんてことを言うの
ひとつ間違えば処刑されてもおかしくないのよ。
すぐに撤回させないとどうなるか分からない。

「騎士ったら、もう!何を言っているの?エドウィー王子に失礼だわ!謝って!!」

私の焦りをよそに、にこやかな笑みで
「サファリーアさん、気にもしていませんよ。それで、見定めた結果どうでしたか?」
エドウィー王子は騎士へ問いかける。

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