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第二章
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しおりを挟む「サファリーアさん、私の顔に何かついていますか?」
エドウィー王子にニッコリとした表情を崩さずにジッと見てしまったことを指摘され、少しの恥ずかしさに無言のまま目を逸らしてしまう。
「はははっ!すまないね、娘は照れているみたいだ。…サファリーア、エドウィー王子、今日初めて会ったということもあるからお互いを知る為にも若い者二人で少し話してきてはどうかね?」
にこやかに提案するかのように言うけれど、私をみるお父様の瞳は断ることを許さないと言っているようで、『そんな目で見ずしとも逃げやしないわよ。』と目で訴え返す。
「そうですね。挙式の話もしなくてはなりませんからね。さぁ、サファリーアさん少し外に出て夜空でも見ながら話しましょう。」
『もう、挙式の話をするの??』なんて驚いて声が出そうになったが、何とか口を閉じて頷く。
「では、あちらへ」
エドウィー王子に慣れた手つきで腰を抱かれて、目的のテラスまで案内される。
騎士がことある事に私の腰に手を回していたことが懐かしくなるし、『やはり騎士とは違うのね。』と無意識にエドウィー王子と騎士を比べてしまう。
テラスに出れば、夜風が心地よくて中とは違って静かで息がしやすくなり大きく息を吸ってはく
「夜風が気持ちいいですね。サファリーアさんは自然が好きですか?」
そう言えば、エドウィー王子とでてきたんだったと、存在を一瞬忘れていた事が伝わらないように装いながら、ぎこちなく「えぇ」と貼り付け笑みを見せる。
「ふっ、はははっ、僕をお忘れですか?」
今までの不敵な笑みとは違い、自然と出る笑みを向けられて『そんな笑い方もできるお方なのね。』とドキっとしてしまう。また装いがバレていた事にも恥ずかしくなってしまい、自分でも顔がタコの様に真っ赤になって言ってることが分かり頬を両手で隠しながらそっぽを向く。
「なんて可愛いおひとなんだ。」
終始優しい笑い声が聞こえてくるが、馬鹿にしているわけじゃなさそうなのは雰囲気で伝わってくる。
何か返事をしなくてはと動きだすタイミングよりも背を向けていた私を包み込む様に抱きしめてくるエドウィー王子の行動の方が早くて、私の頭の中はパンクしかけ。
「エ、エドウィー…王子?」
か細く、どもりながらも意図が分からず名を呼んでみる。
「サファリーアさん、これから僕達は夫婦になります。会ってまだ間もないのに、…僕の心臓の音が聞こえますか?」
こちらに向くように肩に手を置き、優しく誘導される。体ごと振り向けば、右手首を手に取り自らの心臓がある位置へ私の手をそっと持っていかれる。
ドクンドクン、ドクン
心臓が存在を主張するかのように、早さと音が聞こえる。
「…とても、はやいわ。」
「えぇ、柄にもなく緊張しています。」
「何故?」
「正直、親が勝手に決めた婚約ではありますが他にお互い相手がいるのであれば、上手くやり過ごしていけるルールを決める話が結婚式前に出来ればいいかと言う気持ちで来ましたが…一目見て、胸の高鳴りが抑えれません。」
エドウィー王子の熱い眼差しに吸い込まれるように見つめてしまい瞳に吸い込まれるかのように鼻と鼻が触れ合う手前で、そんな空気を壊すかのような殺気を何処からともなく感じ周りを見渡す。
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