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第一章
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しおりを挟む「昨日と同じお店?」
「いや、またあの店より少し離れているが、焼きたてのパンが美味しいそうだ。」
「そう。」
道も分からないので黙って騎士の横をついて歩く。昨日と打って変わってことり達の囀りや、晴れ晴れと清々しい晴天に見舞われて胸いっぱいに深呼吸をする。
お店についたようで、騎士に手を差し出されて重ね
エスコートされながら中へ入る。
「いらっしゃい」
ふくよかな体型のいかにも優し気な雰囲気を醸し出している女性の明るい声に、なんて素敵なのかしら!とニコニコしながら私も挨拶をする。
「おはようございます!」
「あら、元気がいいわね!おはよう」
軽く座れる場所が数席あって、二人席に向き合って座りながら店内を見渡せば、お水を持った女性がニコニコしながら
「旅人さんかしら?」
「えぇ、もう終わりそうなの」
「あら、旅はどうだった?」
「大変なことが多かったけど、とても勉強になったわ!」
「おやおや、勉強になっただなんて賢いのね。」
「そんなことないわ、何も出来なかった私に知恵を彼がくれたの!」
そう言って、騎士の手を取り女性へ主張すれば
「そうかい。素敵な恋人だねぇ。」
感心したように言われて、これも稀にあることなので久々に聞いた言葉で少し驚いたけど、ちゃんと訂正をする。
「素敵でしょ!でもハズレよ、恋人じゃないもの!」
ニコニコと返事を返せば、私と騎士を交互にみて
「あら、そうなの?お似合いだからそうかと思っちゃったわ。ふふ、まだ片思いなのね。…食べたいものが決まったら教えて頂戴ね。」
去っていった女性に『私が騎士に片思いしているように見えたのかしら、まぁ、いいわ。よくあることだもの。』とモーニングメニューに目を通す。
「何がいい」
「そうね、私はコーンスープとエピでいいわ。」
「頼もう。」
女性を呼んで、注文を騎士がしてくれた。
朝から暖かいスープを飲んで、パンも美味しくてお腹いっぱいになり、お会計をしてもらう。
「おばさん、美味しかったわ!ごちそうさま。」
「ふふ、そう言って貰えて嬉しいよ!ねぇ、アンタ!」
奥でパンを捏ねてる旦那さんに声をかけて、その声に顔をこちらに向ける旦那さんも奥さんと同様優しい微笑みでこちらを見ていた。
出会って少し会話をしただけだけど、素敵な夫婦だと思ったし、私も未来の旦那様とはこんな関係がいいなーって夢が膨らむ。
「また、おいで」
「えぇ、ぜひ!!また落ち着いたらおばさん達に会いに来るわ!」
ニコニコと手を振ってサヨナラをする。
城からも数時間で来れる距離だし、落ち着いたら1人でも来れそうね。と道の目印になるものを探しながら、城への道を進む。
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