始まりと終わりは君

奏 -sou-

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1869年8月22日

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1869年8月22日

波が荒れて雲は灰色のどんよりした雨模様。

母に連れられて帰った家は
風通しがいいほどに冷えた空気が漂っていた。

彼女で頭がいっぱいだった僕は、久々の家がこんなにも温かみのない家だったと忘れてしまうほどに彼女へと意識がいっていたんだと思うと、そんな自分に少し何とも言えない“クスッリ”と鼻を抜けるような笑いが出た。


大切にしていた彼からもらった釣竿。

あれは、海の底に沈んでしまったのだろうか。

当時10歳だった僕の誕生日に父に買ってもらった電動のモーターが付いているだけの簡単な小さな船はひっくり返ったままなのだろうか、

それとも海に沈んだのだろうか
あるいは誰かが回収してくれているのだろうか。

思うことはあるが確かめる言葉すら僕を思いやって傍にいてくれる母の前では口にすることはできなかった。

今日の空は僕の心を表しているかのようで
彼女への思いがまた一つ募った。

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