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その後
友達ができました。
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そうね…思い返してみたけど
今回もろくな人生を歩めていない気がするわ。
純粋な眼で見つめてくるカリストさんに、ウッと喉でつまりかけながらも口角を上げて、目を細め不自然にはならないような笑みをつくりながら言葉を選ぶ
「そうですね、私は読書が好きで沢山本を読んでました。また好奇心が旺盛で色んなもの事に興味を抱きますが人見知りでしたので、友達ができず悩んだものです。」
少し困り眉で『これ以上聞かないでちょうだい』と言う念も込めつつ、小さく微笑んでみせれば
「っっ、俺が友達になります!」
カリストの意気込んだ
声の大きさに驚き一瞬肩が揺れる。
その一瞬は短いようで長く
言葉を繋ぐのが苦手な彼なりの一生懸命な私への想いに『きっと心の優しい人だから同情してくれたのね。』それでもいい、その気持ちにお礼を言う
「ふふふ、嬉しいわ。ありがとう」
お礼を聞いたカリストは何故だか望んでいた答えでは無かったようで、ズンという効果音をつけれそうな程頭を下げ項垂れる。
「大丈…」
心配になり『大丈夫?』と声をかけようと触れていたカップから離した右手を彼の肩にそーっと伸ばしかけていれば、顔をバッと上げるので二度目の小さな驚きに伸ばしかけた手を元に戻そうと引っ込めるはずが、
「カリストさん?」
「ベルさん、俺は本気です。」
彼のゴツゴツ、ザラザラした大きな手に包まれて引っ込めることは不可能になった。
恋人になる訳じゃないのに、なんだかとても気まずい気持ちになって、この感情を落ち着かせたいと彼に向けていた視線の先をテーブルの上に移せば、すっかり冷めてしまった紅茶が残りわずかだったおかげで溢れない程度にカップの中で揺れる。
転生前の私ならきっと彼からわずかに伝わってくる手の震えや、話の脈略がイマイチズレてるところにきっと冷めた目で、もしくは呆れた目で見て相手にもしなかったのだろう。
だけど今の私にはそんな感情は一切なく、友達になりたいと直球で伝えてくる彼の言葉以上の感じる思いに諦めていた心が、何処からか落ちてきた一滴の雫に触れて流れ染み込んでいくようだ。
この言葉を当時の私はずっと待っていたのかもしれない。
少し目頭が熱くなりながらも、顔を上げて偽りのない微笑みで
「ふふ、ありがとう、カリストさん。では改めてよろしくね。」
気持ちを伝える。
「…よろしく」
声だけ聞けば『さっきまでの勢いは何処にいったの?』と聞きたくなるような、でも顔を見てるからこそ分かるの、私の手を握ったまま少し視線を斜め下にしてる彼の耳が真っ赤できっと顔も真っ赤なんじゃないかって。
そしてそんな彼を見て。自分でもわかるくらいに顔が熱くなってることに気づき、目の前の彼同様真っ赤にきっとなっていること。
友達になるって、こんなにくすぐったいのね。
そして、なんだか今までに味わったことのない感情に襲われて表現しきれない。きっと、今までに見せたことのない顔をしてるに違いないわ。
今までも彼とお話をしていたはずなのに
なぜだかすぐに言葉が出ない。
お互いに沈黙の時が過ぎる。
時計など身につけてないから、何時かなんて正確には分からないけど、確実にいつもより長居をしてしまったのはなんとなく感じたので、この嬉しい気持ちを消化しきれないまま、コホンと声が裏返らないように空咳をしてからカトリスさんに
「今日は長居をしてしまったわ。また明後日配達に来るわね」
その声に、ハッと顔を上げて私を見る
「あぁ、明後日、た、楽しみにしてる」
いつも敬語を使うようにしてくれてた彼の口からタメ口を聞くのはなんとも不自然でいて新鮮に感じる。
「ふふ、なんだかくすぐったい気持ちでいっぱいよ」
「ああ、俺も」
「くすくす、うそれじゃ、お茶ご馳走様でした。またね」
そう言って左手を右手の上から握りしめてきている彼の手に重ねて、まるで石のように固まっていた指を解いて、両手で包みテーブルの上にそっと乗せて微笑みながらゆっくり立つ
「あ・・ああ、また」
私に合わせてゆっくり立ち上がりながら、なんだかいいたそうな雰囲気でみてくるが、これ以上はお互いに仕事途中だし、色んな方々に迷惑をおかけしてしまうわ。と待たせておいたフリオの元へと向かう。
忘れ物をしてないか確認してからフリオに乗る、一呼吸置いて振り返り、見送りに来てくれたカトリスに軽く手を振ってきた道を戻る。
私の勘違いでなければ友達以上の気持ちをカトリスからは感じるけど、…それには答えれない。
きっと血眼で私を探す家族の存在がとても大きな壁となって目の前に現れると思うと、この国で愛すべき人を作ることは厳しいと現実に引き戻される
今度こそは誰にも邪魔されずに幸せな人生を歩むためよ
そう自分に言い聞かせながらも、初めてできた友達に緩んだ頬を1度は引き締めたもののやはり表情に出てしまう。
正直、カトリスに明後日には会える楽しみができて一体どんなことを喋ろうか。と考え無いようにしても考えてしまう。
「ベルちゃん、今日は一段と元気がいいねー何か嬉しいことでもあったのかい??」
とこの常連客のおじさん以外にも色んな人に聞かれて
「友達ができたの!」
その度に、そう答える。
「そりゃよかったな!!」
ガハハと自分のことのように喜んでくれる人達
本当の事だし、たまには自分のご褒美に幸せな気持ちに浸ってもいいわよね。
一瞬、嫌な過去を思い出してしまったけどそれが薄れるくらいに幸せな気持ちも味わった
そんな1日も夜の静けさと共に過ぎてゆく
今回もろくな人生を歩めていない気がするわ。
純粋な眼で見つめてくるカリストさんに、ウッと喉でつまりかけながらも口角を上げて、目を細め不自然にはならないような笑みをつくりながら言葉を選ぶ
「そうですね、私は読書が好きで沢山本を読んでました。また好奇心が旺盛で色んなもの事に興味を抱きますが人見知りでしたので、友達ができず悩んだものです。」
少し困り眉で『これ以上聞かないでちょうだい』と言う念も込めつつ、小さく微笑んでみせれば
「っっ、俺が友達になります!」
カリストの意気込んだ
声の大きさに驚き一瞬肩が揺れる。
その一瞬は短いようで長く
言葉を繋ぐのが苦手な彼なりの一生懸命な私への想いに『きっと心の優しい人だから同情してくれたのね。』それでもいい、その気持ちにお礼を言う
「ふふふ、嬉しいわ。ありがとう」
お礼を聞いたカリストは何故だか望んでいた答えでは無かったようで、ズンという効果音をつけれそうな程頭を下げ項垂れる。
「大丈…」
心配になり『大丈夫?』と声をかけようと触れていたカップから離した右手を彼の肩にそーっと伸ばしかけていれば、顔をバッと上げるので二度目の小さな驚きに伸ばしかけた手を元に戻そうと引っ込めるはずが、
「カリストさん?」
「ベルさん、俺は本気です。」
彼のゴツゴツ、ザラザラした大きな手に包まれて引っ込めることは不可能になった。
恋人になる訳じゃないのに、なんだかとても気まずい気持ちになって、この感情を落ち着かせたいと彼に向けていた視線の先をテーブルの上に移せば、すっかり冷めてしまった紅茶が残りわずかだったおかげで溢れない程度にカップの中で揺れる。
転生前の私ならきっと彼からわずかに伝わってくる手の震えや、話の脈略がイマイチズレてるところにきっと冷めた目で、もしくは呆れた目で見て相手にもしなかったのだろう。
だけど今の私にはそんな感情は一切なく、友達になりたいと直球で伝えてくる彼の言葉以上の感じる思いに諦めていた心が、何処からか落ちてきた一滴の雫に触れて流れ染み込んでいくようだ。
この言葉を当時の私はずっと待っていたのかもしれない。
少し目頭が熱くなりながらも、顔を上げて偽りのない微笑みで
「ふふ、ありがとう、カリストさん。では改めてよろしくね。」
気持ちを伝える。
「…よろしく」
声だけ聞けば『さっきまでの勢いは何処にいったの?』と聞きたくなるような、でも顔を見てるからこそ分かるの、私の手を握ったまま少し視線を斜め下にしてる彼の耳が真っ赤できっと顔も真っ赤なんじゃないかって。
そしてそんな彼を見て。自分でもわかるくらいに顔が熱くなってることに気づき、目の前の彼同様真っ赤にきっとなっていること。
友達になるって、こんなにくすぐったいのね。
そして、なんだか今までに味わったことのない感情に襲われて表現しきれない。きっと、今までに見せたことのない顔をしてるに違いないわ。
今までも彼とお話をしていたはずなのに
なぜだかすぐに言葉が出ない。
お互いに沈黙の時が過ぎる。
時計など身につけてないから、何時かなんて正確には分からないけど、確実にいつもより長居をしてしまったのはなんとなく感じたので、この嬉しい気持ちを消化しきれないまま、コホンと声が裏返らないように空咳をしてからカトリスさんに
「今日は長居をしてしまったわ。また明後日配達に来るわね」
その声に、ハッと顔を上げて私を見る
「あぁ、明後日、た、楽しみにしてる」
いつも敬語を使うようにしてくれてた彼の口からタメ口を聞くのはなんとも不自然でいて新鮮に感じる。
「ふふ、なんだかくすぐったい気持ちでいっぱいよ」
「ああ、俺も」
「くすくす、うそれじゃ、お茶ご馳走様でした。またね」
そう言って左手を右手の上から握りしめてきている彼の手に重ねて、まるで石のように固まっていた指を解いて、両手で包みテーブルの上にそっと乗せて微笑みながらゆっくり立つ
「あ・・ああ、また」
私に合わせてゆっくり立ち上がりながら、なんだかいいたそうな雰囲気でみてくるが、これ以上はお互いに仕事途中だし、色んな方々に迷惑をおかけしてしまうわ。と待たせておいたフリオの元へと向かう。
忘れ物をしてないか確認してからフリオに乗る、一呼吸置いて振り返り、見送りに来てくれたカトリスに軽く手を振ってきた道を戻る。
私の勘違いでなければ友達以上の気持ちをカトリスからは感じるけど、…それには答えれない。
きっと血眼で私を探す家族の存在がとても大きな壁となって目の前に現れると思うと、この国で愛すべき人を作ることは厳しいと現実に引き戻される
今度こそは誰にも邪魔されずに幸せな人生を歩むためよ
そう自分に言い聞かせながらも、初めてできた友達に緩んだ頬を1度は引き締めたもののやはり表情に出てしまう。
正直、カトリスに明後日には会える楽しみができて一体どんなことを喋ろうか。と考え無いようにしても考えてしまう。
「ベルちゃん、今日は一段と元気がいいねー何か嬉しいことでもあったのかい??」
とこの常連客のおじさん以外にも色んな人に聞かれて
「友達ができたの!」
その度に、そう答える。
「そりゃよかったな!!」
ガハハと自分のことのように喜んでくれる人達
本当の事だし、たまには自分のご褒美に幸せな気持ちに浸ってもいいわよね。
一瞬、嫌な過去を思い出してしまったけどそれが薄れるくらいに幸せな気持ちも味わった
そんな1日も夜の静けさと共に過ぎてゆく
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