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第六章 創生
僕が愛した人***
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「もっと脚を開いて」
言われた通りに脚を開きながら、僕は自身の姿に羞恥を覚えていた。
リディアンの前にすべてを晒している。
きっと硬く勃ち上がるモノも、その奥がひくつく様子も丸見えだ。
灯りが絞ってあっても、リディアンにははっきり見えていそうで、膝を閉じてしまいたくなる。
でも、開いていないときっと触ってはもらえない。
僕はいつから、こんなはしたないことを考えるようになったんだろう。
リディアンはベッドヘッドの棚から、小瓶を手に取った。
蓋をポンと抜いて、中のとろりとした液体を手のひらに垂らす。
温めるように手を重ねて動かした後、僕の後ろに触れてくる。
穴に塗り込め、広げてから、指先を挿入してきた。
閉じそうになった膝に手を置いて開き、奥を見るようにして指を深々と埋める。
「もうひくついているね」
「……っ言わ、ないで……ください」
リディアンを求めているのがバレて、僕は我知らず眉根を寄せて訴えた。
「嬉しいんだ。俺を待ち望んでくれているって、わかったからな」
くちゅくちゅと濡れた音を立てながら、中を弄って緩め、僕はその手を止めた。
「十分、だから──」
これ以上されたら、リディアンが挿入する前にイってしまう。
言葉にしなくても続きがわかったのか、リディアンは指を抜いた。
そして、ベッドに横たわる僕の腕を引いて身を起こさせる。リディアンと上下を入れ替え、僕は促された通りに、リディアンの身体を跨ぐ形になった。
眼前にすべてを晒すのが恥ずかしいけれど、リディアンが望むのなら叶えたい。
「俺のものをあてがって、ゆっくり腰を落とすんだ」
まさかそこまで要求されるとは思わず、僕はたじろいだ。
リディアンの身体を跨ぐのだって躊躇ったのに、自分で入れるなんて、そんなことできそうにない。
第一、やり方がわからない。
でも、リディアンは僕がやると信じて疑わないようで、見上げたまま待っている。
僕は、その視線に灼かれる心地がし、腰を浮かせた状態でリディアンのモノを掴む。そして、もぞりと身体を動かして、自分の後ろに押し当てる。熱い質量を肌で感じ、身体がピクリとぎこちなく揺れた。
「いやらしい眺めだ」
リディアンに指摘されて、カッと顔が熱くなる。今の僕は、下穿きは脱いでいるけれど、ガーターと白い靴下はそのままだ。裸でいるよりも、余計に恥ずかしい。
考えないようにしよう。心を落ち着けなくては。
意識すればするほど、身体が戦慄いた。
でも、ここで止まっているわけにはいかない。
僕は顔を俯けてリディアンを見ないようにし、挿入することに集中した。
少し脚を開き、片手をベッドに突いてバランスを取りながら、腰を落としていく。先端が入り込み、いつも以上に大きく感じて僕は息を呑んだ。先端で窄まりを押し開き、中に入っていく熱に狼狽える。まだ少ししか進んでいないのに、突いていた手がガクガクと震えた。
「いいよ、その調子だ」
リディアンは俯く僕の顎を捉えて、下から顔を覗き込んでくる。
僕は目を合わせないようにして、息を吐きながら腰を沈めていき、リディアンを中に受け入れる。一番張ったカリを挿入し終えてホッとして一度止めて、そこからまたじわじわと奥を目指して埋めていく。
「はっ……あぅ……っ」
リディアンのモノは、こんなに長かったのか。
中程まで進んだところで、突然声が出てしまう。
慌てて口を閉ざしたけれど、身体の反応は止められない。
快感に自身のモノが完全に勃ち上がり、息が荒くなる。
「あ……っ」
より一層高い声が漏れてしまい、僕は唇を噛む。
「そこが、タカトの感じるところだ。腰を使って、当ててみるといい」
僕は首を振り、腰を浮かせた。
これ以上の快感なんて、受け止めきれない。
すると、リディアンは僕の腰骨を掴んで、ひき下ろしていく。
「いや……っだ……リディ、やめて……っああ……っふ……く……っ」
「大丈夫。逃げなくていい。中にいる俺を感じて」
そう言われても、いきなり快感に襲われて、身体と心がついていかない。
口を開けば変な声しか出なくて、僕は口を引き結んで首を振った。
「可愛いな、お前は」
リディアンは、僕の腰骨を掴んだまま、自身で腰を突き上げてきた。
奥深くまで侵入してきたモノに身体が跳ねて、膝が震え出す。
「もっと脚を開いて。タカトをよく見せてほしい」
「……っ」
この上、咥えこんでいるところを見られるなんて恥ずかしすぎる。
でも、リディアンはまじまじと、出入りする自身を見つめながら腰を動かしている。
「駄目……それ……っおかしくなる、から」
どうにかなってしまいそうで口走ると、リディアンは僕の手と手を組み合わせた。
「自分で動いてみて。俺が動くより、そっちの方がいいだろう?」
そう促されて、僕はリディアンの手に支えられながら、ゆったりと腰を前後に動かした。
「上手だ。そのまま続けて」
ビクビクと何度も身体を跳ねさせながら、僕は言われた通りに腰を振った。
時折、感じ過ぎて動きを止めると、リディアンが突き上げてくる。
自分で動けば変なところに当たってしまうし、動きを止めればリディアンが容赦なく突いてくる。どちらにしても感じるこの状況に、おかしくなってしまいそうだ。
「あ……っああ……くっ……んん」
動く度に自分のモノが揺れ、それをリディアンの目の前に晒しているのが居た堪れない。
それなのに、中はリディアンをきゅうきゅうと締め付けて、ひくついている。
「良さそうだね。もっと動いていい」
最初はできないと思っていたのに、僕はだんだんと快感を追うようになり、上下に動き出した。
「あっ……あ……っは……ああ……っ」
動く度に声が漏れてしまうけれど、もう止められなかった。
リディアンと組んだ指に力を込めて、僕は好きなように動き出す。
出入りするモノが気持ち良くて、その様をリディアンに見られていることが恥ずかしくて余計に昂る。僕はこんないやらしい人間だったのかと、自分でも驚いてしまう。
「タカト」
リディアンは、愛しげに僕を見て名前を呼び、僕はキスがしたくて身体を前に倒した。リディアンに覆いかぶさりながらキスをねだり、唇を重ねて舌を触れ合わせる。背中に腕が回って抱き寄せられて、僕は重なってキスを続けた。
「んん……っんく……は……っんん」
リディアンは、僕を抱き締めたまま、腰を突き上げてくる。ぴったりと胸を合わせて身体を沿わせ、僕はリディアンの上で揺れる。そのうち、快感で動けなくなり、身体から力が抜けていった。
リディアンは、身体を繋げた状態で起き上がり、僕と向かい合う形で座った。
キスを続けながら、互いに動き、快感を高め合う。
やがておもむろに二人の間で揺れる僕のモノを掴み、リディアンは扱き出した。
「ん……っあ……気持ち、いい……は……っ」
キスの合間に快感を伝え、リディアンの肩に手を置いて僕も身体を揺する。
自分から動くようになるなんて、考えもしなかったのに。
今は、二人で気持ち良くなるためなら、何でもしたいと思うようになっている。
「タカト……愛している」
リディアンに言われて、僕は縋って涙を堪え、何度も頷いた。
今、口を開いたら、声を上げて泣いてしまいそうだ。
リディアンは、身体の向きを変えて僕をベッドに仰向けにし、足首を掴んで肩に掛けた。
上から突き刺すほどに深々と穿ち、抉り、奥を突いて来る。
「あう……っあ……は……っああ」
ベッドがたわむほどに激しく抽送を繰り返し、終わりが近いのだと知る。
僕は、リディアンの腕に手を置いて、喉を反らして啼いた。
「イ、きたい……っ」
「ああ、俺も一緒に──っ」
ガクガクと足先まで身体が震え、僕は一際高い声を上げる。
リディアンは、形のいい眉を寄せ、いつになく余裕のない顔で激しく動く。
「ああっ……あ……っイ……くっ」
「く……う……っ」
僕が射精したのとほぼ同時にリディアンも達し、中に熱を感じた。
荒い息遣いを続けながら、唇を重ねて、何度も何度もキスを繰り返す。
「リディ、好き……だい、すき」
言葉では伝えきれない。
僕は、重なるリディアンの背中に腕を回し、抱き締めながら告げた。
「僕を、離さないで」
「もちろんだ」
ようやく、リディアンとひとつになった喜びを噛み締め、僕はその体温を感じていた。
頬やこめかみに押し当てられるキスや、肩を撫でる指先に、僕は身を委ねた。
「本当に、良かったんですか?」
行為のあと、リディアンが水差しで水を飲ませてくれてから、僕はずっと問いたかったことを聞いた。
「良かったって? どうしてそんなことを聞くんだ」
男の僕を妃に選んだこと。
みんなの前でプロポーズをしたこと。
言いたいことはいっぱいあったけれど、僕は単刀直入に言った。
「僕の他にも妃を選んでください。僕では子供が望めない」
こればかりは、僕にはどうしようもない。
僕と子供が作れない以上、子孫を残すためには、他に妃を取るしかない。
王族なら、それは義務に等しいはずだ。
でも、リディアンは思いも寄らないことを言い出した。
「子供が授かるかどうかは、わからないからな」
「わからない?」
わからないことはない。
だって、僕に授かるわけがないのだから。
リディアンは、僕を抱き寄せて続ける。
「1つには愛、1つには行為。そして最後に祈り。だが、どんなに祈っても卵が現れない時もある。揺らぎから逆算すると、お前との間に最初の卵が現れ得るのは、20日後くらいだろうか」
「僕との間に……?」
最初のフレーズは、耳に馴染んでいる。
揺らぎのやり方だろう。
でも、その後の話は要するに──。
僕は、問い掛けようとして唇が震えた。
「男同士でも、卵は生まれるんですか?」
「当たり前だ」
リディアンは、何を言っているんだと呆れたような口調で言う。
僕は、その一言を聞いた途端に愕然とした。
まさか、そんなことがあり得るのか?
「お前は、本当に子供がどうやってできるのか、わかっていなかったみたいだな」
「じゃあ、僕たちの間にも、生まれる可能性があるんですか?」
「もちろんだ。祈って、楽しみに待とう」
瞬きをした途端に、涙が零れ落ちた。
それは、一粒では収まらず、後から後から零れてしまう。
「タカト?」
「ごめん……なさい。僕は、何も知らなくて」
涙声で答えると、リディアンは僕の肩を撫でる。
「これから知っていけばいい。俺が教えてやる」
僕は頷いて、リディアンの胸に顔を埋めて泣いた。
「下手をしたら、婚姻の儀の前に卵が生まれる。それこそ、前代未聞だ」
リディアンの言葉に泣きながら笑い、僕が愛した人がこの人で良かったと感じた。
「大好きです、リディアン」
「俺もだ。タカト」
もう一度キスを交わし、また身体を重ねる。
全身で愛を実感しながら、リディアンと出会えた奇跡に心から感謝した。
言われた通りに脚を開きながら、僕は自身の姿に羞恥を覚えていた。
リディアンの前にすべてを晒している。
きっと硬く勃ち上がるモノも、その奥がひくつく様子も丸見えだ。
灯りが絞ってあっても、リディアンにははっきり見えていそうで、膝を閉じてしまいたくなる。
でも、開いていないときっと触ってはもらえない。
僕はいつから、こんなはしたないことを考えるようになったんだろう。
リディアンはベッドヘッドの棚から、小瓶を手に取った。
蓋をポンと抜いて、中のとろりとした液体を手のひらに垂らす。
温めるように手を重ねて動かした後、僕の後ろに触れてくる。
穴に塗り込め、広げてから、指先を挿入してきた。
閉じそうになった膝に手を置いて開き、奥を見るようにして指を深々と埋める。
「もうひくついているね」
「……っ言わ、ないで……ください」
リディアンを求めているのがバレて、僕は我知らず眉根を寄せて訴えた。
「嬉しいんだ。俺を待ち望んでくれているって、わかったからな」
くちゅくちゅと濡れた音を立てながら、中を弄って緩め、僕はその手を止めた。
「十分、だから──」
これ以上されたら、リディアンが挿入する前にイってしまう。
言葉にしなくても続きがわかったのか、リディアンは指を抜いた。
そして、ベッドに横たわる僕の腕を引いて身を起こさせる。リディアンと上下を入れ替え、僕は促された通りに、リディアンの身体を跨ぐ形になった。
眼前にすべてを晒すのが恥ずかしいけれど、リディアンが望むのなら叶えたい。
「俺のものをあてがって、ゆっくり腰を落とすんだ」
まさかそこまで要求されるとは思わず、僕はたじろいだ。
リディアンの身体を跨ぐのだって躊躇ったのに、自分で入れるなんて、そんなことできそうにない。
第一、やり方がわからない。
でも、リディアンは僕がやると信じて疑わないようで、見上げたまま待っている。
僕は、その視線に灼かれる心地がし、腰を浮かせた状態でリディアンのモノを掴む。そして、もぞりと身体を動かして、自分の後ろに押し当てる。熱い質量を肌で感じ、身体がピクリとぎこちなく揺れた。
「いやらしい眺めだ」
リディアンに指摘されて、カッと顔が熱くなる。今の僕は、下穿きは脱いでいるけれど、ガーターと白い靴下はそのままだ。裸でいるよりも、余計に恥ずかしい。
考えないようにしよう。心を落ち着けなくては。
意識すればするほど、身体が戦慄いた。
でも、ここで止まっているわけにはいかない。
僕は顔を俯けてリディアンを見ないようにし、挿入することに集中した。
少し脚を開き、片手をベッドに突いてバランスを取りながら、腰を落としていく。先端が入り込み、いつも以上に大きく感じて僕は息を呑んだ。先端で窄まりを押し開き、中に入っていく熱に狼狽える。まだ少ししか進んでいないのに、突いていた手がガクガクと震えた。
「いいよ、その調子だ」
リディアンは俯く僕の顎を捉えて、下から顔を覗き込んでくる。
僕は目を合わせないようにして、息を吐きながら腰を沈めていき、リディアンを中に受け入れる。一番張ったカリを挿入し終えてホッとして一度止めて、そこからまたじわじわと奥を目指して埋めていく。
「はっ……あぅ……っ」
リディアンのモノは、こんなに長かったのか。
中程まで進んだところで、突然声が出てしまう。
慌てて口を閉ざしたけれど、身体の反応は止められない。
快感に自身のモノが完全に勃ち上がり、息が荒くなる。
「あ……っ」
より一層高い声が漏れてしまい、僕は唇を噛む。
「そこが、タカトの感じるところだ。腰を使って、当ててみるといい」
僕は首を振り、腰を浮かせた。
これ以上の快感なんて、受け止めきれない。
すると、リディアンは僕の腰骨を掴んで、ひき下ろしていく。
「いや……っだ……リディ、やめて……っああ……っふ……く……っ」
「大丈夫。逃げなくていい。中にいる俺を感じて」
そう言われても、いきなり快感に襲われて、身体と心がついていかない。
口を開けば変な声しか出なくて、僕は口を引き結んで首を振った。
「可愛いな、お前は」
リディアンは、僕の腰骨を掴んだまま、自身で腰を突き上げてきた。
奥深くまで侵入してきたモノに身体が跳ねて、膝が震え出す。
「もっと脚を開いて。タカトをよく見せてほしい」
「……っ」
この上、咥えこんでいるところを見られるなんて恥ずかしすぎる。
でも、リディアンはまじまじと、出入りする自身を見つめながら腰を動かしている。
「駄目……それ……っおかしくなる、から」
どうにかなってしまいそうで口走ると、リディアンは僕の手と手を組み合わせた。
「自分で動いてみて。俺が動くより、そっちの方がいいだろう?」
そう促されて、僕はリディアンの手に支えられながら、ゆったりと腰を前後に動かした。
「上手だ。そのまま続けて」
ビクビクと何度も身体を跳ねさせながら、僕は言われた通りに腰を振った。
時折、感じ過ぎて動きを止めると、リディアンが突き上げてくる。
自分で動けば変なところに当たってしまうし、動きを止めればリディアンが容赦なく突いてくる。どちらにしても感じるこの状況に、おかしくなってしまいそうだ。
「あ……っああ……くっ……んん」
動く度に自分のモノが揺れ、それをリディアンの目の前に晒しているのが居た堪れない。
それなのに、中はリディアンをきゅうきゅうと締め付けて、ひくついている。
「良さそうだね。もっと動いていい」
最初はできないと思っていたのに、僕はだんだんと快感を追うようになり、上下に動き出した。
「あっ……あ……っは……ああ……っ」
動く度に声が漏れてしまうけれど、もう止められなかった。
リディアンと組んだ指に力を込めて、僕は好きなように動き出す。
出入りするモノが気持ち良くて、その様をリディアンに見られていることが恥ずかしくて余計に昂る。僕はこんないやらしい人間だったのかと、自分でも驚いてしまう。
「タカト」
リディアンは、愛しげに僕を見て名前を呼び、僕はキスがしたくて身体を前に倒した。リディアンに覆いかぶさりながらキスをねだり、唇を重ねて舌を触れ合わせる。背中に腕が回って抱き寄せられて、僕は重なってキスを続けた。
「んん……っんく……は……っんん」
リディアンは、僕を抱き締めたまま、腰を突き上げてくる。ぴったりと胸を合わせて身体を沿わせ、僕はリディアンの上で揺れる。そのうち、快感で動けなくなり、身体から力が抜けていった。
リディアンは、身体を繋げた状態で起き上がり、僕と向かい合う形で座った。
キスを続けながら、互いに動き、快感を高め合う。
やがておもむろに二人の間で揺れる僕のモノを掴み、リディアンは扱き出した。
「ん……っあ……気持ち、いい……は……っ」
キスの合間に快感を伝え、リディアンの肩に手を置いて僕も身体を揺する。
自分から動くようになるなんて、考えもしなかったのに。
今は、二人で気持ち良くなるためなら、何でもしたいと思うようになっている。
「タカト……愛している」
リディアンに言われて、僕は縋って涙を堪え、何度も頷いた。
今、口を開いたら、声を上げて泣いてしまいそうだ。
リディアンは、身体の向きを変えて僕をベッドに仰向けにし、足首を掴んで肩に掛けた。
上から突き刺すほどに深々と穿ち、抉り、奥を突いて来る。
「あう……っあ……は……っああ」
ベッドがたわむほどに激しく抽送を繰り返し、終わりが近いのだと知る。
僕は、リディアンの腕に手を置いて、喉を反らして啼いた。
「イ、きたい……っ」
「ああ、俺も一緒に──っ」
ガクガクと足先まで身体が震え、僕は一際高い声を上げる。
リディアンは、形のいい眉を寄せ、いつになく余裕のない顔で激しく動く。
「ああっ……あ……っイ……くっ」
「く……う……っ」
僕が射精したのとほぼ同時にリディアンも達し、中に熱を感じた。
荒い息遣いを続けながら、唇を重ねて、何度も何度もキスを繰り返す。
「リディ、好き……だい、すき」
言葉では伝えきれない。
僕は、重なるリディアンの背中に腕を回し、抱き締めながら告げた。
「僕を、離さないで」
「もちろんだ」
ようやく、リディアンとひとつになった喜びを噛み締め、僕はその体温を感じていた。
頬やこめかみに押し当てられるキスや、肩を撫でる指先に、僕は身を委ねた。
「本当に、良かったんですか?」
行為のあと、リディアンが水差しで水を飲ませてくれてから、僕はずっと問いたかったことを聞いた。
「良かったって? どうしてそんなことを聞くんだ」
男の僕を妃に選んだこと。
みんなの前でプロポーズをしたこと。
言いたいことはいっぱいあったけれど、僕は単刀直入に言った。
「僕の他にも妃を選んでください。僕では子供が望めない」
こればかりは、僕にはどうしようもない。
僕と子供が作れない以上、子孫を残すためには、他に妃を取るしかない。
王族なら、それは義務に等しいはずだ。
でも、リディアンは思いも寄らないことを言い出した。
「子供が授かるかどうかは、わからないからな」
「わからない?」
わからないことはない。
だって、僕に授かるわけがないのだから。
リディアンは、僕を抱き寄せて続ける。
「1つには愛、1つには行為。そして最後に祈り。だが、どんなに祈っても卵が現れない時もある。揺らぎから逆算すると、お前との間に最初の卵が現れ得るのは、20日後くらいだろうか」
「僕との間に……?」
最初のフレーズは、耳に馴染んでいる。
揺らぎのやり方だろう。
でも、その後の話は要するに──。
僕は、問い掛けようとして唇が震えた。
「男同士でも、卵は生まれるんですか?」
「当たり前だ」
リディアンは、何を言っているんだと呆れたような口調で言う。
僕は、その一言を聞いた途端に愕然とした。
まさか、そんなことがあり得るのか?
「お前は、本当に子供がどうやってできるのか、わかっていなかったみたいだな」
「じゃあ、僕たちの間にも、生まれる可能性があるんですか?」
「もちろんだ。祈って、楽しみに待とう」
瞬きをした途端に、涙が零れ落ちた。
それは、一粒では収まらず、後から後から零れてしまう。
「タカト?」
「ごめん……なさい。僕は、何も知らなくて」
涙声で答えると、リディアンは僕の肩を撫でる。
「これから知っていけばいい。俺が教えてやる」
僕は頷いて、リディアンの胸に顔を埋めて泣いた。
「下手をしたら、婚姻の儀の前に卵が生まれる。それこそ、前代未聞だ」
リディアンの言葉に泣きながら笑い、僕が愛した人がこの人で良かったと感じた。
「大好きです、リディアン」
「俺もだ。タカト」
もう一度キスを交わし、また身体を重ねる。
全身で愛を実感しながら、リディアンと出会えた奇跡に心から感謝した。
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