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第2話
痛みで現実を知る
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「さぁ、皆で一緒にいただきましょうか。手を合わせて、せーの。いただきます」
「いただきまーす!!」
「いただきまぁ~す」
「い、いただきます」
皆よりも一拍遅れていただきますと言ってお箸を持ったものの、目の前にある朝ごはんをつい眺めてしまう。丸いお盆の上に艶々のご飯、ワカメとお豆腐と油揚げの入ったお味噌汁、見るからに美味しそうな焼き鮭とその脇に猫の形をした大根おろし。大根おろしにはお醤油が少し垂らしてあって、三毛猫みたいになっている。小鉢にはほうれん草と千切りにした人参と白ごまがかかったもの、黄色いたくあんが入ったものがある。これはもう食べる前から分かる。絶対に美味しいやつだ。というか、神さまの世界でもご飯を食べる習慣があることに驚いている。
「こはるさん?苦手な食材でもありましたか?」
「そうなのー?キュウリ以外ならぼくが食べてあげるよー!」
「こはるちゃん、辛いやつじゃなければぼくも食べてあげるよぉ~」
「あ、その。私も酸っぱいもの以外でしたら」
ゆうと、ゆいとに続いて神さまが恥ずかしそうに言うものだから、わたしは思わずふはっと笑ってしまった。箸を持っていない方の手で自然とほんのり出てきた涙を拭いながら、違いますと言った。
「あまりにも美味しそうだったのですぐに手をつけるのがもったいなく感じてしまって、つい眺めてしまっただけです」
「それはそれは。見た目も含めての料理ですから、嬉しいお言葉をありがとうございます」
「冷めちゃう前に食べようよー!あったかいものはあったかいうちに食べたほうが美味しいんだよ!」
「うん、そうだね」
わたしはお味噌汁の器を持ちながら、頭の片隅に抱いたことがある。よくある話だ。異世界のものを口にしたら元の世界に帰れなくなる。あまりに美味しそうですぐに手をつけるのがもったいなく感じたのも嘘じゃない。だけど、ふとしゃぼん玉のように膨らんでしまった不安は弾けてはまたすぐにふわふわと浮かんでくる。そもそもわたしが生きているか死んでいるのかの話の答えを聞く前に眠りについてしまったからあるいは今、考えていることに意味はないのかも知れないけれど。お味噌汁を箸でくるくる掻き混ぜて、口元に器を持ってきたとき不安そうな声で名前を呼ばれた。
「お顔の色がわるいよぉ?急に気持ちわるくなっちゃった?痛いところあるの?」
「ゆいと」
わたしの右隣に座っていたゆいとがお味噌汁の器を手に持ちながらわたしを見上げていた。
「え、と」
どうしよう。言うべきか、言わないべきか。目の前がぐるぐるしてくる感覚に襲われ、口の中の唾液が溜まっていく。
「こはるさん。大丈夫ですよ」
神さまの声がスッと耳の中に入ってきた。何が、とは言わずに告げられたその言葉は、多分わたしと神さまにしかわからないだろう。心の中を見透かされたようで怖かった、でもそれ以上に安心した。神さまを信じきっていいのかはわからない。だけど、その言葉に不思議と嘘は感じなかった。神さまに目を向けるとお味噌汁を啜りながら、わたしを見ていた。ふーっ、ふーっと息を吹きかけてお味噌汁を啜った。
「あったかい」
こくりと飲み込んだそれは喉を通っていき、胸のあたりでじんわりと広がっていった。こわばっていた顔と体から、ふっと力が抜けていく。そこからはもう目の前にある食事に舌鼓を打ちながら食べ進めていき、お米の一粒も残さず完食した。
「ごちそうさまでしたっ」
手を合わせて口にした言葉は言葉尻に音符やキラキラマークが付いているように弾んでしまった。ゆうととゆいとにはお腹がすきすぎて顔色が悪くなったと勘違いされた。違う、と言ったところで理由を答えずらくて曖昧にあははっと笑って誤魔化した。食器を洗って片付けをする。神さまが洗い、わたしが拭き、ゆうととゆいとが片付けをするリレー方式だった。使っている洗剤はギュギュットのオレンジの香り、ちなみにハンドソープは押すとお花の形で泡が出てくるキレイにしますわを使っているみたいだ。どこからどう見ても見慣れた商品で目を見開いた。神さまの世界ってもしかして一般人参加型のドッキリなのでは...と思ったけど、階段から落ちた記憶があるのでそれはないか、と頭を振る。
「さて、こはるさん」
「ぅあはいっ!」
「朝風呂でもいかがですか?」
それはもうぜひ、入らせていただきたいです。ご飯を食べる前に洗面台で顔を洗い、歯も磨かせてもらったがお風呂にはまだ入っていなかった。無類のお風呂好き!というわけでもないが、神さまとかわいい男の子達の前で異臭を放ったままは嫌だ。
「よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いされます」
くすくすと神さまが笑い、ほんの少し恥ずかしさを感じた。口元に指をあてて笑うのが癖らしく、癖に対してお似合いという言葉が合っているのかわからないけどとてもお似合いだと思う。恋愛感情があるとかないとかは置いておいて、こんなに柔らかな雰囲気の美形さんの隣に立つことがないわたしはちいさなドキドキが止まらないのである。ゆうととゆいとは朝風呂だー!と二人で手を繋いできゃっきゃとはしゃいでいる。わたしと一緒に入るってことだろうか。うんうん、おっけー。
「それではこはるさん。山と海、それから空。どちらが良いでしょうか?」
それはもしかしてその場所に行くということでしょうか。朝風呂の為に温泉に行くとはさすが神さまというべきだろうか。規格外の発想に白目を剥きそうになる。いやいや、もしかしたら入浴剤のことかもしれない。空の香りの入浴剤は聞いたことがないけど、なんせここは神さまの世界。あるかもしれない。きっと入浴剤!きっとそう!
「えっと、候補になかったのですが森の選択肢はありますか?」
そういえば山の香りも聞いたことがあまりない。草木が生えているし、似たようなものだと思う。山の香りは森の香りであって森の香りは山の香りでもある。異論は認めます。
「ああ、森ですね。ふふっ、いいですね。それでは、森にしましょうか。私は電話をしてきます。少しお待ちください。悠刀と結刀はお風呂セットを用意してもらってもいいでしょうか?」
「がってんしょーちです!」
「がってんしょ~ちですぅ!」
ビシッと敬礼ポーズをした後にパタパタと駆けていく二人を見送って、取り残されたわたしはなんとなしに神さまの方を向いた。ご飯の習慣があるのも驚いたけど、電話の方が驚きかもしれない。なんとなく神さまならテレパシー的なものが使えるような気がしていたからだ。というか、電波はあるのかな。
「あの、電話をするのであればお邪魔になると思うので離れていましょうか?」
この邪魔になる、というのはわたしが何かちょっかいをかけるという意味ではなくて単に人が隣にいるとお話ししづらいのではないかという配慮だったりする。電話の時にどうしても声が上擦ってしまいがちだったり、お母さんの声が1オクターブ上がってしまうような、普段の話し声とは違う声が出てしまうのを恥ずかしく思わないだろうか、というアレである。神さまは特に気にするタイプでもないのか、大丈夫ですよと言いながら人差し指でほのかにオレンジ色の光を帯びた線を空中にするりと丸を描いた。丸の終着点で光が一際大きくなったかと思うとそこに現れたのは黒電話だった。空中浮遊の黒電話。ファンタステック。思わず目をぱちくりさせてしまった。
「えっと、コンセントってこの家にあるんでしょうか」
果たしてこの質問はあっているのか、と口には出さずに心の中で自己ツッコミをする。わたしの心中を知ってか知らずか、神さまはにっこり笑う。
「この家にコンセントはないですね。でも大丈夫ですよ。コンセントはいらないですから」
「あ、そうなんですね?」
神さまは、えーと確か森のお風呂案内の番号は…と呟きながらダイヤルをくるくると回していき受話器をとった。すると3秒もしないうちに電話が繋がったようで、ちいさな声であっと声を上げた。
「おはようございます。はい、ええ。あ、いえ。今日は3人ではなく4人でお願いします。そうですねぇ、今日は晴れていますから。はい、よろしくお願いします。では、失礼します」
チンッと音を立てて受話器を置くと黒電話がキュルキュルと渦を巻いて中心で消えていった。ほへぇーと謎の感嘆を漏らしているとちょうどそこにゆうととゆいとが2つずつ袋を手に持って戻ってきた。1つの袋はそれほど重さがないと思うけど、まだ見た目からして幼いこの子達には重いだろう。持とうか?と声を掛けると、ううん!と元気な声が同時に返ってきた。しまった。ここはあえて聞かずにスマートに二人の手から荷物を手に取った方が良かっただろうか。
「あー!こはるちゃんもしかしてぼくたちが重いと思って持とうか?って言ってくれたの?」
「う、うん」
そうなんだけど、あえて口に出されると恥ずかしくなる。ニッコニコの笑顔でこちらを見つめてくる二人の顔を見ていられなくて目を逸らした先に神さまの顔があり、神さまにも微笑まれてしまった。なんてことない行動なのに、そんなに嬉しそうな顔をしないでください。火照るほっぺたに指の背中をそっとあてて、ふぅーっと息を吐いた。
「あのね、あのねぇ!ぼくと悠刀はとっても力持ちなんだよ~!だからだいじょうぶ!」
「うんうん!こはるちゃんもお姫抱っこできるぐらい力持ちなんだから!」
「悠刀。それはあまり好ましい言葉ではありませんよ」
「は、ははっ」
神さまの嗜めの言葉さえ心にグサグサと突き刺さる。少女漫画や乙女ゲームの主人公みたいに標準体重より軽ければ良かったけど、そこそこいい体型のわたしは苦笑いしかできない。それでも小さなこの子達が大人の女を抱えられるほどの力持ちだということはわかった。もう少し体重が軽ければダメージを喰らわずにそっかー!すごいね!ですますことができたのに。というか、神さまの言葉がトドメを刺してきた気がする。好ましい言葉の体型じゃなく、気を遣わせてすみませんでした。
「ところでこはるさんは高いところは苦手ですか?」
「高いところですか?いえ、特に苦手ではありません」
ジェットコースターみたいに高速移動は苦手だけど、高いところという括りでいえば苦手というわけでなかった。
「では、景色を見ながら行きましょうか」
「うええぇっ?!」
「レッツゴー!!」
「ご~!!」
ひょいっと体を持ち上げられたかと思うと目を開けていられないほどの強風が吹いて、次に目を開けた時には空の上にいた。神さまの肩越しに見える景色は神社だけが見慣れたもので、建物や空の色もわたしの記憶にあるものとは違っていた。建物は平家ばかりで昔の時代にタイムスリップしたような感じだ。空の色はどこまでも澄んだ青空でキラキラした光の粒が耐え間なく降り注いでいる。
「きれい…」
「この光は人々の願いが叶った時に現れる光で、昼夜を問わず降り注いでいますね」
「願いが…」
願いがあるということは生きている間にやりたいことがあったり、生きる意思があるということだと思う。そして願ったことが叶った人がこんなにたくさんいる。すごいな、という思いと羨ましいという感情も同時に生まれる。妬んでも何も生まれないことはわかっているのに、胸の内側でふつふつと生まれてしまう感情に上下の歯で頬の内側をギリッと噛んだ。努力すれば叶うものと、努力のしようがないものがあると言ったら非難されるだろうか。頭の回転の悪さ、手先の不器用さ、果たしてこれは改善できるものに含まれるのだろうか。夏にしては心地の良い体感温度だけど、わたしの顔色が悪くなってくるのを自身でも感じる。でもこれは精神的なものではなく、身体的なものだ。
「うっ、すみません。吐き気が…」
「え!!もうっ!!神さまがお姫様抱っこしないからこはるちゃん気持ち悪くなっちゃったんだよー!」
「こはるちゃんからしたら後ろ向きに飛んでるからだぁ~。お姫様抱っこしてあげて~!」
「すみません、姫抱きをしたことがなく…!」
「おっ」
おんぶでもいいのでは、と言いかけたところでわたしの体が持ち上げられあっという間にお姫様抱っこの体勢になった。顔が近いことで恥ずかしいよりも先に思ったことが肌綺麗すぎだった。神さまの肌が真近で見ても綺麗で玉のような肌ってこのことを言うんですね、と一瞬、見惚れてしまった。技術の向上によって芸能人の肌もテレビ越しでも毛穴が見えるんじゃないかってぐらいになってきた世の中だけど、神さまにはそもそも毛穴がないのかもしれない。神さまの頬に指先を当てながらまじまじと見つめてしまう。
「神さまって毛穴ありますか?」
「毛穴、ですか?体の構造としては人間と同じなので毛穴はありますね。それよりこはるさん、吐き気の方は大丈夫でしょうか?」
「神さまの美しい肌に吐き気が吹き飛んだみたいです。ありがとうございます」
頬に触れている指も吸い付くような肌の水分量に喜びを覚えている気がする。夏だから汗だろうって言われてもこれは神さまが保有する水分量だと主張したいわたしがいる。
「すごーい!神さまの肌ってこはるちゃんを元気にできるんだ!」
「んと、飲むお薬じゃなくて見るお薬ってことかなぁ。すごいねぇ、神さま~!」
ゆうととゆいとは真っ白い羽をパタパタさせながら体を寄せ合い、お互いの手をギューっと握りながらそれはもう嬉しそうにくるくる回転している。三半規管が強いのか、たくさんくるくる回転してもケロッとした顔をしていた。この世界に遊園地みたいな施設があってコーヒーカップなるものがあれば、二人をぜひ乗せてみたい。それを見ているのわたしが吐きそうになるところまで想像してしまった。そうこうしているうちに目的地の上に辿り着いたみたいだ。真下を見れば視界に広がる緑。あぁ、森だ~と語彙力皆無の言葉が頭の中に浮かぶ。そしたらこのまま下にゆっくり降りていくのかなと思ったら、どうやらそうではないらしい。思い返せば確かに、と納得する節があった。目を開けていられないほどの強風が吹いて、次に目を開けた時には空の上にいたあの時のことを思い出す。勢いがないと上昇と下降ができないらしい。普段、穏やかな話し方をされる方が車の運転は荒いみたいなものかと納得しかけたけど、神さまの発言に目が溢れ落ちそうになった。
「なので、またこはるさんを気絶させることになってしまいます。でも安心してくださいね、悠刀と結刀の話によれば先程こはるさんは上昇中は白目を剥いていたらしいのですが、飛行位置が安定したら息を吹き返したようなので」
「強風すぎて呼吸ができてないやつですし、安心できる要素がありませんけど!?」
「じゃあ神さま、こはるちゃん!ぼくたちは呼吸できるぐらいのスピードで降りて行くから待っててねー!」
「またねぇ~!」
「ゆうとおおおおおおおお、ゆいとおおおおおおおおおおおお!!」
例に漏れず強風が吹き、次に目を開けた時には空とさよならしていた。わたしの目に映るのは神さまの滑らかな顎と艶やかな唇と木造の建物だった。木造の建物にはどこか風情を思わせるところがあり、傷んでいる部分が味を出している気がした。ホテルであればそれはもうどこもかしこも汚れがなくピッカピカを好むわたしだけど、温泉旅館や温泉施設はまた別だったりする。ぼんやりと取り止めもないことを考えていると手を伸ばしたら届きそうなところにひらひらと真白い羽根が落ちてきた。羽根を取ろうと手を伸ばそうとしたところで頭の上から声がして、それに気を取られて羽根を取ることはかなわなかった。
「こはるさん、ほら。悠刀と結刀が降りてきましたよ」
神さまの声に誘われるように視線の先を辿ると、ゆうととゆいとらしき2つの何かの姿が見えた。そしてきっと、さっき手にすることができなかった羽根は悠刀と結刀のどちらかの羽根
なんだろう。手にすることができたところで抜け落ちてしまった羽根を元に戻せないのに、ほんの少しだけ芽生えた罪悪感に蓋をした。それとも神さまであれば、あるいは元に戻せたのだろうか。
「ここに辿り着くのにまだ時間がかかりそうですね」
あとどれぐらいの時間で辿り着くかの計算も苦手だから迂闊にあと何分ぐらいですね、とも言えない。我ながら小さなことを気にしすぎだと思う。とはいえ、仕方ない。わたしは気にしてしまうのだから。神社とも空とも違う香りを鼻からすぅっと思い切り吸い込んだ。濃厚な草木の香りなのにどこか澄み切っていて、もし天国に森があるならこんな香りなのかなとなる。神さまの世界と天国はまた別なのかな。ご飯を口にする前に神さまに言われた大丈夫。死んではいないってことでもあるし、この世界のものを口にしても帰れなくなるわけじゃない意味だと思っている。わたしがいた世界の記憶はあるし家族の記憶も消えてはいない。耳に入ってくる音、呼吸するたびに体に入ってくる香り、じわじわと体の内側からこの世界に馴染んでいる気がして恐怖を覚える。わたし…死のうとしていたのに、な。記憶が消えなくても思い出す回数が減ってしまったらわたしの脳はちゃんと元の世界のこと、家族のことを現実にあったことだと認識したままなのだろうか。わからない、わからない。
「とうちゃーく!!」
「待っててくれてありがとぉ~!!いこいこ~!!」
「全然、待っていませんよ。ね、こはるさん」
「あ、はい」
物思いに耽っていたわたしはゆうととゆいとがここに辿り着く間に神さまとあまり会話をしていなかった。二人が来たことで視界が急に明瞭になり、そういえばお姫様抱っこをされたままなことに気がつく。慌てて、降ります!!と言って何を思ったかわたしは後ろにでんぐり返りをして地面に盛大にこんにちはした。痛みがあるのは生きている証。でもこれがわたしの作り出した妄想、あるいは夢であれば痛みなんてないはずなのに。
「うぅっ、どうしてかなぁ。痛いよぉぉ」
「「こはるちゃん!!!!!!!」」
「この位置から地面に落ちたらそうなります!待っててください、今あれを」
あれってなんでしょうか。痛い痛いと口にするわたし、頭の片隅でどこか冷静なわたし。せっかく温泉に連れてきてくれたのに、何してるんだろう。ああ、だめだ。死ぬのが怖いって思ったのにまたすぐに頭が死ぬことを考えてしまう。もう死ぬとかじゃなくて存在ごと消えて…。
意識がズブズブと暗闇に引き摺られていくわたしの上にあたたかいお湯がバシャリとかけられた。
「いただきまーす!!」
「いただきまぁ~す」
「い、いただきます」
皆よりも一拍遅れていただきますと言ってお箸を持ったものの、目の前にある朝ごはんをつい眺めてしまう。丸いお盆の上に艶々のご飯、ワカメとお豆腐と油揚げの入ったお味噌汁、見るからに美味しそうな焼き鮭とその脇に猫の形をした大根おろし。大根おろしにはお醤油が少し垂らしてあって、三毛猫みたいになっている。小鉢にはほうれん草と千切りにした人参と白ごまがかかったもの、黄色いたくあんが入ったものがある。これはもう食べる前から分かる。絶対に美味しいやつだ。というか、神さまの世界でもご飯を食べる習慣があることに驚いている。
「こはるさん?苦手な食材でもありましたか?」
「そうなのー?キュウリ以外ならぼくが食べてあげるよー!」
「こはるちゃん、辛いやつじゃなければぼくも食べてあげるよぉ~」
「あ、その。私も酸っぱいもの以外でしたら」
ゆうと、ゆいとに続いて神さまが恥ずかしそうに言うものだから、わたしは思わずふはっと笑ってしまった。箸を持っていない方の手で自然とほんのり出てきた涙を拭いながら、違いますと言った。
「あまりにも美味しそうだったのですぐに手をつけるのがもったいなく感じてしまって、つい眺めてしまっただけです」
「それはそれは。見た目も含めての料理ですから、嬉しいお言葉をありがとうございます」
「冷めちゃう前に食べようよー!あったかいものはあったかいうちに食べたほうが美味しいんだよ!」
「うん、そうだね」
わたしはお味噌汁の器を持ちながら、頭の片隅に抱いたことがある。よくある話だ。異世界のものを口にしたら元の世界に帰れなくなる。あまりに美味しそうですぐに手をつけるのがもったいなく感じたのも嘘じゃない。だけど、ふとしゃぼん玉のように膨らんでしまった不安は弾けてはまたすぐにふわふわと浮かんでくる。そもそもわたしが生きているか死んでいるのかの話の答えを聞く前に眠りについてしまったからあるいは今、考えていることに意味はないのかも知れないけれど。お味噌汁を箸でくるくる掻き混ぜて、口元に器を持ってきたとき不安そうな声で名前を呼ばれた。
「お顔の色がわるいよぉ?急に気持ちわるくなっちゃった?痛いところあるの?」
「ゆいと」
わたしの右隣に座っていたゆいとがお味噌汁の器を手に持ちながらわたしを見上げていた。
「え、と」
どうしよう。言うべきか、言わないべきか。目の前がぐるぐるしてくる感覚に襲われ、口の中の唾液が溜まっていく。
「こはるさん。大丈夫ですよ」
神さまの声がスッと耳の中に入ってきた。何が、とは言わずに告げられたその言葉は、多分わたしと神さまにしかわからないだろう。心の中を見透かされたようで怖かった、でもそれ以上に安心した。神さまを信じきっていいのかはわからない。だけど、その言葉に不思議と嘘は感じなかった。神さまに目を向けるとお味噌汁を啜りながら、わたしを見ていた。ふーっ、ふーっと息を吹きかけてお味噌汁を啜った。
「あったかい」
こくりと飲み込んだそれは喉を通っていき、胸のあたりでじんわりと広がっていった。こわばっていた顔と体から、ふっと力が抜けていく。そこからはもう目の前にある食事に舌鼓を打ちながら食べ進めていき、お米の一粒も残さず完食した。
「ごちそうさまでしたっ」
手を合わせて口にした言葉は言葉尻に音符やキラキラマークが付いているように弾んでしまった。ゆうととゆいとにはお腹がすきすぎて顔色が悪くなったと勘違いされた。違う、と言ったところで理由を答えずらくて曖昧にあははっと笑って誤魔化した。食器を洗って片付けをする。神さまが洗い、わたしが拭き、ゆうととゆいとが片付けをするリレー方式だった。使っている洗剤はギュギュットのオレンジの香り、ちなみにハンドソープは押すとお花の形で泡が出てくるキレイにしますわを使っているみたいだ。どこからどう見ても見慣れた商品で目を見開いた。神さまの世界ってもしかして一般人参加型のドッキリなのでは...と思ったけど、階段から落ちた記憶があるのでそれはないか、と頭を振る。
「さて、こはるさん」
「ぅあはいっ!」
「朝風呂でもいかがですか?」
それはもうぜひ、入らせていただきたいです。ご飯を食べる前に洗面台で顔を洗い、歯も磨かせてもらったがお風呂にはまだ入っていなかった。無類のお風呂好き!というわけでもないが、神さまとかわいい男の子達の前で異臭を放ったままは嫌だ。
「よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いされます」
くすくすと神さまが笑い、ほんの少し恥ずかしさを感じた。口元に指をあてて笑うのが癖らしく、癖に対してお似合いという言葉が合っているのかわからないけどとてもお似合いだと思う。恋愛感情があるとかないとかは置いておいて、こんなに柔らかな雰囲気の美形さんの隣に立つことがないわたしはちいさなドキドキが止まらないのである。ゆうととゆいとは朝風呂だー!と二人で手を繋いできゃっきゃとはしゃいでいる。わたしと一緒に入るってことだろうか。うんうん、おっけー。
「それではこはるさん。山と海、それから空。どちらが良いでしょうか?」
それはもしかしてその場所に行くということでしょうか。朝風呂の為に温泉に行くとはさすが神さまというべきだろうか。規格外の発想に白目を剥きそうになる。いやいや、もしかしたら入浴剤のことかもしれない。空の香りの入浴剤は聞いたことがないけど、なんせここは神さまの世界。あるかもしれない。きっと入浴剤!きっとそう!
「えっと、候補になかったのですが森の選択肢はありますか?」
そういえば山の香りも聞いたことがあまりない。草木が生えているし、似たようなものだと思う。山の香りは森の香りであって森の香りは山の香りでもある。異論は認めます。
「ああ、森ですね。ふふっ、いいですね。それでは、森にしましょうか。私は電話をしてきます。少しお待ちください。悠刀と結刀はお風呂セットを用意してもらってもいいでしょうか?」
「がってんしょーちです!」
「がってんしょ~ちですぅ!」
ビシッと敬礼ポーズをした後にパタパタと駆けていく二人を見送って、取り残されたわたしはなんとなしに神さまの方を向いた。ご飯の習慣があるのも驚いたけど、電話の方が驚きかもしれない。なんとなく神さまならテレパシー的なものが使えるような気がしていたからだ。というか、電波はあるのかな。
「あの、電話をするのであればお邪魔になると思うので離れていましょうか?」
この邪魔になる、というのはわたしが何かちょっかいをかけるという意味ではなくて単に人が隣にいるとお話ししづらいのではないかという配慮だったりする。電話の時にどうしても声が上擦ってしまいがちだったり、お母さんの声が1オクターブ上がってしまうような、普段の話し声とは違う声が出てしまうのを恥ずかしく思わないだろうか、というアレである。神さまは特に気にするタイプでもないのか、大丈夫ですよと言いながら人差し指でほのかにオレンジ色の光を帯びた線を空中にするりと丸を描いた。丸の終着点で光が一際大きくなったかと思うとそこに現れたのは黒電話だった。空中浮遊の黒電話。ファンタステック。思わず目をぱちくりさせてしまった。
「えっと、コンセントってこの家にあるんでしょうか」
果たしてこの質問はあっているのか、と口には出さずに心の中で自己ツッコミをする。わたしの心中を知ってか知らずか、神さまはにっこり笑う。
「この家にコンセントはないですね。でも大丈夫ですよ。コンセントはいらないですから」
「あ、そうなんですね?」
神さまは、えーと確か森のお風呂案内の番号は…と呟きながらダイヤルをくるくると回していき受話器をとった。すると3秒もしないうちに電話が繋がったようで、ちいさな声であっと声を上げた。
「おはようございます。はい、ええ。あ、いえ。今日は3人ではなく4人でお願いします。そうですねぇ、今日は晴れていますから。はい、よろしくお願いします。では、失礼します」
チンッと音を立てて受話器を置くと黒電話がキュルキュルと渦を巻いて中心で消えていった。ほへぇーと謎の感嘆を漏らしているとちょうどそこにゆうととゆいとが2つずつ袋を手に持って戻ってきた。1つの袋はそれほど重さがないと思うけど、まだ見た目からして幼いこの子達には重いだろう。持とうか?と声を掛けると、ううん!と元気な声が同時に返ってきた。しまった。ここはあえて聞かずにスマートに二人の手から荷物を手に取った方が良かっただろうか。
「あー!こはるちゃんもしかしてぼくたちが重いと思って持とうか?って言ってくれたの?」
「う、うん」
そうなんだけど、あえて口に出されると恥ずかしくなる。ニッコニコの笑顔でこちらを見つめてくる二人の顔を見ていられなくて目を逸らした先に神さまの顔があり、神さまにも微笑まれてしまった。なんてことない行動なのに、そんなに嬉しそうな顔をしないでください。火照るほっぺたに指の背中をそっとあてて、ふぅーっと息を吐いた。
「あのね、あのねぇ!ぼくと悠刀はとっても力持ちなんだよ~!だからだいじょうぶ!」
「うんうん!こはるちゃんもお姫抱っこできるぐらい力持ちなんだから!」
「悠刀。それはあまり好ましい言葉ではありませんよ」
「は、ははっ」
神さまの嗜めの言葉さえ心にグサグサと突き刺さる。少女漫画や乙女ゲームの主人公みたいに標準体重より軽ければ良かったけど、そこそこいい体型のわたしは苦笑いしかできない。それでも小さなこの子達が大人の女を抱えられるほどの力持ちだということはわかった。もう少し体重が軽ければダメージを喰らわずにそっかー!すごいね!ですますことができたのに。というか、神さまの言葉がトドメを刺してきた気がする。好ましい言葉の体型じゃなく、気を遣わせてすみませんでした。
「ところでこはるさんは高いところは苦手ですか?」
「高いところですか?いえ、特に苦手ではありません」
ジェットコースターみたいに高速移動は苦手だけど、高いところという括りでいえば苦手というわけでなかった。
「では、景色を見ながら行きましょうか」
「うええぇっ?!」
「レッツゴー!!」
「ご~!!」
ひょいっと体を持ち上げられたかと思うと目を開けていられないほどの強風が吹いて、次に目を開けた時には空の上にいた。神さまの肩越しに見える景色は神社だけが見慣れたもので、建物や空の色もわたしの記憶にあるものとは違っていた。建物は平家ばかりで昔の時代にタイムスリップしたような感じだ。空の色はどこまでも澄んだ青空でキラキラした光の粒が耐え間なく降り注いでいる。
「きれい…」
「この光は人々の願いが叶った時に現れる光で、昼夜を問わず降り注いでいますね」
「願いが…」
願いがあるということは生きている間にやりたいことがあったり、生きる意思があるということだと思う。そして願ったことが叶った人がこんなにたくさんいる。すごいな、という思いと羨ましいという感情も同時に生まれる。妬んでも何も生まれないことはわかっているのに、胸の内側でふつふつと生まれてしまう感情に上下の歯で頬の内側をギリッと噛んだ。努力すれば叶うものと、努力のしようがないものがあると言ったら非難されるだろうか。頭の回転の悪さ、手先の不器用さ、果たしてこれは改善できるものに含まれるのだろうか。夏にしては心地の良い体感温度だけど、わたしの顔色が悪くなってくるのを自身でも感じる。でもこれは精神的なものではなく、身体的なものだ。
「うっ、すみません。吐き気が…」
「え!!もうっ!!神さまがお姫様抱っこしないからこはるちゃん気持ち悪くなっちゃったんだよー!」
「こはるちゃんからしたら後ろ向きに飛んでるからだぁ~。お姫様抱っこしてあげて~!」
「すみません、姫抱きをしたことがなく…!」
「おっ」
おんぶでもいいのでは、と言いかけたところでわたしの体が持ち上げられあっという間にお姫様抱っこの体勢になった。顔が近いことで恥ずかしいよりも先に思ったことが肌綺麗すぎだった。神さまの肌が真近で見ても綺麗で玉のような肌ってこのことを言うんですね、と一瞬、見惚れてしまった。技術の向上によって芸能人の肌もテレビ越しでも毛穴が見えるんじゃないかってぐらいになってきた世の中だけど、神さまにはそもそも毛穴がないのかもしれない。神さまの頬に指先を当てながらまじまじと見つめてしまう。
「神さまって毛穴ありますか?」
「毛穴、ですか?体の構造としては人間と同じなので毛穴はありますね。それよりこはるさん、吐き気の方は大丈夫でしょうか?」
「神さまの美しい肌に吐き気が吹き飛んだみたいです。ありがとうございます」
頬に触れている指も吸い付くような肌の水分量に喜びを覚えている気がする。夏だから汗だろうって言われてもこれは神さまが保有する水分量だと主張したいわたしがいる。
「すごーい!神さまの肌ってこはるちゃんを元気にできるんだ!」
「んと、飲むお薬じゃなくて見るお薬ってことかなぁ。すごいねぇ、神さま~!」
ゆうととゆいとは真っ白い羽をパタパタさせながら体を寄せ合い、お互いの手をギューっと握りながらそれはもう嬉しそうにくるくる回転している。三半規管が強いのか、たくさんくるくる回転してもケロッとした顔をしていた。この世界に遊園地みたいな施設があってコーヒーカップなるものがあれば、二人をぜひ乗せてみたい。それを見ているのわたしが吐きそうになるところまで想像してしまった。そうこうしているうちに目的地の上に辿り着いたみたいだ。真下を見れば視界に広がる緑。あぁ、森だ~と語彙力皆無の言葉が頭の中に浮かぶ。そしたらこのまま下にゆっくり降りていくのかなと思ったら、どうやらそうではないらしい。思い返せば確かに、と納得する節があった。目を開けていられないほどの強風が吹いて、次に目を開けた時には空の上にいたあの時のことを思い出す。勢いがないと上昇と下降ができないらしい。普段、穏やかな話し方をされる方が車の運転は荒いみたいなものかと納得しかけたけど、神さまの発言に目が溢れ落ちそうになった。
「なので、またこはるさんを気絶させることになってしまいます。でも安心してくださいね、悠刀と結刀の話によれば先程こはるさんは上昇中は白目を剥いていたらしいのですが、飛行位置が安定したら息を吹き返したようなので」
「強風すぎて呼吸ができてないやつですし、安心できる要素がありませんけど!?」
「じゃあ神さま、こはるちゃん!ぼくたちは呼吸できるぐらいのスピードで降りて行くから待っててねー!」
「またねぇ~!」
「ゆうとおおおおおおおお、ゆいとおおおおおおおおおおおお!!」
例に漏れず強風が吹き、次に目を開けた時には空とさよならしていた。わたしの目に映るのは神さまの滑らかな顎と艶やかな唇と木造の建物だった。木造の建物にはどこか風情を思わせるところがあり、傷んでいる部分が味を出している気がした。ホテルであればそれはもうどこもかしこも汚れがなくピッカピカを好むわたしだけど、温泉旅館や温泉施設はまた別だったりする。ぼんやりと取り止めもないことを考えていると手を伸ばしたら届きそうなところにひらひらと真白い羽根が落ちてきた。羽根を取ろうと手を伸ばそうとしたところで頭の上から声がして、それに気を取られて羽根を取ることはかなわなかった。
「こはるさん、ほら。悠刀と結刀が降りてきましたよ」
神さまの声に誘われるように視線の先を辿ると、ゆうととゆいとらしき2つの何かの姿が見えた。そしてきっと、さっき手にすることができなかった羽根は悠刀と結刀のどちらかの羽根
なんだろう。手にすることができたところで抜け落ちてしまった羽根を元に戻せないのに、ほんの少しだけ芽生えた罪悪感に蓋をした。それとも神さまであれば、あるいは元に戻せたのだろうか。
「ここに辿り着くのにまだ時間がかかりそうですね」
あとどれぐらいの時間で辿り着くかの計算も苦手だから迂闊にあと何分ぐらいですね、とも言えない。我ながら小さなことを気にしすぎだと思う。とはいえ、仕方ない。わたしは気にしてしまうのだから。神社とも空とも違う香りを鼻からすぅっと思い切り吸い込んだ。濃厚な草木の香りなのにどこか澄み切っていて、もし天国に森があるならこんな香りなのかなとなる。神さまの世界と天国はまた別なのかな。ご飯を口にする前に神さまに言われた大丈夫。死んではいないってことでもあるし、この世界のものを口にしても帰れなくなるわけじゃない意味だと思っている。わたしがいた世界の記憶はあるし家族の記憶も消えてはいない。耳に入ってくる音、呼吸するたびに体に入ってくる香り、じわじわと体の内側からこの世界に馴染んでいる気がして恐怖を覚える。わたし…死のうとしていたのに、な。記憶が消えなくても思い出す回数が減ってしまったらわたしの脳はちゃんと元の世界のこと、家族のことを現実にあったことだと認識したままなのだろうか。わからない、わからない。
「とうちゃーく!!」
「待っててくれてありがとぉ~!!いこいこ~!!」
「全然、待っていませんよ。ね、こはるさん」
「あ、はい」
物思いに耽っていたわたしはゆうととゆいとがここに辿り着く間に神さまとあまり会話をしていなかった。二人が来たことで視界が急に明瞭になり、そういえばお姫様抱っこをされたままなことに気がつく。慌てて、降ります!!と言って何を思ったかわたしは後ろにでんぐり返りをして地面に盛大にこんにちはした。痛みがあるのは生きている証。でもこれがわたしの作り出した妄想、あるいは夢であれば痛みなんてないはずなのに。
「うぅっ、どうしてかなぁ。痛いよぉぉ」
「「こはるちゃん!!!!!!!」」
「この位置から地面に落ちたらそうなります!待っててください、今あれを」
あれってなんでしょうか。痛い痛いと口にするわたし、頭の片隅でどこか冷静なわたし。せっかく温泉に連れてきてくれたのに、何してるんだろう。ああ、だめだ。死ぬのが怖いって思ったのにまたすぐに頭が死ぬことを考えてしまう。もう死ぬとかじゃなくて存在ごと消えて…。
意識がズブズブと暗闇に引き摺られていくわたしの上にあたたかいお湯がバシャリとかけられた。
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