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第194話 暗黒神の宝玉
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「い、今だ!!」
ドルゲルはイグの隙をつきトンネルに飛び込むと転移魔法を展開する。ドルゲルの身体が一瞬光を放つと次の瞬間ドルゲルは龍峰山の近くに描いた転移陣の真ん中で大の字になり倒れていた。
「うっ・・・くっ・・・や、やっぱり・・この世界に無い魔法は・・・燃費が悪過ぎる・・1日に二回は無理があったか・・・くそっ・・街までは転移出来なかった・・・そ、それより・・ふ、封印の箱を・・・」
ドルゲルは魔力切れで意識が朦朧としていた。首を辛うじて持ち上げ封印の箱に手を伸ばすと突然封印の箱が勝手に持ち上がる。
「なっ・・・」
(ほう・・・突然神界の力を感じたと思ったら・・・これは・・とんだ拾い物だ・・・)
「くっ・・・お、お前は・・・か、返せ・・・」
ドルゲルが手を伸ばし見上げると見覚えがある子供が翼を折り畳んだサキュバスの肩に乗っていた。その子供はサキュバスが持っている赤い箱の中を覗き込みにんまり笑う。
「・・・ル、ルビラス・・な、何故お前が・・・ここに・・・」
どさっ・・・
ドルゲルは意識を繋ぎ止める事が出来ずに伸ばした手が力無く地面に落ちた。
(・・ふーん。俺を知ってるって事はこいつがドルゲルか・・・ふっ・・なるほど・・こいつ神界でやらかしたな・・・まぁいい・・これは神託として有り難く貰ってやるぞ!)
「ゼルビス様!何者かが近付いて来ます!」
(ん?・・・この気配は・・・まさか・・・なるほど・・・こいつを追って来たのか・・・だが俺も見つかる訳にはいかん!)
「おい!かえりゅぞ!!」
「はい。ゼルビス様。」
サキュバスは蝙蝠のような羽根を広げ羽ばたくとドルゲルをその場に残して空高く舞い上がって行った。
「んんっ?!今の気配・・・何処かで・・・ 」
イグは立ち止まり辺りを警戒していると目線の先に何者かが倒れているのを見つけた。
「・・あれは・・・見付けた!!ドルゲル!!覚悟っ!!」
イグは魔力切れで倒れているドルゲル目掛けて加速する。しかし一足先にドルゲルに近付く人影があった。
「ちっぃぃ・・・」
イグは咄嗟に木陰に身を隠し早る気持ちを抑えて様子を見る。
「ドルゲル様?!どうしたんですか?大丈夫ですか?!」
ドルゲルに駆け寄ったのはバルバート騎士団副団長マーベリアであった。龍峰山からの殺気と熱気が収まり魔物達も落ち付いた事で様子を見るべくマーベリア達は龍峰山へと向かったのであった。
(くっ・・・獣人・・何故ドルゲルを知っているの?奴はここで何をしていたの?!)
マーベリアがドルゲルの首筋に指を当てる。
「・・脈はある!恐らく魔力切れだ!早くドルゲル様を街へ運ぶんだ!!」
「了解!!さあ!我らの命の恩人だ!!一刻を争うぞ!!」
「おう!!!」
マーベリア達はドルゲルを馬に乗せて固定するとそのまま急ぎ走り去って行った。
イグは木陰から姿を現すタイミングを失いあっという間の出来事に呆然としていた。
「・・・し、しまった・・・だけどドルゲルが命の恩人・・・?そんな馬鹿な事・・・あり得ないわ・・・よし・・確かめてやるわ・・・」
イグはマーベリア達の後を追うべくガーゼイド街へ向かう事にするのであった。
「むっ・・・ここは・・・」
ドルゲルは見知らぬ天井を見上げて瞼を震わせる。
「・・お、俺は・・・確か・・イグに追われて・・転移して・・・あぁっ!!箱!!封印の箱は?!」
ドルゲルが飛び起きるとうたた寝をしていたマーベリアも肩を跳ね上げて目を開く。
「ドルゲル様!!お目覚めですか?!」
マーベリアが慌ててドルゲルに近付くと突然ドルゲルに両肩を掴まれ息がかかる程の距離まで顔が近付く・・・
(はうっ・・・ち、近い・・・)
「お、俺の箱は何処だ?!俺の・・・あの赤い箱は何処だ?!」
「は、箱?!・・・あのドルゲル様が持っていた箱ですか・・・た、確か・・あ、あの場には無かった・・・間違いなく無かったですが・・・」
「・・・や、やっぱり・・・そうか・・・奴だ・・・奴が持ち去ったんだ・・・くそっ!ルビラスの野郎・・・」
ドルゲルは予想通りの返事に肩の力を落としマーベリアを解放する。
(あう・・・ん?ルビラス・・?!」
マーベリアは聞き覚えのある名前に記憶を辿る・・・そして思わず口走る・・
「・・・暗黒神ルビラス・・・」
マーベリアから暗黒神ルビラスの名が出るとドルゲルは目を見開き再びマーベリアの肩を掴み詰め寄る。
「お、おい!!な、何故お前がルビラスが暗黒神だと知っている?!」
ドルゲルはマーベリアと鼻が触れるほどまで詰め寄る・・・
(はう・・・近い・・・)
「こ、この世界で暗黒神ルビラスの名を知るものは”闇光大戦”の真実を知る神界の者だけだ!何故お前が知っているんだ?!」
ドルゲルの唇が迫り思わず頬を赤らめマーベリアは顔を逸らす。
「ド、ドルゲル様・・・お、落ち着いて・・・ほ、本です・・・最近出回っている本に書かれているのです。わ、私も持っていますのでお持ちします・・・」
「こちらです。」
「うむ。」
マーベリアが二冊のうちの一冊を差し出すとドルゲルは受け取り直ぐに本を開く。そしてパラパラと要所要所を確認するように目を走らせ眉を何度も細めるとパタンと本を閉じた。
「・・・なるほど・・・この本に書かれている事は光のメイシス側からの真実・・・ふっ・・こいつを書いたのは光の使徒って訳だ・・・サーシャ・アズナブル・・・こいつの名は覚えておこう。」
ドルゲルは本をベットの上に置くとマーベリアがもう一冊本を持っているのが気になった。
「おい。その本は何だ?」
「えっ・・こ、これは同じ著者が出した本です。私も読みかけで・・・」
「何?!同じ著者?!ちょっと貸せ!!」
「あう・・・」
(まだ読みかけなのに・・・)
マーベリアの寂しそうな顔を横目にドルゲルは本を開くともの凄い速さで目を走らせる・・すると先程と同じくドルゲルは目尻を震わせながら本を閉じた・・・
パタン・・・
(・・・こ、こいつだ・・・八岐大蛇を倒したのは・・・あの時見た男は神力に目覚めたばかりのひょっこだった・・・そんな奴に神獣八岐大蛇を倒せる訳が無い・・・間違い無い・・・この本を書いた奴は光の使徒・・・天界神の加護・・・リナの生まれ変わりだ・・・神獣か・・今の俺では・・・)
「ドルゲル様・・・どうかしましたか?」
閉じた本を見下ろし固まるドルゲルを見てマーベリアが心配して声を掛ける。
「んっ・・・い、いや・・何でもない・・」
ドルゲルは地上に降りた自分の力に溺れていた。しかし古龍四柱の力とミハエル達の圧倒的な力、神獣八岐大蛇を倒す程の光の使徒の力に無力感を感じていた。
(・・・暗黒神の宝玉・・・奴も分かっているはずだ・・・奴の今の身体では暗黒神の力を制御する事は無理だ。使えば力が暴走し身を滅ぼす。・・・ならば奴が神界の力に目覚める前に暗黒神の宝玉を取り戻さなければ・・」
ドルゲルはふとサーシャ・アズナブルの文字に目を落とし目を細めるのであった・・・
「アルノー!!サーシャは何処だ?!何処へ行った?!」
サーシャの父親ガルバンが執事のアルノーに詰め寄る。
「は、はい。旦那様。先程冒険者ギルドへ行くと出て行かれました。」
「な、何だと?!今から社交ダンスのレッスンと社交マナーのレッスンがあるのだぞ?!何故止めなかった?!」
「も、申し訳ありません・・・こ、声を掛ける暇もなく・・・出て行かれましたので・・・」
「はぁ・・・全く。まぁ・・あまり無理強いするとこの前みたいに癇癪を起こして部屋が吹き飛ばされても困るな・・・」
ガルバンは以前サーシャに口煩く言い過ぎて癇癪を起こし部屋の壁を吹き飛ばして脱走した事を思い出していた。
「えぇ・・・あれは大変でした・・・そう言えば最近冒険者ギルドから緊急依頼が増えておりお嬢様に声が掛かるようです。」
「む、むう・・・噂では以前のスタンピードで生き残ったコカトリスやドラゴニュートが繁殖して更に上位の変異種が森やダンジョンに住み着いたらしいな・・・ふむ、冒険者だけでなく住民にも被害が出ていると聞く。サーシャの事だ・・大丈夫だとは思うが・・・何か胸騒ぎがするの気のせいか・・・」
ドルゲルはイグの隙をつきトンネルに飛び込むと転移魔法を展開する。ドルゲルの身体が一瞬光を放つと次の瞬間ドルゲルは龍峰山の近くに描いた転移陣の真ん中で大の字になり倒れていた。
「うっ・・・くっ・・・や、やっぱり・・この世界に無い魔法は・・・燃費が悪過ぎる・・1日に二回は無理があったか・・・くそっ・・街までは転移出来なかった・・・そ、それより・・ふ、封印の箱を・・・」
ドルゲルは魔力切れで意識が朦朧としていた。首を辛うじて持ち上げ封印の箱に手を伸ばすと突然封印の箱が勝手に持ち上がる。
「なっ・・・」
(ほう・・・突然神界の力を感じたと思ったら・・・これは・・とんだ拾い物だ・・・)
「くっ・・・お、お前は・・・か、返せ・・・」
ドルゲルが手を伸ばし見上げると見覚えがある子供が翼を折り畳んだサキュバスの肩に乗っていた。その子供はサキュバスが持っている赤い箱の中を覗き込みにんまり笑う。
「・・・ル、ルビラス・・な、何故お前が・・・ここに・・・」
どさっ・・・
ドルゲルは意識を繋ぎ止める事が出来ずに伸ばした手が力無く地面に落ちた。
(・・ふーん。俺を知ってるって事はこいつがドルゲルか・・・ふっ・・なるほど・・こいつ神界でやらかしたな・・・まぁいい・・これは神託として有り難く貰ってやるぞ!)
「ゼルビス様!何者かが近付いて来ます!」
(ん?・・・この気配は・・・まさか・・・なるほど・・・こいつを追って来たのか・・・だが俺も見つかる訳にはいかん!)
「おい!かえりゅぞ!!」
「はい。ゼルビス様。」
サキュバスは蝙蝠のような羽根を広げ羽ばたくとドルゲルをその場に残して空高く舞い上がって行った。
「んんっ?!今の気配・・・何処かで・・・ 」
イグは立ち止まり辺りを警戒していると目線の先に何者かが倒れているのを見つけた。
「・・あれは・・・見付けた!!ドルゲル!!覚悟っ!!」
イグは魔力切れで倒れているドルゲル目掛けて加速する。しかし一足先にドルゲルに近付く人影があった。
「ちっぃぃ・・・」
イグは咄嗟に木陰に身を隠し早る気持ちを抑えて様子を見る。
「ドルゲル様?!どうしたんですか?大丈夫ですか?!」
ドルゲルに駆け寄ったのはバルバート騎士団副団長マーベリアであった。龍峰山からの殺気と熱気が収まり魔物達も落ち付いた事で様子を見るべくマーベリア達は龍峰山へと向かったのであった。
(くっ・・・獣人・・何故ドルゲルを知っているの?奴はここで何をしていたの?!)
マーベリアがドルゲルの首筋に指を当てる。
「・・脈はある!恐らく魔力切れだ!早くドルゲル様を街へ運ぶんだ!!」
「了解!!さあ!我らの命の恩人だ!!一刻を争うぞ!!」
「おう!!!」
マーベリア達はドルゲルを馬に乗せて固定するとそのまま急ぎ走り去って行った。
イグは木陰から姿を現すタイミングを失いあっという間の出来事に呆然としていた。
「・・・し、しまった・・・だけどドルゲルが命の恩人・・・?そんな馬鹿な事・・・あり得ないわ・・・よし・・確かめてやるわ・・・」
イグはマーベリア達の後を追うべくガーゼイド街へ向かう事にするのであった。
「むっ・・・ここは・・・」
ドルゲルは見知らぬ天井を見上げて瞼を震わせる。
「・・お、俺は・・・確か・・イグに追われて・・転移して・・・あぁっ!!箱!!封印の箱は?!」
ドルゲルが飛び起きるとうたた寝をしていたマーベリアも肩を跳ね上げて目を開く。
「ドルゲル様!!お目覚めですか?!」
マーベリアが慌ててドルゲルに近付くと突然ドルゲルに両肩を掴まれ息がかかる程の距離まで顔が近付く・・・
(はうっ・・・ち、近い・・・)
「お、俺の箱は何処だ?!俺の・・・あの赤い箱は何処だ?!」
「は、箱?!・・・あのドルゲル様が持っていた箱ですか・・・た、確か・・あ、あの場には無かった・・・間違いなく無かったですが・・・」
「・・・や、やっぱり・・・そうか・・・奴だ・・・奴が持ち去ったんだ・・・くそっ!ルビラスの野郎・・・」
ドルゲルは予想通りの返事に肩の力を落としマーベリアを解放する。
(あう・・・ん?ルビラス・・?!」
マーベリアは聞き覚えのある名前に記憶を辿る・・・そして思わず口走る・・
「・・・暗黒神ルビラス・・・」
マーベリアから暗黒神ルビラスの名が出るとドルゲルは目を見開き再びマーベリアの肩を掴み詰め寄る。
「お、おい!!な、何故お前がルビラスが暗黒神だと知っている?!」
ドルゲルはマーベリアと鼻が触れるほどまで詰め寄る・・・
(はう・・・近い・・・)
「こ、この世界で暗黒神ルビラスの名を知るものは”闇光大戦”の真実を知る神界の者だけだ!何故お前が知っているんだ?!」
ドルゲルの唇が迫り思わず頬を赤らめマーベリアは顔を逸らす。
「ド、ドルゲル様・・・お、落ち着いて・・・ほ、本です・・・最近出回っている本に書かれているのです。わ、私も持っていますのでお持ちします・・・」
「こちらです。」
「うむ。」
マーベリアが二冊のうちの一冊を差し出すとドルゲルは受け取り直ぐに本を開く。そしてパラパラと要所要所を確認するように目を走らせ眉を何度も細めるとパタンと本を閉じた。
「・・・なるほど・・・この本に書かれている事は光のメイシス側からの真実・・・ふっ・・こいつを書いたのは光の使徒って訳だ・・・サーシャ・アズナブル・・・こいつの名は覚えておこう。」
ドルゲルは本をベットの上に置くとマーベリアがもう一冊本を持っているのが気になった。
「おい。その本は何だ?」
「えっ・・こ、これは同じ著者が出した本です。私も読みかけで・・・」
「何?!同じ著者?!ちょっと貸せ!!」
「あう・・・」
(まだ読みかけなのに・・・)
マーベリアの寂しそうな顔を横目にドルゲルは本を開くともの凄い速さで目を走らせる・・すると先程と同じくドルゲルは目尻を震わせながら本を閉じた・・・
パタン・・・
(・・・こ、こいつだ・・・八岐大蛇を倒したのは・・・あの時見た男は神力に目覚めたばかりのひょっこだった・・・そんな奴に神獣八岐大蛇を倒せる訳が無い・・・間違い無い・・・この本を書いた奴は光の使徒・・・天界神の加護・・・リナの生まれ変わりだ・・・神獣か・・今の俺では・・・)
「ドルゲル様・・・どうかしましたか?」
閉じた本を見下ろし固まるドルゲルを見てマーベリアが心配して声を掛ける。
「んっ・・・い、いや・・何でもない・・」
ドルゲルは地上に降りた自分の力に溺れていた。しかし古龍四柱の力とミハエル達の圧倒的な力、神獣八岐大蛇を倒す程の光の使徒の力に無力感を感じていた。
(・・・暗黒神の宝玉・・・奴も分かっているはずだ・・・奴の今の身体では暗黒神の力を制御する事は無理だ。使えば力が暴走し身を滅ぼす。・・・ならば奴が神界の力に目覚める前に暗黒神の宝玉を取り戻さなければ・・」
ドルゲルはふとサーシャ・アズナブルの文字に目を落とし目を細めるのであった・・・
「アルノー!!サーシャは何処だ?!何処へ行った?!」
サーシャの父親ガルバンが執事のアルノーに詰め寄る。
「は、はい。旦那様。先程冒険者ギルドへ行くと出て行かれました。」
「な、何だと?!今から社交ダンスのレッスンと社交マナーのレッスンがあるのだぞ?!何故止めなかった?!」
「も、申し訳ありません・・・こ、声を掛ける暇もなく・・・出て行かれましたので・・・」
「はぁ・・・全く。まぁ・・あまり無理強いするとこの前みたいに癇癪を起こして部屋が吹き飛ばされても困るな・・・」
ガルバンは以前サーシャに口煩く言い過ぎて癇癪を起こし部屋の壁を吹き飛ばして脱走した事を思い出していた。
「えぇ・・・あれは大変でした・・・そう言えば最近冒険者ギルドから緊急依頼が増えておりお嬢様に声が掛かるようです。」
「む、むう・・・噂では以前のスタンピードで生き残ったコカトリスやドラゴニュートが繁殖して更に上位の変異種が森やダンジョンに住み着いたらしいな・・・ふむ、冒険者だけでなく住民にも被害が出ていると聞く。サーシャの事だ・・大丈夫だとは思うが・・・何か胸騒ぎがするの気のせいか・・・」
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