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第192話 神界最強の神獣

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(神界の毒・・・神界の力が宿った毒・・・やるしか無い!!)

ドルゲルは魔力操作で自分の中に入った神界の力を探る。

(こ、これか・・・よ、よし・・毒は後回しだ・・・俺の魔力と合成出来れば・・無力化出来るはず・・は、早く・・しないと・・・)

背後で狙いを定めるイグに恐怖を覚えながら自分の中の神界の力に魔力操作で自分の魔力を合成して行く。

(はぁ・・はぁ・・はぁぁぁ・・・早く・・・)

次第にドルゲルの呼吸が落ち着いていく・・そしてイグは大人しくなったドルゲルの姿を見て異変に気付く。

(な、何・・・?な、何かがおかしい・・・そういえば・・ドルゲルが持っていたあの箱・・・まさか!!)

「ドルゲル!!お前!まさかぁ!!!」

カチッ・・・

金属の止金が外れるような音がするとイグは背筋に寒気を感じ慌てて振り上げた尾をドルゲル目掛けて振り下ろす!

(よし!!開いたぁぁぁ!!)

ドルゲルは慌てて箱を開け手を突っ込む。そして無造作に封印の宝玉を掴みイグに振り返ると同時に振り下ろされたイグの尾を宝玉で受け止めた。

ばぎぃぃぃん・・・びきっ・・びきっ・・・

「や、やっぱり・・・お、お前はぁぁぁ!!地上に・・・地上になんて物を持ち込んだのよぉぉぉ!!!」

「ふん!危なかった!!だがお前のお陰で助かったぜ・・・って・・・げげっ!!!極獄級?!しまったぁぁ!!こんな所で!!」

びきっ・・・びきびきびきっ・・・ばりぃぃぃぃん・・・

ドルゲルが掴んだ宝玉は煉獄級の更に上の極獄級の宝玉であった。神界でも長い時間の中で二つしかない宝玉である。イグの攻撃を受けた暗い赤紫の宝玉はヒビが入り無惨に砕け散る。それと同時にドルゲルとイグの間に暗い赤紫の巨大な靄が立ち昇る!!

「こ、この波動は・・・あ、あいつか・・まずい・・・」

ドルゲルが様子を見ながらジリジリとトンネルに移動していると濃い赤紫の靄の中から次々と黒い塊が飛び出して来る!!そしてドルゲルの目の前にも黒い塊が降り立った・・・

「ぐるるるるるる・・・」

それは黒く分厚い毛並みに赤い筋が走った巨大な獣であった。耳は大きくそそり立ち、赤く鋭い眼光で牙を剥いていた。太く大きな尻尾は各個体で異なる本数が生えている。

「・・・ナ、ナイトテイル・・・尻尾一本でも一国の軍隊に匹敵する力を持つと言われている神界の魔物・・・その親はは神界の森で大暴れして広大な神界の森の半分を吹き飛ばした伝説の厄災・・・エンペラー・ナインテイル・・・い、今の俺では・・・制御も無理だ・・・」

「な、なんて事を・・・伝説の厄災が・・・地上に・・・」

イグとドルゲルはその場に溢れかえるナイトテイルの中央に立つ噴火口が狭く感じる程の漆黒の獣を見上げる。九本の巨大な尻尾から頭まで赤い筋が走りその体からは濃い青紫のオーラを立ち昇らせていた。そして今長い時を経て目覚めたとばかりに不気味に光る暗い紫の眼をゆっくりと開いた。

「・・・ごるぅぅぅ・・ここは・・・神界ではないな・・・この私をここに連れて来たのは貴様か・・・?」

エンペラー・ナインテイルは内臓に響くような魔力の籠った低い声でドルゲルに問いかけた。その迫力は殺気にも似た威圧感であった。

(くっ・・・この威圧感・・・この俺でも・・ギリギリだ・・・早くここから退散しないと・・・)

しかしドルゲルの額には汗が滲み膝を付いたまま動く事が出来なかった。

「こ、ここは地上だ・・・俺がお前を・・解放してやったんだ・・・け、敬意を払いやがれ!」

ドルゲルは無理矢理絞り出すように声を上げる。

「・・ぐるぅぅ・・・この私に貴様のような隈少なゴミに敬意を払えと・・・ぐるぅ・・いいだろう・・・貴様に敬意を払い我が子達の餌としてやろう・・・」

鋭く紫色に光眼を見開くと数百匹のナイト・テイルが牙を剥き鋭い眼光をドルゲルに向ける。

「うぐっ・・・くそっ!なんて奴だ・・・恩を仇で返すのか?!」

ドルゲルは立つ事が出来ずに悪態を吐きながら封印の箱を抱える。そして尻を地面に摩りながら少しずつ後退る・・・

「待ちなさい!!そのゴミは私の獲物よ!勝手な事は許さないわ!!」

その場で様子を見ていたイグは力を解放すると巨大な蛇の姿に変わる。イグは巨大な尻尾を細かく震わせ威嚇すると首をもたげてエンペラー・ナインテイルの前に立ちはだかった。

「・・・ほう・・貴様は・・冥界蛇か?・・・神界の者に会うのは久しいのう・・・しかしその怒りようは・・貴様もこのゴミに連れて来られたか・・・」

「えぇ・・その通りよ・・・そのゴミだけは絶対に許さない・・・」

「・・・いいだろう・・・そのゴミは譲ってやる・・・。その代わり・・一つ答るのだ・・さ、さっきから感じるこの膨大な力の正体はなんだ・・・」

気付けば数百匹のナイトテイルは尻尾を股に挟みその場でカタカタと震えていた。それはドルゲルも例外ではなく全身から汗を吹き出し震えが止まらなかった。

(うぐっ・・・ま、まずい・・・や、奴等を・・・怒らせたか・・・だが今のうちに・・・)


「・・・さっきからきゃんきゃんと五月蝿いのぉ・・・使徒様との時間が台無しではないか・・・」

(あっ・・あぁ・・・し、しまった・・・怒りの余り忘れていたわ・・・)

イグは震えながら思い出す。ここはこの世界の護り手・・炎帝龍アグニシアの住まいだった事を・・・

恐る恐る振り向けばそこにはナイトテイルの首根っこを掴んだアグニシアとシルフェリア、クラシリア、グランベリアが怒りを露わにしていた・・・

エンペラー・ナインテイルは思わず紫色の眼球を見開き固まる。

「・・・め、冥界蛇よ・・こ、ここは地上と言ったな・・・ま、まさか・・・ここは・・り、龍峰山か・・?」

「え・・えぇ・・・そ、そうよ・・・私も・・忘れていたわ・・・目の前のあの方達は・・この世界の護り手・・古龍四柱様よ・・・」

イグは脂汗を垂らしながら人間サイズに戻りドルゲルがいる場所を見る。しかしそこにはドルゲルの姿は無くトンネルの入口から一瞬眩い光が漏れた。

(くっ・・ドルゲルめ・・どさくさに紛れて逃げたわね?!・・今の光・・・恐らく転移・・・でも遠くには行っていない筈!)

イグもどさくさに紛れて震えるナイトテイルの間をすり抜けドルゲルを追いトンネルの中へ消えて行った。


(・・・古龍四柱が・・・一箇所に?!い、一体・・何が起きている・・・クククッ・・だが・・・丁度いい・・・)

しかしエンペラー・ナインテイルは古龍四柱の力に抗うように魔力を漲らせ目を細める。

「・・古龍四柱・・こうして見るのは初めてだ・・・さすが創造神のペットと言ったところか・・・だが私は神界最強の神獣エンペラー・ナインテイル!神界で破滅のナインテイルと呼ばれたこの私の力!古龍と言えども遅れは取らぬ!!ここで私が最強であると証明して見せよう!!」

エンペラー・ナインテイルは牙を剥き出しにして古龍四柱を威嚇する。

「・・・くふふ・・たかだか狐ごときが我らに遅れを取らぬだと?自惚れもそこまで行ったらある意味最強だな・・・仕方あるまい・・・」

アグニシア達がエンペラー・ナインテイルの挑発に力を解放しようとしたその時・・背後から四柱を諌める様に強大な神力がその場を包み込む。

「はっ!!こ、この神力は・・・」

アグニシアが振り向くと指輪を外しながら地上に顔を出すミハエルの姿があった・・・

「アグニシアさん。こんな所で力を解放したら地上の人達が困るよ。」

「はっ!し、使徒様!!も、申し訳ありません!」

古龍四柱がミハエルの膨大な神力に圧倒され思わず跪く。

「うん。あの狐さんは僕が説得して見るよ!」

ミハエルはそう言うと三つ目の指輪を外しエンペラー・ナインテイルの前に進み出るのであった。
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