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第190話 ドルゲルの失策
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「ねえ?そんな所に隠れてないで出て来たら?」
「えっ?!」
突然ミハエルが立ち上がり部屋の入口に向かって声を掛ける。ライナードやカリン達もミハエルの言葉に動きを止めて入口に注目する。
(本気の敵意や悪意は無さそうだけど何者なんだろう・・・)
ミハエルはソファに座った辺りから大きな魔力を感じていた。
「お、俺達以外にここに来れるやつが居るのか?!」
「うん。何者かは分からないけど大きな魔力を持った人が居る・・・」
リベルト王子の問いかけに振り向かずにミハエルが答えると入口の奥から複数の足音が聞こえると長い黒髪の女性が姿を現すのであった。
「・・ちっ・・索敵に引っ掛からないように全員の気配を消していたのに・・何故だ・・くっ・・こうなったら仕方ない・・・」
「ドルゲル様。どうされたのですか?先程の声はアグニシア様なのですか?」
険しい表情で入口の光を見据えるドルゲルにレオガルドが近付いて来る。
「・・ふん。あれは違う・・・とにかくここに居る事がバレたんだ。出て行くしかない・・・行くぞ!」
「は、はい!!付いて行きます!!」
「おい!お前等!!入口を潜ったら俺をドルゲルと呼ぶな!俺の名前はルカだ!いいな?」
「えっ!?・・・わ、分かりました・・・」
ミラジリア達が違和感を覚えながら頷く。
(も、もう出たとこ勝負だ・・・よ、よもや殺される事はないだろう・・・だが・・イグには・・・顔が割れてるからな・・・)
レオガルド達を率いるようにドルゲルが歩き出す。そしてそっと階段の縁に赤い箱を置くと微かに震える膝を抑え一歩一歩入口へ向かう。するとドルゲルの髪が伸び髪色が黒に変わり身体付きまで変わっていく。
(な、なんと・・・姿が変わる魔法?!こんな魔法は見た事が無い・・・)
(は、はい。さすが使徒様です。)
レオガルド達はその様子をドルゲルの背後から眺めて息を飲みながら入口の光りの中へ進んでいくのであった。
入口を潜ったドルゲル達が火山の地下ではあり得ない光景に立ち尽くし唖然とする。
(明るい?!窓?!な、何だここは・・・ここが火山の地下なのか?!)
「す、素晴らしい・・・」
「別世界みたい・・ここがアグニシア様のお部屋・・・」
「何者だ?場合によっては容赦せぬぞ?」
いつの間にかエプロン姿のアグニシアが立ち尽くすドルゲル達の前に魔力を滲ませ立ち塞がった。
(・・・こいつが・・炎帝龍アグニシア・・確かに抑えているがとてつもない魔力だ・・・だが何故エプロン姿なんだ・・・)
ドルゲル達がはっと我に返り一斉に跪いた。そして先頭のドルゲルが声を変えて口を開く。
「私はルカと申します。炎帝龍アグニシア様を崇める者でございます。ここまで十数年の時を重ねやっとここまで辿り着いたのです。お目に掛かれて感激至極で御座います。」
(ど、どうだ・・バレてないよな・・・そ、それより・・あの3人は・・・まさか・・残りの古龍か・・・どうなってやがる・・・)
(あれは・・赤龍教か・・・だが何故アグニシアの名を・・・)
セイルは先頭で跪くルカと名乗る女に目をやる。イグも同じくを細めて跪くルカを見ていた。
(・・・なぜ人間が炎帝龍アグニシアの名前を知っている?この地上に古龍の名を知る者は居ない筈・・・何者だ・・・この女・・)
そしてもう一人ミハエルも首を傾げていた。
(この人・・・もの凄く強い・・ん?あれ?
・・・この人名前が・・・)
「ふん。本来ならば貴様等と話す事など無いが今日は使徒様の手前だ。気分が良い。これを我と思い崇める事を許す。」
アグニシアは懐から掌サイズの真っ赤な玉をルカに差し出した。ルカは赤い玉を手に取ると目を見開く。
(こ、これは・・・微かだが神界の力が宿っている。な、なるほど古龍は・・神界から召喚された存在だったな・・・くく・・思わぬ収穫だ・・・となれば・・退散だ・・)
(おぉ・・やはりドルゲル様は使徒さまであったか!!わ、我らは認められたのだ!)
レオガルドは盛大に勘違いしたまま前に進み出た。
「アグニシア様!私は獣人族レオガルドと申します!恐れながらアグニシア様のお力をお貸し願いたく参上いたしました。」
(あっ!馬鹿!余計な事を!・・・まずい!!)
「・・・なに?!この我に力を貸せだと?!使徒様の手前大目に見ておれば調子に乗りおって!!」
ドルゲルが立ちあがろうとした瞬間、アグニシアの魔力が身体の自由を奪う!
「かぶっ!!」
「うぐぅぅ・・・」
「あううっ・・・」
アグニシアが魔力を滲ませレオガルドを見下ろすとレオガルド達が床に張り付きドルゲルさえも動けずにいた。
(こ、これが古龍本体の力か・・・)
「アグニシアさん!!やめて!!」
「あっ・・は、はい!!使徒様!」
思わず声を上げたミハエルの声にアグニシア一瞬で魔力を収めると肩の力を抜く。そしてミハエルはソファが降りるとアグニシアの隣に立った。
(くっ・・・このガキ・・ま、間近で見ると分かる・・・この化け物め・・・)
(な、何?!あ、あの子供も使徒様?!な、何と言う事だ・・・使徒様は全て人間という事か・・・わ、私のして来た事は・・・)
レオガルドは力無く項垂れる。
するとアグニシアの横に立ったミハエルが不意に口を開く。
「ねえ。ドルゲルさんはここに何しに来たの?」
「それは神界の・・・って・・・あっ!」
(こ、こいつ!俺を鑑定しやがった!!用心して隠してしたのに・・・おれの隠蔽を破ったのか?!・・くそ・・化け物め・・)
ドルゲルは慌て口を手で塞ぐが既に遅かった・・・イグがいち早く反応して立ち上がる。
「な、何ですってぇぇ!!ミハエル殿!!今、この女をドルゲルと言いましたか?!」
「えっ・・うん。もしかして知り合い?」
「おのれぇぇぇ!!!」
「ま、待て!!」
ドルゲルはイグの勢いと殺気で尻餅を付いて後退る。イグは怒りの余り蛇特有の蛇眼になりドルゲルの前で仁王立ちで見下ろした。
「こいつは私の可愛い娘達を誘拐しこの私に屈辱を与えた上にこの地上に調査と言って私を送り込んだ張本人・・元暗黒神ドルゲル。クズがゴミを着ているような奴よ。お前だけは絶対に許さない・・・覚悟しろ!!」
イグは青黒いオーラを立ち昇らせいつの間にか下半身は極太の蛇の尻尾に変化しドルゲルに狙いを付ける。イグの尻尾の先には幾つもの鋭い棘が生えておりその一本一本に滴るほどの毒に溢れていた。
いつの間にか変身が解けたドルゲルはレオガルド達を押し退け背後の壁に張り付いた。
「あ、あわ・・わ、分かった・・お、落ち着け・・・お、おれが悪かった・・・もう俺は神界の力は使えないんだそれでお前の攻撃を受けたら死ぬだろうが!!」
「黙れ!ドルゲル!お前は勘違いをしている。私はお前を殺そうとしているんだ!!それ以外は・・・無い!」
イグのオーラが益々大きく立ち昇る・・・
(まずい!まずい!まずい!!くそっ!初対面のフリして初めましての握手で神界の力を掠め取る作戦が・・・あのガキのせいで・・・くそ!ここは早くこの宝玉を持ってとんずらしないと・・・)
ドルゲルは横目で部屋の入口を見ながら隙を窺うのであった・・・
「えっ?!」
突然ミハエルが立ち上がり部屋の入口に向かって声を掛ける。ライナードやカリン達もミハエルの言葉に動きを止めて入口に注目する。
(本気の敵意や悪意は無さそうだけど何者なんだろう・・・)
ミハエルはソファに座った辺りから大きな魔力を感じていた。
「お、俺達以外にここに来れるやつが居るのか?!」
「うん。何者かは分からないけど大きな魔力を持った人が居る・・・」
リベルト王子の問いかけに振り向かずにミハエルが答えると入口の奥から複数の足音が聞こえると長い黒髪の女性が姿を現すのであった。
「・・ちっ・・索敵に引っ掛からないように全員の気配を消していたのに・・何故だ・・くっ・・こうなったら仕方ない・・・」
「ドルゲル様。どうされたのですか?先程の声はアグニシア様なのですか?」
険しい表情で入口の光を見据えるドルゲルにレオガルドが近付いて来る。
「・・ふん。あれは違う・・・とにかくここに居る事がバレたんだ。出て行くしかない・・・行くぞ!」
「は、はい!!付いて行きます!!」
「おい!お前等!!入口を潜ったら俺をドルゲルと呼ぶな!俺の名前はルカだ!いいな?」
「えっ!?・・・わ、分かりました・・・」
ミラジリア達が違和感を覚えながら頷く。
(も、もう出たとこ勝負だ・・・よ、よもや殺される事はないだろう・・・だが・・イグには・・・顔が割れてるからな・・・)
レオガルド達を率いるようにドルゲルが歩き出す。そしてそっと階段の縁に赤い箱を置くと微かに震える膝を抑え一歩一歩入口へ向かう。するとドルゲルの髪が伸び髪色が黒に変わり身体付きまで変わっていく。
(な、なんと・・・姿が変わる魔法?!こんな魔法は見た事が無い・・・)
(は、はい。さすが使徒様です。)
レオガルド達はその様子をドルゲルの背後から眺めて息を飲みながら入口の光りの中へ進んでいくのであった。
入口を潜ったドルゲル達が火山の地下ではあり得ない光景に立ち尽くし唖然とする。
(明るい?!窓?!な、何だここは・・・ここが火山の地下なのか?!)
「す、素晴らしい・・・」
「別世界みたい・・ここがアグニシア様のお部屋・・・」
「何者だ?場合によっては容赦せぬぞ?」
いつの間にかエプロン姿のアグニシアが立ち尽くすドルゲル達の前に魔力を滲ませ立ち塞がった。
(・・・こいつが・・炎帝龍アグニシア・・確かに抑えているがとてつもない魔力だ・・・だが何故エプロン姿なんだ・・・)
ドルゲル達がはっと我に返り一斉に跪いた。そして先頭のドルゲルが声を変えて口を開く。
「私はルカと申します。炎帝龍アグニシア様を崇める者でございます。ここまで十数年の時を重ねやっとここまで辿り着いたのです。お目に掛かれて感激至極で御座います。」
(ど、どうだ・・バレてないよな・・・そ、それより・・あの3人は・・・まさか・・残りの古龍か・・・どうなってやがる・・・)
(あれは・・赤龍教か・・・だが何故アグニシアの名を・・・)
セイルは先頭で跪くルカと名乗る女に目をやる。イグも同じくを細めて跪くルカを見ていた。
(・・・なぜ人間が炎帝龍アグニシアの名前を知っている?この地上に古龍の名を知る者は居ない筈・・・何者だ・・・この女・・)
そしてもう一人ミハエルも首を傾げていた。
(この人・・・もの凄く強い・・ん?あれ?
・・・この人名前が・・・)
「ふん。本来ならば貴様等と話す事など無いが今日は使徒様の手前だ。気分が良い。これを我と思い崇める事を許す。」
アグニシアは懐から掌サイズの真っ赤な玉をルカに差し出した。ルカは赤い玉を手に取ると目を見開く。
(こ、これは・・・微かだが神界の力が宿っている。な、なるほど古龍は・・神界から召喚された存在だったな・・・くく・・思わぬ収穫だ・・・となれば・・退散だ・・)
(おぉ・・やはりドルゲル様は使徒さまであったか!!わ、我らは認められたのだ!)
レオガルドは盛大に勘違いしたまま前に進み出た。
「アグニシア様!私は獣人族レオガルドと申します!恐れながらアグニシア様のお力をお貸し願いたく参上いたしました。」
(あっ!馬鹿!余計な事を!・・・まずい!!)
「・・・なに?!この我に力を貸せだと?!使徒様の手前大目に見ておれば調子に乗りおって!!」
ドルゲルが立ちあがろうとした瞬間、アグニシアの魔力が身体の自由を奪う!
「かぶっ!!」
「うぐぅぅ・・・」
「あううっ・・・」
アグニシアが魔力を滲ませレオガルドを見下ろすとレオガルド達が床に張り付きドルゲルさえも動けずにいた。
(こ、これが古龍本体の力か・・・)
「アグニシアさん!!やめて!!」
「あっ・・は、はい!!使徒様!」
思わず声を上げたミハエルの声にアグニシア一瞬で魔力を収めると肩の力を抜く。そしてミハエルはソファが降りるとアグニシアの隣に立った。
(くっ・・・このガキ・・ま、間近で見ると分かる・・・この化け物め・・・)
(な、何?!あ、あの子供も使徒様?!な、何と言う事だ・・・使徒様は全て人間という事か・・・わ、私のして来た事は・・・)
レオガルドは力無く項垂れる。
するとアグニシアの横に立ったミハエルが不意に口を開く。
「ねえ。ドルゲルさんはここに何しに来たの?」
「それは神界の・・・って・・・あっ!」
(こ、こいつ!俺を鑑定しやがった!!用心して隠してしたのに・・・おれの隠蔽を破ったのか?!・・くそ・・化け物め・・)
ドルゲルは慌て口を手で塞ぐが既に遅かった・・・イグがいち早く反応して立ち上がる。
「な、何ですってぇぇ!!ミハエル殿!!今、この女をドルゲルと言いましたか?!」
「えっ・・うん。もしかして知り合い?」
「おのれぇぇぇ!!!」
「ま、待て!!」
ドルゲルはイグの勢いと殺気で尻餅を付いて後退る。イグは怒りの余り蛇特有の蛇眼になりドルゲルの前で仁王立ちで見下ろした。
「こいつは私の可愛い娘達を誘拐しこの私に屈辱を与えた上にこの地上に調査と言って私を送り込んだ張本人・・元暗黒神ドルゲル。クズがゴミを着ているような奴よ。お前だけは絶対に許さない・・・覚悟しろ!!」
イグは青黒いオーラを立ち昇らせいつの間にか下半身は極太の蛇の尻尾に変化しドルゲルに狙いを付ける。イグの尻尾の先には幾つもの鋭い棘が生えておりその一本一本に滴るほどの毒に溢れていた。
いつの間にか変身が解けたドルゲルはレオガルド達を押し退け背後の壁に張り付いた。
「あ、あわ・・わ、分かった・・お、落ち着け・・・お、おれが悪かった・・・もう俺は神界の力は使えないんだそれでお前の攻撃を受けたら死ぬだろうが!!」
「黙れ!ドルゲル!お前は勘違いをしている。私はお前を殺そうとしているんだ!!それ以外は・・・無い!」
イグのオーラが益々大きく立ち昇る・・・
(まずい!まずい!まずい!!くそっ!初対面のフリして初めましての握手で神界の力を掠め取る作戦が・・・あのガキのせいで・・・くそ!ここは早くこの宝玉を持ってとんずらしないと・・・)
ドルゲルは横目で部屋の入口を見ながら隙を窺うのであった・・・
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