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第159話 復活

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門兵が皇帝陛下のかい摘んだ歴史を聞いて目の前のドラガベルを見上げていた・・・

「〈戒めの間〉・・ですか・・・」

「そうだ。ドルビナ帝国皇帝に代々受け継がれているのがこの〈戒めの間〉だ。過去の過ちをこの魔人ドラガベルの前で思い出し自分を見つめ直す為の部屋なのだ・・・」

ドルビナ皇帝はドラガベルを見上げ目を閉じる。頭に血が昇り勢いでここまで来てしまった自分を省みる。自分の言動を思い出し冷静に見つめ直す。するとドルビナ皇帝は憑き物が落ちたような顔になり深く息を吐き肩を落とした。

「ふん・・・こんな化け物を解き放ったら真っ先にこの私が殺されるわ・・・奴等の力を甘く見て強引な手段を使った報いか・・・それにしても・・・一国を相手に引かぬとは・・・無茶苦茶な奴らだ・・・さて王宮が無事なら良いが・・・」

ドルビナ皇帝が思い直し出口へと向き返ったその時!激しい揺れと轟音が部屋中に響いた・・・

ずごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

突然の出来事に門兵も皇帝も地べたに手をつき身体を支える!!

「な、何だぁぁぁ!!何が起きている!!奴等か?!一体何をした?!」

「へ、陛下!!何か変です!!この暑さは異常です!!」

門兵が見上げると真っ赤になった天井が赤黒い雫を落とし今にも溶けて落ちて来そうな程膨らんでいた・・・

「うわぁぁぁぁ!!陛下ぁぁぁぁ!!直ぐに部屋を出てください!!!天井が焼け落ちます!!!!」

「んがぁぁ!!い、いかん!!急げぇぇぇぇ!!!」

門兵が叫ぶと同時にドルビナ皇帝も叫びながら天井を見上げて一目散に出口へと滑り込んだ!

ドバタンッ!!!

門兵が扉を全力で閉めると肩で息をしながらしゃがみ込む・・・

「はぁ、はぁ、はぁ・・・い、一体何事だ・・・奴等め・・・何をしたんだ・・・ん?」

狭い通路で皇帝陛下と門兵が肩で息をしていたが違和感に気付く・・・来る時には魔灯が照らす薄暗い通路だったが眩しい程の光が差し込んでいた・・そして暖かい風が全身を包み込む・・・門兵が〈戒めの間〉の扉から数メートル先の眩い光に手をかざすと澄み切った青空が目に飛び込んで来た・・・

「へ、陛下・・・そ、空が・・空が・・」

「むっ?!な、な、何だ・・・何故空が見える?!どうなっておるんだ!?ここは王宮の真下だぞ?!・・・はっ!!お、王宮は!?王宮は何処へ行ったんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

ドルビナ皇帝の叫び声が青空に響き渡った・・・そしてその叫びを打ち消すかのように扉の向こうからも周りの空気を震えさせる程の雄叫びが響いた・・・

「ぐうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」

ドルビナ皇帝と門兵が同時に扉に振り向く!

「あ、あの・・・陛下・・部屋の中に私達以外に誰か居ましたか・・・?」

すると皇帝陛下がゆっくりと首を横に振る・・・

「・・・いや・・おらぬはずだ・・・居たとするなら・・・まさか・・・」

ギギィ・・・

ドルビナ皇帝がそっと扉を開き中を覗くと溶け落ちた天井から陽の光を浴びて悠然と立ち尽くす魔人ドラガベルの後ろ姿があった。



アンリルが放った〈シャイニング・グランド・ゲート・サンバースト〉の凶悪な威力に数秒でカトプレパスの障壁が悲鳴を上げる。

(ア、アンリル殿・・・も、もう限界・・)

(んんっ!もう?!)

カトプレパスの切羽詰まった念話にアンリルが魔法を解除すると黄金の門が周りの景色に溶け込むように消えた。そしてアンリルが放った灼熱の閃光は王宮を飲み込みカトプレパスの虹の回廊に導かれて緩やかに空へと消えて行くのだった。

「ぶはぁぁぁぁぁ!!!危なかったぁぁぁ!あと1秒遅かったら帝都が消えてましたよぉぉぉ!!!」

カトプレパスが少年の姿になり大の字で倒れ込み肩で息をしていた。

「もう!!大袈裟ね!でも気持ちよかったぁぁ!!一回使ってみたかったのよねぇーー!!」

「あー・・・よ、予想はしてたが・・これ程とはな・・・皇帝陛下が見たら膝から崩れ落ちるぞ・・・」

「ははっ・・・本当に凄いの一言だよね・・・所で地下に逃げ込んだ皇帝陛下は大丈夫かな・・?」

(はは・・と、とんでもない威力だ・・・カトプレパスの全力の障壁でも数秒しか持たないとは・・・フェニックスの私でも・・アレを喰らったら・・・一瞬で冥界行きだな・・・)

アンリルが微笑みながら満足げに王宮があった場所を見ればそこには王宮の姿は当然のように跡形も無く大地を抉り火山が噴火したかのような赤黒い流体が蠢く危険地帯と化していた・・・

眩い光に目を覆っていた帝国魔法隊隊長のフラベルトが今の現状を確認すべくその目を見開いた・・・

「な・・・無い・・お、お、王宮が・・・跡形も無く・・消えた・・・そ、それも・・・一瞬で・・・」

今まで目の前にあった巨大な建造物が一瞬で蒸発しアンリルの魔法の威力を物語っていた。フラベルトを始め部下達も戦意を無くしてペタンと腰を抜かす者、唖然として立尽す者、膝を付き震える者と様々であった。しかしドルビナ帝国の重臣や側近達は違った・・

「お、王宮が・・こ、こんな人間が居てたまるか・・・危険過ぎる・・・」

「此奴らを野に放てばドルビナ帝国の脅威になる事は間違いないであろう・・・いや、世界の脅威になり得るぞ・・・」

「だ、だが・・・こいつらを利用出来れば・・・」

「うむ。奴等をこの帝都から出してはならん!あれだけの魔法を放った後だ・・拘束するなら今しかない!!皆に通達しろ・・・」

「無駄ですよ!!」

「何をぉ?!」

重臣の1人セライド・ムーラ侯爵が声がする方へ振り向けばそこにはフラベルト隊長が呆れ顔で早足で歩み寄ってきた。フラベルト隊長は重臣達の恐ろしい会話が耳に入り慌てて来たのであった。

「一体あんた達は何を言っているのですか?!奴等を拘束?!今まで何を見て来たのですか?!あいつらを拘束できる奴なんてこの帝都に居やしない!!それに先に喧嘩を売ったのはこちら側だ!!もし奴らに手を出したら今度こそこの帝都が消滅するぞ!!それと何か勘違いしているようだから教えてやる!奴等はまだ本気じゃない!あれは周りの事を気遣って手加減したんだ!奴等の力はまだまだこんなもんじゃない!!馬鹿な真似はよしてください!」

「くっ!馬鹿だと?!隊長ごときが我らに口答えするとは!!貴様は黙って言う事を聞いていれば良い!!さっさとあいつらを拘束しろ!!でなければ首だ!!」

「上等だ!!首にするならすれば良い!!奴等を拘束したければ自分でやれ!!こんな安い給金で命掛けれるかぁ!!こっちからやめてやらぁ!!ぺっ!!」

ばさぁっ!!

フラベルトは帝国から支給された紋章入りのマントを地面に叩きつけ唾を吐き掛けた。

「ぬぐっ!!貴様ぁぁ・・・」

ムーラ侯爵が怒りを爆発させようとしたその時であった。周りがざわつき皆が空を指差し見上げていた・・・

「お、おい!!何だあれは!!何か居るぞ!!」

「何だ・・・アレは・・・」

皆の目線の先には大きなドラゴンのような羽根を広げた筋骨隆々の褐色の漢が悠然と下界を見下ろしている姿であった。

「なっ?!あ、あれは!!ま、まさか?!・・・魔人ドラガベル・・・」

セライド・ムーラ侯爵が見覚えのある姿に空を見上げ絶句するのであった・・・
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