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第148話 闇光大戦
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ガイン達はリーゲルト達と合流し馬車でドルビナ帝国へと移動していた。アンリルがこのままフェニックスに乗って行こうと提案したがガインが騒ぎになる事が面倒だと言うので大人しく馬車で移動する事になったのだった。
アンリルはメモ帳を片手に馬車に揺られながらメルベリアの話を聞いていた。
「・・・妾は・・不毛な戦いを止める為の交渉の場で殺されたのじゃ・・その交渉の場自体が人間達の罠だったのじゃ。魔力を封じる首輪を付けられなす術がなかった。この世界で真に恐ろしいのは人間なのじゃ。妾達は静かに暮らしておったのじゃ。しかし人間達は魔物がいるのは魔族のせいだと勝手な妄想で攻めて来たのじゃ。」
アンリル達はメルベリアの言葉に衝撃を受けた。それは魔物の存在に関して同じ考えだったからだった。
「すまない・・メルベリア・・・ま、魔物が増えるのは魔族とは関係ないのか?」
ガインの驚きを隠せない声にメルベリアが静かに頷く。
「主様・・本当なのじゃ。人間族、魔族、獣人族、魔物族・・・そしてこの世に生きる種族は・・元よりこの世界に存在しているのじゃ。皆、繁殖し数を増やして行く。妾達魔族が魔物を増やしている訳ではないのじゃ。確かに魔族と魔物は相性が良い。知能が高い魔物は使い魔として使う。しかし人間族も獣族と相性が良い。可愛がり愛でる。時には繁殖させ生きる糧とするであろう?妾達と何等変わりはないのじゃ・・・」
メルベリアの言葉にアンリル達は言葉が詰まり馬車の中は沈黙に支配された。今まで魔族と聞いただけで恐怖し悪と決めつけて来た自分達は何だったのかと馬鹿らしく思えたのだった。
「メルベリアさん。ごめんなさい。私はいつの間にか魔族と敵対するように間違った知識を植え付けられていたのね・・でもどうして・・・」
サリアがその答えを知りたくてメルベリアの顔を真っ直ぐ見る。するとメルベリアが少し落胆したように肩を落とす。
「やはりそうか・・・人間には人間側の事しか伝わっておらぬのだな・・仕方ない事か・・ふむ。妾も実際には見ておらぬが・・事の発端は『闇光大戦』と言われておるのじゃ。」
「「「えっ?!」」」
アンリル達が弾かれたように顔をあげた。何度も聞いた言葉。呼び名は変わっても想像できる呼び名であった。
「・・それは人間族で言う『闇と光の物語』ね?」
アンリルの目が輝いた。自分の常識を打ち破る事実。知らなかった物事の裏側。新しい知識に胸が躍った。
「そうじゃ。約1200年前に起こったあの大戦が原因なのじゃ。あの大戦で人間であるイルバスが魔族を唆し光のメイシス軍と戦わせたのじゃ。そのせいで人間は魔族に強く敵意を持ち魔族も人間と敵対するようになったのじゃ・・未だに魔族を懐柔した人間であるイルバスを疑問視する魔族が絶えん。妾も何故人間があれ程の魔族を従えたのか分からんのじゃ・・・」
(そうか・・暗黒神ルビラスの介入は魔族側も知らない事なのね・・・それなら・・」
「ふむ。分からぬ事を考えても仕方ない。話を戻そうかのう・・・」
「いえ。メルベリア。興味深い話を聞かせてくれた御礼にあなたの疑問に答えるわ!」
「な、何じゃと?それはどう言う事じゃ?」
「何故、人間であるイルバスが魔族を懐柔できたか教えてあげるって言ってるのよ。」
突然のアンリルの言葉にメルベリアの眉が上がる。
「何じゃと?!何百年も生きる妾達魔族が知らぬ事を人間のお主が知っていると言うのか?!お主はあの大戦の何を知っておると言うのじゃ!?」
「ふふふ。落ち着いて。今度はあなたが驚く番よ・・・教えてあげるわ。『闇光大戦』の本当の姿を・・・」
アンリルは『闇と光の物語』の裏側をメルベリアに話して聞かせた。暗黒神ルビラスと大天使メリエルの存在。この世界に集められた光の使徒の存在。そしてその理由を。メルベリアはアンリルの語る真実に始終目を丸くして耳を傾けていた・・・
「な、何と言う事じゃ・・・魔族と人間族は神々の争いに巻き込まれたのか・・・そして大勢の同胞達が命を散らしたと言うのか・・何と理不尽な事じゃ・・・更に元凶である暗黒神ルビラスの復活・・・また同じ事が繰り返されるのか・・・」
メルベリアは思わぬ事実に心の整理が付かずに少し俯き一点を見つめていた。するとアンリルがメルベリアの手に手を置いた。
「メルベリア。心配しなくてもいいわ。暗黒神ルビラスはもう神じゃない。私達光の使徒がからなず止めてみせるわ!その為にも魔族である貴方にも協力して欲しいの。」
メルベリアは当然のように頷く。
「・・・もちろんじゃ。妾は主様の剣となると決めたのじゃ。この身も心も捧げる覚悟じゃ・・・」
「お、おい!!あまり引っ付くな!!」
メルベリアがガインの腕に絡み付き光悦な表情浮かべるとガインの顔が真っ赤になり明後日の方に目を泳がせる・・
その光景をアンリルとサリアがジト目でその様子を眺めるとアンリルがニヤリと笑う。
「ふふっ・・ガイン良かったじゃない!10年前の失恋からご無沙汰よね?存分に楽しんだら良いじゃないの?」
「そ、そんな事をここで言うな!!お、俺は・・・」
するとメルベリアは吐息がかかる程顔を寄せガインの太腿に手を這わせる。
「主様ぁぁ・・・そう言う事なら・・あ・と・で・・・うふふ・・・」
「う・・うおっほん!な、何を言っているんだ・・・」
ガインはメルベリアの胸に挟まれた腕に目を落とすと緩む顔を堪えるのであった・・・
アンリルはメモ帳を片手に馬車に揺られながらメルベリアの話を聞いていた。
「・・・妾は・・不毛な戦いを止める為の交渉の場で殺されたのじゃ・・その交渉の場自体が人間達の罠だったのじゃ。魔力を封じる首輪を付けられなす術がなかった。この世界で真に恐ろしいのは人間なのじゃ。妾達は静かに暮らしておったのじゃ。しかし人間達は魔物がいるのは魔族のせいだと勝手な妄想で攻めて来たのじゃ。」
アンリル達はメルベリアの言葉に衝撃を受けた。それは魔物の存在に関して同じ考えだったからだった。
「すまない・・メルベリア・・・ま、魔物が増えるのは魔族とは関係ないのか?」
ガインの驚きを隠せない声にメルベリアが静かに頷く。
「主様・・本当なのじゃ。人間族、魔族、獣人族、魔物族・・・そしてこの世に生きる種族は・・元よりこの世界に存在しているのじゃ。皆、繁殖し数を増やして行く。妾達魔族が魔物を増やしている訳ではないのじゃ。確かに魔族と魔物は相性が良い。知能が高い魔物は使い魔として使う。しかし人間族も獣族と相性が良い。可愛がり愛でる。時には繁殖させ生きる糧とするであろう?妾達と何等変わりはないのじゃ・・・」
メルベリアの言葉にアンリル達は言葉が詰まり馬車の中は沈黙に支配された。今まで魔族と聞いただけで恐怖し悪と決めつけて来た自分達は何だったのかと馬鹿らしく思えたのだった。
「メルベリアさん。ごめんなさい。私はいつの間にか魔族と敵対するように間違った知識を植え付けられていたのね・・でもどうして・・・」
サリアがその答えを知りたくてメルベリアの顔を真っ直ぐ見る。するとメルベリアが少し落胆したように肩を落とす。
「やはりそうか・・・人間には人間側の事しか伝わっておらぬのだな・・仕方ない事か・・ふむ。妾も実際には見ておらぬが・・事の発端は『闇光大戦』と言われておるのじゃ。」
「「「えっ?!」」」
アンリル達が弾かれたように顔をあげた。何度も聞いた言葉。呼び名は変わっても想像できる呼び名であった。
「・・それは人間族で言う『闇と光の物語』ね?」
アンリルの目が輝いた。自分の常識を打ち破る事実。知らなかった物事の裏側。新しい知識に胸が躍った。
「そうじゃ。約1200年前に起こったあの大戦が原因なのじゃ。あの大戦で人間であるイルバスが魔族を唆し光のメイシス軍と戦わせたのじゃ。そのせいで人間は魔族に強く敵意を持ち魔族も人間と敵対するようになったのじゃ・・未だに魔族を懐柔した人間であるイルバスを疑問視する魔族が絶えん。妾も何故人間があれ程の魔族を従えたのか分からんのじゃ・・・」
(そうか・・暗黒神ルビラスの介入は魔族側も知らない事なのね・・・それなら・・」
「ふむ。分からぬ事を考えても仕方ない。話を戻そうかのう・・・」
「いえ。メルベリア。興味深い話を聞かせてくれた御礼にあなたの疑問に答えるわ!」
「な、何じゃと?それはどう言う事じゃ?」
「何故、人間であるイルバスが魔族を懐柔できたか教えてあげるって言ってるのよ。」
突然のアンリルの言葉にメルベリアの眉が上がる。
「何じゃと?!何百年も生きる妾達魔族が知らぬ事を人間のお主が知っていると言うのか?!お主はあの大戦の何を知っておると言うのじゃ!?」
「ふふふ。落ち着いて。今度はあなたが驚く番よ・・・教えてあげるわ。『闇光大戦』の本当の姿を・・・」
アンリルは『闇と光の物語』の裏側をメルベリアに話して聞かせた。暗黒神ルビラスと大天使メリエルの存在。この世界に集められた光の使徒の存在。そしてその理由を。メルベリアはアンリルの語る真実に始終目を丸くして耳を傾けていた・・・
「な、何と言う事じゃ・・・魔族と人間族は神々の争いに巻き込まれたのか・・・そして大勢の同胞達が命を散らしたと言うのか・・何と理不尽な事じゃ・・・更に元凶である暗黒神ルビラスの復活・・・また同じ事が繰り返されるのか・・・」
メルベリアは思わぬ事実に心の整理が付かずに少し俯き一点を見つめていた。するとアンリルがメルベリアの手に手を置いた。
「メルベリア。心配しなくてもいいわ。暗黒神ルビラスはもう神じゃない。私達光の使徒がからなず止めてみせるわ!その為にも魔族である貴方にも協力して欲しいの。」
メルベリアは当然のように頷く。
「・・・もちろんじゃ。妾は主様の剣となると決めたのじゃ。この身も心も捧げる覚悟じゃ・・・」
「お、おい!!あまり引っ付くな!!」
メルベリアがガインの腕に絡み付き光悦な表情浮かべるとガインの顔が真っ赤になり明後日の方に目を泳がせる・・
その光景をアンリルとサリアがジト目でその様子を眺めるとアンリルがニヤリと笑う。
「ふふっ・・ガイン良かったじゃない!10年前の失恋からご無沙汰よね?存分に楽しんだら良いじゃないの?」
「そ、そんな事をここで言うな!!お、俺は・・・」
するとメルベリアは吐息がかかる程顔を寄せガインの太腿に手を這わせる。
「主様ぁぁ・・・そう言う事なら・・あ・と・で・・・うふふ・・・」
「う・・うおっほん!な、何を言っているんだ・・・」
ガインはメルベリアの胸に挟まれた腕に目を落とすと緩む顔を堪えるのであった・・・
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