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第114話 帝国騎士団の末路 3
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メルト村から怪我人を運び出した男達は身体を圧迫している鎧を脱がせて回復薬を飲ませようと横たわる男達に声を掛けていた。
「団長!!レバイト団長!大丈夫ですか?!」
部下の男がレバイトに声を掛け続けるとレバイトの瞼が震えゆっくりと目を開けた。
「うっ・・げほっ!ごほっ!」
「た、団長!!早くこれを飲んでください!!」
部下がレバイトの開いた口に少しずつ回復薬を流し込むとゆっくりと喉が動いた。すると真っ青だった顔に赤みが差して呼吸も安定してきた。
そしてレバイトはゆっくりと上半身を起こして座り込んだ。
「痛っ!・・・ち、ちくしょう・・ひ、酷い目にあったぜ・・・ふん・・しかし馬鹿な奴等だ・・俺達を生かして帰すとはな・・・この屈辱は必ず晴らしてやるぞ!」
レバイトはまだ痛みの残る身体をぎこちなく動かしてふらふらと立ち上がり部下達の前に立つ。
「お、お前等!一度帝国に戻り傷を癒やして出直すぞ!!そして全軍を持ってこの村を殲滅するんだ!!すぐにでも出発だ!!」
「え・・あ・・は、はい・・」
しかし部下達はいつものように腹の底から返事が出来なかった。それもそのはずである。メルト村の圧倒的な力の差を見せつけられ、更に村を包囲していた100人の仲間が跡形もなく消されたのである。
部下達はレバイトの意気込みを他所に完全に心が折られていた。部下達は次にこの村に手を出せばどうなるかと想像すると心と身体が重くなる思いであった・・・。
生き残った帝国騎士団はレバイトを先頭に出発し馬が歩く振動でも痛む身体を庇いながらメルト村の西の森へ入って行った。
そしてレバイト達が1時間ほど森を進んだ所であった・・・何処からともなく美しい声が森に響くのであった。
ガインは厳しい目付きで村の入り口から必死の形相で男達を連れ出している様子を眺めていた。すると最上級精霊エントが目の前に立ち軽く頭を下げる。
「村長様。ミハエル様から村長様のお願いを1つ聞いて欲しいと伺っております。何なりとお申し付けください。」
「あぁ。・・聞いてくれ。・・恐らく・・いや、必ずあいつ等はまたメルト村を襲いにやって来る。だがそれを分かってて逃したのは例え最低最悪の悪党だろうがあれだけの人間を子供達の前で殺す訳にはいかんのだ。それにそんな事を村の人間にさせる訳にもいかん。手を汚すのは俺だけで良いんだ。だから・・・」
「村長様。」
「ん?」
ガインが話を続けようとするとエントがそれを優しく遮った。
「私はそれ以上は聞かない事に致します。メルト村の村長様の願いは子供達と村を守る事と心得ました。そして私達がこれからする事は私達精霊が主様の住まう村の為に勝手にする事です。それに・・・私達は最初から・・あの者達を許すつもりはありません。」
エントは目を細め殺気を込めて男達を眺める。そしてガインに微笑み軽く首を傾げる。
「村長様。あなたのような優しい人間がいるこの村を私達は大好きなんです。ですのであなたこそ手を汚してはいけません。・・・それでは私達は自分の思う事をしてきます。」
話を聞いていたジン、ベヒモス、クラーケンも『任せとけ!』と言わんばかりに頷きその場から消えるのであった。
「・・うぅっ・・くっ・・お、恩に着る・・ありがとう・・・」
ガインは唇を噛み締めエントの優しい言葉と笑顔に込み上げるものを堪える事が出来ずに空を仰いだ。それでも止めどなく溢れる涙が頬を伝うのであった。
「ふふふ・・・村長様のご慈悲を踏み躙る愚か者達よ・・・」
「我らの主様の住まう村を襲って無事に帰れると思っているのか?」
「このクズ共が!!主様が許しても我らが許さん!!」
「さあ!これからあなた達はこの森の生贄となるのです!!せめてお前達が殺めた者達に懺悔なさい!死んでからしか役に立たない愚か者達よ!!」
最上級精霊達の声が森に響き渡ると森の木々達がざわつき始めた。
帝国騎士団の男達は立ち止まり森に響く声とざわつく森の中の無数の気配に怯えて辺りをキョロキョロと見渡していた。すると男達の周りに段々と光が集まり出し微かに声が聞こえて来た。
(許さない・・・)
(主様の村を襲った奴許さない・・・)
(・・死ねばいい・・)
(森の養分になれ・・)
(・・主様の敵・・生かしておかない・・)
「ひぃぃぃ!!!た、助けて!!お願いだぁぁぁぁぁ!!」
「お、お願いだぁぁぁぁ!!も、もうここには来ない!!や、約束する!!だ、だから!だからぁぁぁぁ!!!」
「た、助けて・・・助けて・・・助けて・・助けて・・・助けて・・・」
部下達は馬から転げ落ち地面に頭を擦り付けながら震えていた。
「お前等ぁぁぁ!!何をしている!!帝国騎士団がビクビクするなぁぁぁ!!立てぇぇ!立って戦えぇぇぇ!!」
レバイトは自分を鼓舞するかのように部下を怒鳴りつける。レバイトは勢いよく森を見上げて言葉を詰まらせた。
「なっ・・に?!」
レバイトの目に飛び込んで来たのは四人の最上級精霊を頂点としてミハエルの力で上級精霊となった数千を数える精霊達が殺気を込めて帝国騎士団を見下ろしている姿であった。更に周りの木々達がガサガサと音を立ててレバイト達を取り囲むのだった。
(な、何だ・・こ、この数は・・と、とにかく・・こ、これは駄目だ・・・何とかして切り抜けねば・・)
絶望と恐怖に狩られたレバイトはそっと馬から降りると両膝を付いて精霊達を見上げた。
「あ・・・う・・・ま、待ってくれ・・・お、俺達が・・わ、悪かった・・・もう、ここには来ない・・・も、もちろん村にも手は出さない!そ、それに謝罪もしよう!や、約束する!だ、だから・・・見逃してくれ!!!頼む!!この通りだ!!」
レバイトは恥も外聞もかなぐり捨てて地面に頭を擦り付けた。しかし精霊達はそんなレバイトの姿を更に冷たい目で見下ろしていた。
「ふふふ・・・あはははは!!!なんと滑稽な事でしょう!お前達が踏み躙って来た者達の声に耳を傾けた事があるのですか?
お前達は罪なき弱者から奪って陵辱し更には殺戮してきたのでしょう?
これからお前達は自分達のしてきた事の片鱗を味わうのです!さあ!お前達に殺された者達の恐怖と痛みをその身に受けなさい!!」
最上級精霊エントが魔力を解放し腕を振り下ろすと数千の殺気の塊が帝国騎士団の男達に降り注ぐ!!
「うぎぁぁぁぁぁ!!!助けてぇぇぇ!!!こんな所でぇぇぇ!!ぐげぇぇぇぇ!!!」
「止めてくださいぃぃぃぃ!!!お願いしますぅぅぅ・・・ぐがっ!!い、嫌だぁぁぁぁ!!ぐべぇぁぁぁ!!やべでぇぇぇぇ!!
「な、何故だぁぁぁぁぁぁ!!!こんなに頼んでやってるのにぃぃぃぃぃぃぃ!!!お、おい!や、やめろぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇ!!ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
まさにそこは阿鼻叫喚の地獄絵図であった。両腕を切り取られ両脚を潰され意識があるままトレントに引きずられて行く者、無数の尖った岩が身体中から生えている者、木の枝や蔓に貫かれ人形のように吊るされた者などまるで殺された者達の怨念がそうさせているかのようであった。
こうして帝国騎士団の男達は精霊達の怒りに触れ、深い森の中で今まで感じたことの無い恐怖と痛みを刻み込まれ後悔に塗れて森の中に消えて行ったのだった。
「・・・ぐっ・・ぐはっ・・はぁはぁ・・ごほっ!・・・ど、どうなった・・・お、俺は・・生きているのか・・」
アイラに殴り飛ばされて村の外まで吹き飛ばされたゼガルが森の中で息を吹き返し仰向けになって空を見上げた。
「はあ、はあ、はあ・・・だ、団長達は・・・何処だ・・・こ、この辺には居ない・・・早く・・合流しなければ・・・」
ゼガルは起き上がろうと力を入れるが何故か身体が動かせない事に気付いた。
(ど、どうしたんだ・・・何故身体が動かん?!)
ゼガルはもがきながら首を動かして自分の身体を見てみると木の蔓のような物が身体中に巻き付いていた。
(な、なんだこれは?!誰がこんな事を?!くそっ!早く団長達と合流しないと・・・)
身体に巻き付いている蔓を解こうと焦りながらもがいているといつの間にか緑色のドレスを靡かせた美しい女性がゼガルを見下ろしていた。
「なっ?!な、何者だ?!」
「ふふ・・見当たらないと思ったらこんな所に居たのですね・・本当に良かったわ。」
ガゼルは美しい女性の笑顔に気持ちが緩むみ声を掛けた。
「な、なぁ、あんた。俺を知っているのか?お、俺の仲間が何処に居るか知ってるか?」
するとガゼルの質問に女性の笑顔が徐々に獲物を見つけた狩人のような笑顔に変わっていった。
「えぇ・・あなたの事はもちろん知っています。だって・・・あなたは1番最初にメルト村の子供達を襲った人間ですからね・・・本当に見つけられて良かったわ・・・」
「な、何を・・・一体お前は何者だ?!」
ゼガルは女性の雰囲気の変化に自分の甘さを呪った・・・
(な、何だ・・この魔力は・・村の関係者か・・)
「ふふ・・私は森の精霊エント。我が主様の住まう村を襲った帝国騎士団の方々は既に私達が地獄へお送り致しました。
もちろんあなたも私が責任を持って団長さんの所へ確実に送って差し上げますわ!」
エントが魔力を溢れさせて手をかざすとゼガルを拘束している蔓が急激に身体を締め上げる!!
「ぐっ・・があぁぁぁ!!!ま、待て!待ってくれ!!ぐぶぅぅぅぅ!・・お、俺は・・命令・・されただげなんだぁぁぁ!!」
エントはゼガルの言葉など聞こえぬと言わんばかりに満面の笑顔を浮かべゼガルを見据えるその目は真っ黒に染まっていた・・・
「ふふふ・・・愚か者よ・・我が主様の住まう村に剣を向けた時点でお前達の運命は決まっていたのですよ・・・さあ!地獄の仲間達と恐怖と苦痛に塗れて懺悔なさい!!!」
エントが魔力を込めると締め付ける蔓の力が絶望的な力に達する!!
ベキベキベキベキベキッ!!!
バキバキバキバキバキッ!!!
「ぶぐげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ゼガルは身体を締め付けられ行き場のない身体の中の全ての液体を噴水のように口から噴き出し絶命したのだった。
「まぁ・・・汚い噴水ですこと・・・」
エントは自分の成す事が終わり満足げに森の中へ消えて行くのだった。
「団長!!レバイト団長!大丈夫ですか?!」
部下の男がレバイトに声を掛け続けるとレバイトの瞼が震えゆっくりと目を開けた。
「うっ・・げほっ!ごほっ!」
「た、団長!!早くこれを飲んでください!!」
部下がレバイトの開いた口に少しずつ回復薬を流し込むとゆっくりと喉が動いた。すると真っ青だった顔に赤みが差して呼吸も安定してきた。
そしてレバイトはゆっくりと上半身を起こして座り込んだ。
「痛っ!・・・ち、ちくしょう・・ひ、酷い目にあったぜ・・・ふん・・しかし馬鹿な奴等だ・・俺達を生かして帰すとはな・・・この屈辱は必ず晴らしてやるぞ!」
レバイトはまだ痛みの残る身体をぎこちなく動かしてふらふらと立ち上がり部下達の前に立つ。
「お、お前等!一度帝国に戻り傷を癒やして出直すぞ!!そして全軍を持ってこの村を殲滅するんだ!!すぐにでも出発だ!!」
「え・・あ・・は、はい・・」
しかし部下達はいつものように腹の底から返事が出来なかった。それもそのはずである。メルト村の圧倒的な力の差を見せつけられ、更に村を包囲していた100人の仲間が跡形もなく消されたのである。
部下達はレバイトの意気込みを他所に完全に心が折られていた。部下達は次にこの村に手を出せばどうなるかと想像すると心と身体が重くなる思いであった・・・。
生き残った帝国騎士団はレバイトを先頭に出発し馬が歩く振動でも痛む身体を庇いながらメルト村の西の森へ入って行った。
そしてレバイト達が1時間ほど森を進んだ所であった・・・何処からともなく美しい声が森に響くのであった。
ガインは厳しい目付きで村の入り口から必死の形相で男達を連れ出している様子を眺めていた。すると最上級精霊エントが目の前に立ち軽く頭を下げる。
「村長様。ミハエル様から村長様のお願いを1つ聞いて欲しいと伺っております。何なりとお申し付けください。」
「あぁ。・・聞いてくれ。・・恐らく・・いや、必ずあいつ等はまたメルト村を襲いにやって来る。だがそれを分かってて逃したのは例え最低最悪の悪党だろうがあれだけの人間を子供達の前で殺す訳にはいかんのだ。それにそんな事を村の人間にさせる訳にもいかん。手を汚すのは俺だけで良いんだ。だから・・・」
「村長様。」
「ん?」
ガインが話を続けようとするとエントがそれを優しく遮った。
「私はそれ以上は聞かない事に致します。メルト村の村長様の願いは子供達と村を守る事と心得ました。そして私達がこれからする事は私達精霊が主様の住まう村の為に勝手にする事です。それに・・・私達は最初から・・あの者達を許すつもりはありません。」
エントは目を細め殺気を込めて男達を眺める。そしてガインに微笑み軽く首を傾げる。
「村長様。あなたのような優しい人間がいるこの村を私達は大好きなんです。ですのであなたこそ手を汚してはいけません。・・・それでは私達は自分の思う事をしてきます。」
話を聞いていたジン、ベヒモス、クラーケンも『任せとけ!』と言わんばかりに頷きその場から消えるのであった。
「・・うぅっ・・くっ・・お、恩に着る・・ありがとう・・・」
ガインは唇を噛み締めエントの優しい言葉と笑顔に込み上げるものを堪える事が出来ずに空を仰いだ。それでも止めどなく溢れる涙が頬を伝うのであった。
「ふふふ・・・村長様のご慈悲を踏み躙る愚か者達よ・・・」
「我らの主様の住まう村を襲って無事に帰れると思っているのか?」
「このクズ共が!!主様が許しても我らが許さん!!」
「さあ!これからあなた達はこの森の生贄となるのです!!せめてお前達が殺めた者達に懺悔なさい!死んでからしか役に立たない愚か者達よ!!」
最上級精霊達の声が森に響き渡ると森の木々達がざわつき始めた。
帝国騎士団の男達は立ち止まり森に響く声とざわつく森の中の無数の気配に怯えて辺りをキョロキョロと見渡していた。すると男達の周りに段々と光が集まり出し微かに声が聞こえて来た。
(許さない・・・)
(主様の村を襲った奴許さない・・・)
(・・死ねばいい・・)
(森の養分になれ・・)
(・・主様の敵・・生かしておかない・・)
「ひぃぃぃ!!!た、助けて!!お願いだぁぁぁぁぁ!!」
「お、お願いだぁぁぁぁ!!も、もうここには来ない!!や、約束する!!だ、だから!だからぁぁぁぁ!!!」
「た、助けて・・・助けて・・・助けて・・助けて・・・助けて・・・」
部下達は馬から転げ落ち地面に頭を擦り付けながら震えていた。
「お前等ぁぁぁ!!何をしている!!帝国騎士団がビクビクするなぁぁぁ!!立てぇぇ!立って戦えぇぇぇ!!」
レバイトは自分を鼓舞するかのように部下を怒鳴りつける。レバイトは勢いよく森を見上げて言葉を詰まらせた。
「なっ・・に?!」
レバイトの目に飛び込んで来たのは四人の最上級精霊を頂点としてミハエルの力で上級精霊となった数千を数える精霊達が殺気を込めて帝国騎士団を見下ろしている姿であった。更に周りの木々達がガサガサと音を立ててレバイト達を取り囲むのだった。
(な、何だ・・こ、この数は・・と、とにかく・・こ、これは駄目だ・・・何とかして切り抜けねば・・)
絶望と恐怖に狩られたレバイトはそっと馬から降りると両膝を付いて精霊達を見上げた。
「あ・・・う・・・ま、待ってくれ・・・お、俺達が・・わ、悪かった・・・もう、ここには来ない・・・も、もちろん村にも手は出さない!そ、それに謝罪もしよう!や、約束する!だ、だから・・・見逃してくれ!!!頼む!!この通りだ!!」
レバイトは恥も外聞もかなぐり捨てて地面に頭を擦り付けた。しかし精霊達はそんなレバイトの姿を更に冷たい目で見下ろしていた。
「ふふふ・・・あはははは!!!なんと滑稽な事でしょう!お前達が踏み躙って来た者達の声に耳を傾けた事があるのですか?
お前達は罪なき弱者から奪って陵辱し更には殺戮してきたのでしょう?
これからお前達は自分達のしてきた事の片鱗を味わうのです!さあ!お前達に殺された者達の恐怖と痛みをその身に受けなさい!!」
最上級精霊エントが魔力を解放し腕を振り下ろすと数千の殺気の塊が帝国騎士団の男達に降り注ぐ!!
「うぎぁぁぁぁぁ!!!助けてぇぇぇ!!!こんな所でぇぇぇ!!ぐげぇぇぇぇ!!!」
「止めてくださいぃぃぃぃ!!!お願いしますぅぅぅ・・・ぐがっ!!い、嫌だぁぁぁぁ!!ぐべぇぁぁぁ!!やべでぇぇぇぇ!!
「な、何故だぁぁぁぁぁぁ!!!こんなに頼んでやってるのにぃぃぃぃぃぃぃ!!!お、おい!や、やめろぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇ!!ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
まさにそこは阿鼻叫喚の地獄絵図であった。両腕を切り取られ両脚を潰され意識があるままトレントに引きずられて行く者、無数の尖った岩が身体中から生えている者、木の枝や蔓に貫かれ人形のように吊るされた者などまるで殺された者達の怨念がそうさせているかのようであった。
こうして帝国騎士団の男達は精霊達の怒りに触れ、深い森の中で今まで感じたことの無い恐怖と痛みを刻み込まれ後悔に塗れて森の中に消えて行ったのだった。
「・・・ぐっ・・ぐはっ・・はぁはぁ・・ごほっ!・・・ど、どうなった・・・お、俺は・・生きているのか・・」
アイラに殴り飛ばされて村の外まで吹き飛ばされたゼガルが森の中で息を吹き返し仰向けになって空を見上げた。
「はあ、はあ、はあ・・・だ、団長達は・・・何処だ・・・こ、この辺には居ない・・・早く・・合流しなければ・・・」
ゼガルは起き上がろうと力を入れるが何故か身体が動かせない事に気付いた。
(ど、どうしたんだ・・・何故身体が動かん?!)
ゼガルはもがきながら首を動かして自分の身体を見てみると木の蔓のような物が身体中に巻き付いていた。
(な、なんだこれは?!誰がこんな事を?!くそっ!早く団長達と合流しないと・・・)
身体に巻き付いている蔓を解こうと焦りながらもがいているといつの間にか緑色のドレスを靡かせた美しい女性がゼガルを見下ろしていた。
「なっ?!な、何者だ?!」
「ふふ・・見当たらないと思ったらこんな所に居たのですね・・本当に良かったわ。」
ガゼルは美しい女性の笑顔に気持ちが緩むみ声を掛けた。
「な、なぁ、あんた。俺を知っているのか?お、俺の仲間が何処に居るか知ってるか?」
するとガゼルの質問に女性の笑顔が徐々に獲物を見つけた狩人のような笑顔に変わっていった。
「えぇ・・あなたの事はもちろん知っています。だって・・・あなたは1番最初にメルト村の子供達を襲った人間ですからね・・・本当に見つけられて良かったわ・・・」
「な、何を・・・一体お前は何者だ?!」
ゼガルは女性の雰囲気の変化に自分の甘さを呪った・・・
(な、何だ・・この魔力は・・村の関係者か・・)
「ふふ・・私は森の精霊エント。我が主様の住まう村を襲った帝国騎士団の方々は既に私達が地獄へお送り致しました。
もちろんあなたも私が責任を持って団長さんの所へ確実に送って差し上げますわ!」
エントが魔力を溢れさせて手をかざすとゼガルを拘束している蔓が急激に身体を締め上げる!!
「ぐっ・・があぁぁぁ!!!ま、待て!待ってくれ!!ぐぶぅぅぅぅ!・・お、俺は・・命令・・されただげなんだぁぁぁ!!」
エントはゼガルの言葉など聞こえぬと言わんばかりに満面の笑顔を浮かべゼガルを見据えるその目は真っ黒に染まっていた・・・
「ふふふ・・・愚か者よ・・我が主様の住まう村に剣を向けた時点でお前達の運命は決まっていたのですよ・・・さあ!地獄の仲間達と恐怖と苦痛に塗れて懺悔なさい!!!」
エントが魔力を込めると締め付ける蔓の力が絶望的な力に達する!!
ベキベキベキベキベキッ!!!
バキバキバキバキバキッ!!!
「ぶぐげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ゼガルは身体を締め付けられ行き場のない身体の中の全ての液体を噴水のように口から噴き出し絶命したのだった。
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エントは自分の成す事が終わり満足げに森の中へ消えて行くのだった。
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