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第100話 伝令神の加護

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ギギギィィン!!!

「エルクゥゥゥ!!!!」
「あぁぁぁぁぁ!!!!」

ナルミナが叫ぶとエルミーが絶望感でその場にへたり込んだ。

「おいぃぃぃ!!!生きてるよなぁぁぁ!!返事しろぉぉぉぉぉ!!!馬鹿勇者ぁぁぁ!!!」

ギースも振り向き声を荒げる!!!

三人が絶望の声を上げる中、エルクは目を瞑り来るべき衝撃に覚悟していたが腕に感じた衝撃は普通に耐えられるものであった。

「ぐっ・・・ん?・・・あれ?」

エルクは恐る恐る顔を上げると確かに巨大な棍棒を剣一本で受け止めていた・・・

「な、なんだぁぁぁ?!どうなってる?!」

ギィン!!

「ごふぅ・・・」

エルクは取り敢えず棍棒を弾き返して距離を置くとその勢いでゴブリンキングがたたらを踏む!

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
「・・・あぁ・・うぅぅ・・?!」
「き、奇跡か・・・ゴブリンキングの一撃を・・軽く受け止めた?!」

三人は最悪の結末しか想像してなかった。しかし目の前には巨大な棍棒を受け止め弾き返したエルクがいた。

するとその時エルミーの頭の中に聞き慣れた声が響く。


(エルミー。エルクに〈身体強化魔法〉だ!)

「えっ?!あ、は、はい!!”かの者の士気をを高め敵を打ち破れ!〈クルセイド〉!!」

エルミーは突然の声にも疑うことなく魔法を放つとエルクの身体が聖なる光に溢れる!


(ナルミナ。ギースさんの援護を!!背後からくるホブゴブリンに氷属性魔法で足止めだ!)

「あ、う、うん!!”大地を凍てつかせ敵を氷河の世界に閉じ込めよ!〈アイス・エッジ〉!!」

ナルミナも流れるように忠実に魔法を放つとギースに襲い掛かろうとしていたホブゴブリンが一瞬で凍り付きそのまま通路ごとホブゴブリン達は氷漬けになるのだった。

「う、嘘・・さっきまでこんな威力は無かった・・・ま、魔力が・・溢れてくる・・」


うお・・・どうしたんだ・・いきなり動きが良くなったぞ・・・それに・・なんだこの力が溢れてくる感覚は・・・

(ギースさん。そこにいては危ないです!エルクが今から大技を使いますのでゴブリンキングから離れてください!!)

「なっ?!誰だ・・ま、まあいい!分かった!」

ギースは全力でホブゴブリンを薙ぎ倒しながらその場から退避する!

そして剣を構えてどうしようか思案中のエルクの頭の中に声が響く。

(エルク!!〈限界突破〉だ!!エルミーの身体強化魔法が効いている今ならアレが撃てる!!)

「なっ・・ふ、ふん!おいしい所で出てきやがって!!いいだろう!!やってやらぁぁぁぁぁぁ!!!〈限界突破〉だぁぁぁぁぁ!!!」

エルクはいつも通りの声に笑みを浮かべて〈限界突破〉を発動させると全身が淡く光り全ステータスが二倍に跳ね上がる!

「今度はこっちの番だ!!覚悟しやがれ!!ゴブリンキングかゴブリンチ○コか知らねぇーが!!ぶった斬ってやるぜぇぇぇぇ!!!!」

(チ○コではない!!)

エルクは勢いよく大地を蹴り上げ上段に剣を振りかぶった!!

「喰らえぇぇぇ!!上剣技!!〈大絶斬〉!!!」

ゴブリンキングは目の前の小さな存在に危機感を覚え迫り来る殺気の塊に巨大な棍棒を掲げ防御体制になる!!
しかしその判断が間違いだと気付いた時には既に遅かった・・・

「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!!」

振り下ろした剣は闘気と魔力が上乗せされゴブリンキングの棍棒を豆腐のようにすり抜けゴブリンキングを脳天から真っ二つに切り裂いた!!

ズッバァァァァァァァン!!!!

バリィィィィィィィン!!!

それでも尚衰えない斬撃が通路で氷の彫刻となったホブゴブリン達をダイヤモンドダストに変えたのだった。

「す、すげぇ・・・これが本来の勇者一行の力か・・・そうか・・さっきの声が・・雑用係か・・・」

ギースが立ち止まり立ち尽くしていると再び頭の中に声が響く。

(ギースさん。初めまして僕はログと言います。エルク達の事ありがとうございました。
気になって来てみて良かったです。
僕は訳あって旅に出ます。王様には許可は取ってあります。
これからもたまにはエルク達の事気に掛けてやってください。)

(お、おい!あんたは勇者一行に戻らないのか?!恐らくあんたが居なきゃ上級ダンジョンは無理だぜ?)

(そうでしょうね。でも今は彼らの本来の力で強くなった方が良いと思います。彼らの加護も強力なものばかりですから心配は要らないですよ。
それにギースさんとの冒険でエルクも一皮剥けたみたいなので。それでは失礼します。)

すると湧き上がる力が収まり元の状態に戻った。

そうか・・ログ・・この力はお前の仕業か・・確かにそうかも知れないな。最初からこんな力に甘えていたら駄目になる・・・

ギースは顔を上げ声を上げる!

「お前ら!!脱出だ!!急げ!!!」

「おう!!」「えぇ!!「はい!!」

エルク達は何故だか安心感をただよわせながら出口へと走り出すのだった。
周りにいたホブゴブリン達は恐れを成して横穴へと去って行った。


ギース達は上級ダンジョンを無事に脱出し森の木陰で腰を下ろしていた。

「そうか・・やっぱり行っちまったか・・」
「仕方ないわよね・・・あんな事言っちゃったんだし・・・」
「そ、そうですよね・・・でも・・戻って来てくれるかと少し期待してしまいました・・」

エルミーが寂しそうに項垂れる。

「それよりエルク!あの状況を一瞬でひっくり返したあのログって奴は何者なんだ?!」

エルクはギースの質問にバツが悪く『説明してやってくれ』とエルミーの顔を見る。

エルミーは頷くと口を開いた。

「彼は私達と同じ村から来たんです。私達の村は10歳の誕生日を迎えると〈降職の儀〉で称号と加護が与えられるの。
そこで上級職や特別神の加護が与えられると王都に召喚されて仕事がもらえるの。
そこでログの〈伝令神の加護〉がアリナル王の目に止まったの。
だけどアリナル王は〈伝令神の加護〉を表に出さずに緘口令を敷いたの。」

「〈伝令神の加護〉?!聞いた事も無いな・・・そんなに凄いのか?」

ギースが眉を顰める。

「そう。最初は皆そう思ったわ。そこで私は〈伝令神の加護〉に付いて調べたの。そこにはこうあったの・・・伝令神の本当の名は〈豊穣と冒険の神〉と。」

「〈豊穣と冒険の神〉?!2つの加護を持っているのか?!」

「そう。数万年前に神々の争いがあった頃に神々との伝令の役目を担っていたのが〈豊穣と冒険の神〉だったの。
その役目から伝令神と呼ばれるようになったみたいなの。
そしてその力は絶大なの!〈伝令神の加護〉を持つ者が帰る場所と認める国は発展し栄ええ未来永劫揺るがぬ国となり〈伝令神の加護〉を持つ者が冒険者の集まりの中にいればその冒険者達は護られその能力を数十倍に引き上げられるの。
だから〈伝令神の加護〉が出たと噂になれば各国から狙われ兼ねないのよ。」


「なるほどな・・それにしても・・とんでもない奴をクビにしちまったんだな・・・」

ギースが呆れ顔でエルクを見るとスッと目を逸らした。

「で、でもよ!!俺はこれで良かったと思ってるぜ!!
だ、だってよ!ぬるま湯の中で強い気になってたって気付いたんだからよ!!これから一から鍛えてもっと強くなってやるさ!!
だからギースさんよ!!これからよろしく頼むぜ!!」

エルクは立ち上がり手を出すとギースは頭を掻きながら顔を上げる。

「しゃぁねぇーな!!命の恩人のログにも頼まれちまったしな!付き合ってやるよ!!この〈かけだし勇者〉共!!」

ギースはエルクの手をがっちり握りよいしょっと立ち上がるのであった。
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