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第98話 上級ダンジョン

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ダンジョンに入ると10m程の幅広い通路が続いており天井も5mぐらいの高さがあった。しかし周りはゴツゴツと岩場が続きけっして歩き易いとは言えなかった。
そしてそんな上級ダンジョンの中をエルク達は足速に進んでいく。

「おい!!お前ら!!ここは上級ダンジョンだぞ!!そんなに無防備に進むな!!何があるか分からんぞ!!」

ギースが辺りを警戒しつつエルク達に警告するがお構いなしに進んで行くと大きく開けた場所に出た。

「はん!!ごちゃごちゃ五月蝿いぞ!!上級だろうがまだ一階だぜ?!何があったって大丈夫だろう?!さあ!サクサク行くぞ・・・」

カチッ・・・

「ん?・・何d・・・」

ヒュッ!・・サクサクッッ!!

「ぐわッ!!痛でぇ!!!!」

エルクが小さな岩を踏み抜くと足の下から何かが飛び出しエルクのつま先を貫いた!

足に刺さった物を見ると固く尖った石のような物だった。

「ふん!こんな物屁でもない・・ぜ?!・・あれ?」

エルクはふらついてその場にへたり込み呼吸が荒くなる。

「はぁ、ぜぇ、、、ぜぇ、、、な、なんだ・・」

「な、何よ?!どうしたのよ!!」

エルミーとナルミナは何が起こったのか分からずに立ち尽くしていた。

「馬鹿野郎!!言わんこっちゃ無い!!お前がサクサクやられてんじゃねーか!!それは毒だ!!早く解毒しないと死ぬぞ!!」

「えっ?!あっ!は、はい!!」

ギースの言葉に弾けるようにエルミーが駆け寄り魔法を放つ。

「かの者を毒から解き放て!〈アンチトード〉!!〉」

すると淡い光がエルクを包み込むと顔色が良くなり呼吸が徐々に落ち着いて来た。

「くっ!!・・・おい!!ギース!!罠の発見、解除はポーターの仕事だろう?!何やってんだ!!死ぬ所だったぞ!!」

立ち上がったエルクはギースに詰め寄った。

「お前はアホか!!ポーターは本来なら荷物を運ぶだけなんだよ!!
だが俺はそこそこ戦闘も出来るしマッピングもする。それ以上はポーターの仕事じゃないんだよ!!それに何度も言っただろう!!無防備に進むなって!!
よくそれで今まで死なずにここまで来れたな?!」

「そ、そんな筈はねぇ!!うちの役立たずの雑用係でさえ荷物を運びながらマッピングして罠発見と解除して索敵して敵と戦っていたぞ!!その上飯まで作ってたんだぞ!!それが普通だろう?!」

ギースは思わずエルクの胸ぐらを両手で掴んでガタガタ揺らす!

「んな訳ねぇだろうがぁぁぁぁぁ!!!何処の世界にそんな便利な奴がいるんだぁぁ?!
それにだ!!そんな奴を役立たずだとぉぉぉぉ?!いい加減にしろよ!てめぇ!!どこまで出来たらてめぇは納得するんだぁ?!お前達が役立たずと叩き出した奴は間違いなく超一流の規格外の冒険者だ!!ふん!!馬鹿な事をしたな!!」

ギースは一気に捲し立ててギースを突き飛ばした。

「て、てめぇ!!何しやがる!!」

「・・・はぁ、、、あーーー!やめだ!やめだ!!俺は帰るぜ!!
荷物は屋敷まで持って行ってやる!もちろん金は半日分でいい!!
お前らじゃこのダンジョンは早すぎる!!帰って初心者ダンジョンからやり直せ!じゃあな!!」

ギースがため息を付きながら踵を返して歩き出す。

「おい!!ギース!!待てよ!!」

ドスッ!!

「痛っ!!な、何だ?!急に!!!」

エルクがギースを追い掛けて走り出した瞬間急に止まったギースの背中に顔を埋めた。

「チッ!囲まれちまったな・・・恐らく横穴があったんだ・・・ホブゴブリンだな・・前に30~40匹って所か・・後ろからもおいでなすったぜ・・・合わせて7、80匹か・・・まだ奥から出て来やがる・・入って1時間もしない内にこれか・・・不味いな・・」

広間の入り口からホブゴブリンがぞろぞろ出て来る!!

ギースはゆっくりと荷物を下ろすと腰の剣を抜いた。

「おい!エルク殿。勇者一行の実力を見せてくれよ・・・期待してるぜ!!」

「はん!残念ながら作戦や指示は役立たずの雑用に任せてたからな・・・出来れば・・・指示をくれ・・・」

エルクは取り敢えず腰の剣を抜いて構える。

ギースは呆れ顔で怒りを通り越して逆に冷静になっていた。

なんて事だ・・・この馬鹿共はパーティーの中核を自ら手放したのか・・・嫉妬か・・馬鹿な奴だな・・笑えてくる・・ふっ・・願わくばそいつと会って話をしたかったな・・・ふう。取り敢えずやるだけやってやるか!!

ギースは覚悟を決めて檄を飛ばす!!

「おい!!馬鹿勇者!!退路の確保だ!!何でもいい!!お前の最大火力で道を切り開け!」

「お、おう!!」

何故かエルクは素直に返事をする。

「おい!アホ魔法使い!!馬鹿勇者と退路の確保だ!!火属性魔法以外でぶっ放せ!!」

「な、何よ?!アホ魔法使いって!!それに火属性魔法の方が得意なんだけど!!」

「うるせぇーー!!だからアホなんだよ!!退路に火を放ってどうするんだよ!?死にたくなかったら早くしろ!!」

「あっ・・・わ、分かったわよ・・・」

ナルミナも何故かギースの檄に素直に返事をする。

「おい!!グズ貧乳!!お前は俺と殿だ!!後ろからくるホブゴブリン共に攻撃魔法だ!!遠慮はするなよ?!お前の最大火力を打ち込め!!いいな?!」

「は、はい!!」

・・・えっ?!私だけ悪口ばっかり?!でも・・なんか・・・

ギースはお構いなしに声を上げる!!

「作戦開始だぁぁ!!!ぶっ放せぇぇぇぇ!!!!!!!」

「うおぉぉぉぉ!!!剣技!〈グランドスラッシュ〉!!」

エルクが放った斬撃は前衛のホブゴブリンを斬り飛ばす!!

「水よ!集まりて敵を貫け!〈アクアビーム〉!!」

ナルミナの放った〈アクアビーム〉は通路を一直線に走りホブゴブリン達の身体を貫く!!

「聖なる光よ光の束になりて目の前の敵を貫け!〈ホーリーレイ〉!!」

エルミーの周りから蒼白い光線が何本も放たれ背後のホブゴブリン達を貫いて行った!

ギースは今まで馬鹿にしていた三人の攻撃力に目を丸くする。

「おおう!!すげぇ!!さすが勇者一行だ!!今だ!!このまま出口まで突っ走れ!!追いつかれたら終わりだぞ!!」

「おう!」「えぇ!!」「はい!!」

ギースの指示に水を得た魚のように三人は 走りだした。

しかし三人は思う。放った攻撃は紛れもなく全力の一撃であった。今までならホブゴブリンなどあっという間に殲滅する程の攻撃だった筈なのだ。
だが現実は十数体倒した程度であった。今までとは何が違うのである。
体のキレ、攻撃力、魔法力共に格段に落ちているのが分かった。
それが何故かと考えると脳裏にログの顔がチラつくのであった。
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