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第97話 追放

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「おい!ログ!お前は今日で首だ!」

エルクに応接室へ呼び出されいきなりの宣告であった。
これはにはエルミー、ナルミナも同意らしく何も言わずにエルクの両隣に座っていた。

「と、突然なんだよ?!どうして首なんだよ?!理由を教えてくれ!!」

ログは何を言われているのか訳が分からなかった。
いつも皆の荷物を一人で運びダンジョンでは罠解除から索敵、マッピング、偵察、梅雨払い、更には家事全般をこなして皆を支えていると自負していたのだ。

エルクは踏ん反り返り足を組み替える。

「はんっ!!はっきり言ってやる!お前が気に入らないんだよ!!
何でお前みたいな奴が王都に呼ばれたんだ?!しかもアリナル王は勇者の俺よりお前がお気に入りときてる!雑用しか出来ない奴をだぞ!?毎日荷物持って後ろから付いて来てるだけの癖に報酬は山分けだって?!やってられるか!!荷物持ちならそこら辺のポーターを雇えば安くつくんだよ!!」

こ、こいつ・・

「待てよ!!ただ付いて来てるだけじゃ無いぞ!!そもそも手ぶらで行けるのは誰のお陰だ?!罠を見つけて解除してるのは誰だよ!!事前に敵の存在を知らせてるのはだれだよ!!俺の言う事を無視して三人揃って突っ込んで行って死にかけたのは誰だよ!!言ってみろよ!!えぇ?!」

エルクが顔を真っ赤にして立ち上がる!

「ぐっ!!う、うるせぇよ!!!雑用しか出来ねぇ癖に偉そうに言うんじゃねーよ!!お前の指示がわるいんだろうがぁ!!!」

「そうよ!!あんたが後ろからごちゃごちゃうるさく言うから調子が狂うのよ!全部あんたのせいよ!!」

今まで嫌な笑いを浮かべていたナルミナがここぞとばかりに口を挟んできた。

エルミーは何も言わずに膝の上で両手を握り俯いていた。


な、何なんだこの理不尽極まりない仕打ちは・・・俺が何をしたんだ?!皆んなの為と思って出来る限りの事をしていたんだぞ?!一体何を考えているんだ・・・もしかして俺がやってるのが雑用だけだと思っているのか?・・・はぁ、、本当に気付いてないのか・・なんだか馬鹿らしくなって来た・・・

ログは肩の力を落として静かに立ち上がる。

「あぁ。分かったよ!!そこまで言うならこっちから願い下げだ!!出て行ってやるよ!!・・・お前らは必ず後悔するぞ!今までのように行くと思うなよ!!」

ログは大股で部屋の扉へ歩き出す!

「ふ、ふん!!分かったらとっとと消えろ!!穀潰しが!!」

ログはエルクの言葉を最後まで聞かずに扉を乱暴に開けて廊下に出ると身体ごと振り向き部屋の中の三人を見据える。

「お前ら・・・最低のクズだな!!!」

どばぁぁぁぁん!!!

ログは捨て台詞を残し破壊する勢いで扉を閉めた!

(くそっ!!もう知らないぞ!何があっても絶対戻らないからな!)

(・・・ログ・・ごめんなさい・・・私・・)

本当はエイミーはログの〈伝令神の加護〉ついて調べて知っていた。
それをエルクに伝えたのだが信じてもらえ無かったのだ。そしてエイミーの性格上言い返す事も出来ずに恫喝され口をつぐんでしまったのである。
エイミーは勇者一行のこれからの多難な行く末を想像して肩を落とすのであった。


「ふん!やっと穀潰しが居なくなったな!今日は〈上級ダンジョン〉攻略の予定だ!!昨日王宮から紹介してもらった優秀なポーターが下で待ってる筈だ!行くぞ!」

エルク達が屋敷のエントランスに行くと体格の良い中年の男が山のように積まれた荷物の前で首を傾げていた。

「おう!ギース!時間通りだな!どうした?何か問題か?」

ギースがエルクに振り向くと明らかに不機嫌に口を開く。

「なぁ、エルク殿。まさかこの荷物を全部持っていくなんて事は言わないよな?」

「何を言っている!?全部持っていくに決まってるだろう!?だからそこに置いてあるんだ!!」

ギースのこめかみがぷっくりと膨らむ。

「アホかお前ら!!どこの世界にこんなごついテーブルや椅子をダンジョンに持っていく馬鹿が居るんだ?!それにティーセット?!それにこのでかい衣装ケースはなんだ?!お前らはダンジョンでパーティーでも開く気なのか?!」

ギースが鼻息荒く声を上げるとナルミナが前に出る。

「仕方ないでしょ?!ダンジョンで服が汚れたら着替えるでしょ?!それに岩だらけのダンジョンで腰を下ろしたら汚れるし痛いじゃ無い!!つべこべ言わずにさっさと運びなさいよ!!」

「ドアホかお前!!無理に決まってるだろう?!こんな荷物どうやって運ぶんだ?!大体着替えなんか・・・・ん?・・ちょっと待て・・・お前ら・・もしかして毎回この荷物をダンジョンに持ち込んでいたのか?」

ギースはまさかと思いゆっくりとエルクを見る。

「当然だろう!うちの雑用係が運んでたぞ!まあ、さっき使えないから叩き出してやったけどな!!だからその代わりにあんたに来てもらったんだよ!さあ!運んでくれ!!」


こ、この量の荷物を毎回?!一体どうやって?!この量の荷物を運べるポーター・・・アイテムボックス持ちか!!それも規格外の奴だぞ・・さっき出て行った奴か・・・ギースは嫉妬のような感情に襲われた。

「と、とにかくだ!!この量の荷物を運ぶのは無理だ!!普通はダンジョンに入る人数と日数を計算して最低限度の水や食料や薬、テントや夜営装備を運ぶんだ!!更に余裕があるならマジックアイテムや予備の武器を持って行くんだよ!!
こんな馬鹿げた量の荷物を毎回運んでいた奴
の方が異常なんだよ!!」

エルク達は一瞬固まった。ログのやっていた事が当たり前と思っていたのだ。
エルクの脳裏に少しだけ後悔の念が掠めるのであった。

「ふ、ふん!あいつより使えない奴だな!!まあいい・・上級ダンジョンは今日が初日だ!今日は日帰りで様子を見に行くぞ!!ギース!適当に見繕って運んでくれ!!」

・・・適当に?こいつら馬鹿なのか?・・普通は自分達で計画と作戦を立ててそれに必要な物を用意するんだぞ?!それを人任せ?!それもポーターの俺に?!・・こんな奴らに着いて行ったら命が幾つあっても足らんぞ・・・だが・・前金で金を貰っちまったしな・・仕方ない・・今日だけだ・・明日からは絶対に来ねぇからな・・・

ギースはエルクの言葉に苛つき眉間に皺を寄せるが前金で通常の3倍の料金を受け取っている為にグッと堪えて仕方なく荷物を纏めるのであった。


【世界神の部屋】

「なんと愚かな・・・〈伝令神の加護〉を持つ者を追放するとは・・・無知とは恐ろしいものよ・・・」

「本当に・・・愚かですね・・・言葉もありません・・・」

「うむ・・・それにしても・・あのログと言う少年の力・・ふむ。確かにヘルビスが気に入るのも無理もないか・・・」
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