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第96話 2年後・・・
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「ミハエルよ・・・学園も今日で卒業じゃな。寂しくなるがソフィア殿にもよろしく伝えてくれ。
アンリル殿も引き続きミハエルをよろしく頼むぞ。」
「はい。お任せください。」
「王様。友達も出来てとても良い経験が出来ました。本当にありがとうございました。」
ミハエルが深々と頭を下げるとクラインド王は頬を緩ませる。
「そうじゃ・・噂で聞いたのだが南のアリナル王国で〈勇者〉が誕生したらしいのじゃ。しかし素行が悪くて良い噂は聞こえてこぬ。〈勇者〉の力は規格外らしいからの。出会った時は気を付けるのじゃぞ?」
ミハエルが返事をしようとすると控えていた第一王子のリベルトが口を開く。
「父上。ミハエル殿以上の規格外などいる訳がないでしょう。素行の悪い勇者など近づく事も出来ないでしょう。」
「兄上の言う通りだ!ミハエル殿の前に立ちはだかった瞬間に地べたに張り付く事になるさ!」
第二王子のウェルドも同調する。
実は2人の王子は2年前のミハエル達との会食の後ミハエルの武勇伝に居ても立っても居られずに剣の指導を頼み込んだのだ。ミハエルは快諾し週1で2人の指導をしていた。今や2人共レベル800を越える猛者となっていた。
「ふぉっふぉふぉふぉ・・確かにそうじゃな。
それにしてもお前達も良い面構えになったの。これもミハエルのお陰じゃ。感謝しきれんわい。
ミハエルよ。困ったことがあったら遠慮なく言ってくるのじゃぞ?」
「はい!ありがとうございます。それではお元気で!」
ミハエルとアンリルは深々と頭を下げて部屋を出て行くのだった。
「父上。引き止めなくて良かったのですか?」
リベルトが正面を向いたまま呟いた。
クラインド王は玉座に身体を預けて肩を落とす。
「リベルトよ。わしとてそうしたいのは山々なのだ。
ミハエルはもはやこのクラインド王国で知らぬ者がいない程の存在じゃ。その上悪党共の抑止力にもなっておる。
しかしの・・ミハエルは母ソフィアが1番の存在なのだ。ミハエルの為とは言え3年も離れ離れにしてしまったのだ。これだけは誰にも止められんのじゃ。・・・分かってくれリベルトよ。」
「・・はい。父上・・・」
リベルトは残念そうに閉められた扉を見つめるのであった。
アンリルは母ソフィアの元に帰るべく足取り軽く歩くミハエルを微笑みながら眺めていた。
こうして見るとまだ子供なのに・・・だけど周りに与える影響が半端ないのよね・・・
ミハエルはこの2年でクラインド王国の騎士団や学園の先生達や生徒達を鍛えて〈暗黒神ルビラス〉の復活に備えていたのだ。
もちろんアンリルを始めサリア、カリン、ライナード、サーシャもここに来た時とは比べものにならないぐらい強くなっていた。
「ミハエルくーーん!!挨拶は終わった?」
サーシャが手を振りながら駆け寄ってくる。
「うん。終わったよ!!さあ!行こうか!」
ミハエルがサーシャと一緒に出口に向かって歩き出した。
するとアンリルは背後に気配を感じて振り向くと柱の影に隠れる者が居た。
あー・・・あの子か・・・仕方ない・・
「ミハエル君!ちょっと待って!」
「えっ?何?」
ミハエルが振り返るとアンリルが親指で柱を指差す。
「もう1人挨拶したい子が居るみたいよ!ねえ?クレラ様?」
「ひゃうっ!!」
第一王女クレラは突然声をかけられて咄嗟に声を上げてしまった。
そして諦めてもじもじしながら柱の影から姿を現した。
クレラも〈大司祭〉の称号を持ちミハエルの指導を受けてこの世界屈指の聖魔法使いとなっていた。
その中でミハエルに尊敬の念を抱いていたがいつの間にかそれが違う感情となっていた。
「クレラ様!ここに見えたのですか!お姿が見えなかったので心配していたところです。」
ミハエルはクレラの元に歩み寄る。
するとクレラの顔が真っ赤になり俯いてしまう。
「あの・・その・・き、気を付けて・・・」
ミハエルの顔をまともに見る事が出来ずにチラチラと見ていた。
「はい。ありがとうございます。クレラ様もお元気で。」
ミハエルはニッコリ笑って手を振るとクレラに背を向けた。
「あ、・・・ま、また・・会えますか?!」
クレラが思わず声を上げるとミハエルは立ち止まり振り向いて笑う。
「はい!もちろん!また遊びに来ますよ!!」
「は、はい!待ってます!」
クレラの顔がパッと明るくなり大きく手を振って見送るのであった。
やっぱり・・・ク、クレラ様も・・・
サーシャは複雑な表情で馬車に向かうのだった。
「さあ。お嬢様。一度セルフィア王国へ戻るお約束です。」
執事のアルノーがムスッと頬を膨らませているサーシャに言い聞かせていた。
2年前にクラインド王の計らいで皆で住むようにと屋敷を一軒貸してくれたのだ。
だがサーシャは家から半ば強引に飛び出して来ていたので、アルノーはこのままここに住む訳にはいかないと説得したのだがサーシャはクラインド王の前で嫌だと駄々をこねた。
その結果クラインド王が中に入りセルフィア王国の両親に訳を話しミハエルが学園を卒業するまで言う約束でクラインド王国に留まる事になったのだ。
そして屋敷の執事としてアルノーも残ったのだ。
ミハエルはサーシャの手を取り優しく話しかける。
「サーシャ。一度お父さんとお母さんに顔を見せて安心させてあげた方がいいよ。サーシャが帰って来るのを首を長くして待ってると思うよ。」
ミハエル自身も母ソフィアが心配であり早く会いたいと願っていた。だからサーシャの両親の気持ちが痛いほど分かるのだ。
「う、うん。・・・分かったわ。家に帰ってパパとママに改めて許可をもらって絶対戻って来るわ!!」
サーシャはここぞとばかりにミハエルに抱きつき胸の谷間にミハエルを収める!
「ばぶっ!!」
「ミハエル君!先に行って待っててね!!」
ひとしきりミハエルを抱きしめるとサーシャは笑顔で手を振りながら馬車に乗り込んで行った。
「ふう。じゃあ僕達も行こうか!!」
ミハエルが振り返るとアンリルを始め皆が半笑いになる。
「ミ、ミハエル君・・顔がにやけてるわよ・・・ぷぷっ・・・」
アンリルが吹き出すと皆も笑い出した。
「ふふっ・・ミハエルの顔がーー!!だらしなくなってるぅぅぅ!!!」
サリアが指を差しながら笑うとカリンは両手で胸を隠して身体を捩る。
「ミハエル君ったら・・・ふふふっ・・・まだまだ子供ね・・・」
「あーっはっはっは!!帰ったらお母さんに報告しないといけないね!!」
ライナードが意地悪く言うと顔を赤くしたミハエルが残像を残してライナードの前に現れる!
「母さんに変な事言っちゃあ駄目だからね!!」
「さて・・どうしようかなぁ!!!ほっ!」
ライナードも残像を残して消えるとそれを追ってミハエルも消える!
「へぇーー!ライナードやるじゃない!!指輪を二つ外したミハエル君の動きに付いて行ってるわ!!」
すると中々終わらない追いかけっこに剛を煮やしたアンリルが構える。
「でも・・・いい加減にしなさいよっと!!」
「「あうっ!!!」」
アンリルは2人を目で追うと難なく捕まえてしまった。
「えっ?!・・あ、あの2人を捕まえた?!・・さ、さすがと言うしかないわ・・・アンリルさん。」
「そ、そうね・・・目で追うのが精一杯だったのにね・・・アレを捕まえるの?」
サリアとカリンが顔を見合わせて自分の修行が足りないとため息をつくのであった。
「な、なあ・・・今何が起こったんだ?」
「さ、さあ・・突然消えたり・・アンリル殿がミハエル殿とライナード殿を突然両手に・・・分からん・・・」
門番の兵士2人が目の前で起こった事が理解出来ずに立ち尽くしていた。
それもその筈である。2年間でアンリル達のレベルは一人でこの世界を凌駕出来るほどになっていた。
そして当の本人達は比較対象がミハエルの為 にその自覚が無い集団になっていたのであった。
アンリル殿も引き続きミハエルをよろしく頼むぞ。」
「はい。お任せください。」
「王様。友達も出来てとても良い経験が出来ました。本当にありがとうございました。」
ミハエルが深々と頭を下げるとクラインド王は頬を緩ませる。
「そうじゃ・・噂で聞いたのだが南のアリナル王国で〈勇者〉が誕生したらしいのじゃ。しかし素行が悪くて良い噂は聞こえてこぬ。〈勇者〉の力は規格外らしいからの。出会った時は気を付けるのじゃぞ?」
ミハエルが返事をしようとすると控えていた第一王子のリベルトが口を開く。
「父上。ミハエル殿以上の規格外などいる訳がないでしょう。素行の悪い勇者など近づく事も出来ないでしょう。」
「兄上の言う通りだ!ミハエル殿の前に立ちはだかった瞬間に地べたに張り付く事になるさ!」
第二王子のウェルドも同調する。
実は2人の王子は2年前のミハエル達との会食の後ミハエルの武勇伝に居ても立っても居られずに剣の指導を頼み込んだのだ。ミハエルは快諾し週1で2人の指導をしていた。今や2人共レベル800を越える猛者となっていた。
「ふぉっふぉふぉふぉ・・確かにそうじゃな。
それにしてもお前達も良い面構えになったの。これもミハエルのお陰じゃ。感謝しきれんわい。
ミハエルよ。困ったことがあったら遠慮なく言ってくるのじゃぞ?」
「はい!ありがとうございます。それではお元気で!」
ミハエルとアンリルは深々と頭を下げて部屋を出て行くのだった。
「父上。引き止めなくて良かったのですか?」
リベルトが正面を向いたまま呟いた。
クラインド王は玉座に身体を預けて肩を落とす。
「リベルトよ。わしとてそうしたいのは山々なのだ。
ミハエルはもはやこのクラインド王国で知らぬ者がいない程の存在じゃ。その上悪党共の抑止力にもなっておる。
しかしの・・ミハエルは母ソフィアが1番の存在なのだ。ミハエルの為とは言え3年も離れ離れにしてしまったのだ。これだけは誰にも止められんのじゃ。・・・分かってくれリベルトよ。」
「・・はい。父上・・・」
リベルトは残念そうに閉められた扉を見つめるのであった。
アンリルは母ソフィアの元に帰るべく足取り軽く歩くミハエルを微笑みながら眺めていた。
こうして見るとまだ子供なのに・・・だけど周りに与える影響が半端ないのよね・・・
ミハエルはこの2年でクラインド王国の騎士団や学園の先生達や生徒達を鍛えて〈暗黒神ルビラス〉の復活に備えていたのだ。
もちろんアンリルを始めサリア、カリン、ライナード、サーシャもここに来た時とは比べものにならないぐらい強くなっていた。
「ミハエルくーーん!!挨拶は終わった?」
サーシャが手を振りながら駆け寄ってくる。
「うん。終わったよ!!さあ!行こうか!」
ミハエルがサーシャと一緒に出口に向かって歩き出した。
するとアンリルは背後に気配を感じて振り向くと柱の影に隠れる者が居た。
あー・・・あの子か・・・仕方ない・・
「ミハエル君!ちょっと待って!」
「えっ?何?」
ミハエルが振り返るとアンリルが親指で柱を指差す。
「もう1人挨拶したい子が居るみたいよ!ねえ?クレラ様?」
「ひゃうっ!!」
第一王女クレラは突然声をかけられて咄嗟に声を上げてしまった。
そして諦めてもじもじしながら柱の影から姿を現した。
クレラも〈大司祭〉の称号を持ちミハエルの指導を受けてこの世界屈指の聖魔法使いとなっていた。
その中でミハエルに尊敬の念を抱いていたがいつの間にかそれが違う感情となっていた。
「クレラ様!ここに見えたのですか!お姿が見えなかったので心配していたところです。」
ミハエルはクレラの元に歩み寄る。
するとクレラの顔が真っ赤になり俯いてしまう。
「あの・・その・・き、気を付けて・・・」
ミハエルの顔をまともに見る事が出来ずにチラチラと見ていた。
「はい。ありがとうございます。クレラ様もお元気で。」
ミハエルはニッコリ笑って手を振るとクレラに背を向けた。
「あ、・・・ま、また・・会えますか?!」
クレラが思わず声を上げるとミハエルは立ち止まり振り向いて笑う。
「はい!もちろん!また遊びに来ますよ!!」
「は、はい!待ってます!」
クレラの顔がパッと明るくなり大きく手を振って見送るのであった。
やっぱり・・・ク、クレラ様も・・・
サーシャは複雑な表情で馬車に向かうのだった。
「さあ。お嬢様。一度セルフィア王国へ戻るお約束です。」
執事のアルノーがムスッと頬を膨らませているサーシャに言い聞かせていた。
2年前にクラインド王の計らいで皆で住むようにと屋敷を一軒貸してくれたのだ。
だがサーシャは家から半ば強引に飛び出して来ていたので、アルノーはこのままここに住む訳にはいかないと説得したのだがサーシャはクラインド王の前で嫌だと駄々をこねた。
その結果クラインド王が中に入りセルフィア王国の両親に訳を話しミハエルが学園を卒業するまで言う約束でクラインド王国に留まる事になったのだ。
そして屋敷の執事としてアルノーも残ったのだ。
ミハエルはサーシャの手を取り優しく話しかける。
「サーシャ。一度お父さんとお母さんに顔を見せて安心させてあげた方がいいよ。サーシャが帰って来るのを首を長くして待ってると思うよ。」
ミハエル自身も母ソフィアが心配であり早く会いたいと願っていた。だからサーシャの両親の気持ちが痛いほど分かるのだ。
「う、うん。・・・分かったわ。家に帰ってパパとママに改めて許可をもらって絶対戻って来るわ!!」
サーシャはここぞとばかりにミハエルに抱きつき胸の谷間にミハエルを収める!
「ばぶっ!!」
「ミハエル君!先に行って待っててね!!」
ひとしきりミハエルを抱きしめるとサーシャは笑顔で手を振りながら馬車に乗り込んで行った。
「ふう。じゃあ僕達も行こうか!!」
ミハエルが振り返るとアンリルを始め皆が半笑いになる。
「ミ、ミハエル君・・顔がにやけてるわよ・・・ぷぷっ・・・」
アンリルが吹き出すと皆も笑い出した。
「ふふっ・・ミハエルの顔がーー!!だらしなくなってるぅぅぅ!!!」
サリアが指を差しながら笑うとカリンは両手で胸を隠して身体を捩る。
「ミハエル君ったら・・・ふふふっ・・・まだまだ子供ね・・・」
「あーっはっはっは!!帰ったらお母さんに報告しないといけないね!!」
ライナードが意地悪く言うと顔を赤くしたミハエルが残像を残してライナードの前に現れる!
「母さんに変な事言っちゃあ駄目だからね!!」
「さて・・どうしようかなぁ!!!ほっ!」
ライナードも残像を残して消えるとそれを追ってミハエルも消える!
「へぇーー!ライナードやるじゃない!!指輪を二つ外したミハエル君の動きに付いて行ってるわ!!」
すると中々終わらない追いかけっこに剛を煮やしたアンリルが構える。
「でも・・・いい加減にしなさいよっと!!」
「「あうっ!!!」」
アンリルは2人を目で追うと難なく捕まえてしまった。
「えっ?!・・あ、あの2人を捕まえた?!・・さ、さすがと言うしかないわ・・・アンリルさん。」
「そ、そうね・・・目で追うのが精一杯だったのにね・・・アレを捕まえるの?」
サリアとカリンが顔を見合わせて自分の修行が足りないとため息をつくのであった。
「な、なあ・・・今何が起こったんだ?」
「さ、さあ・・突然消えたり・・アンリル殿がミハエル殿とライナード殿を突然両手に・・・分からん・・・」
門番の兵士2人が目の前で起こった事が理解出来ずに立ち尽くしていた。
それもその筈である。2年間でアンリル達のレベルは一人でこの世界を凌駕出来るほどになっていた。
そして当の本人達は比較対象がミハエルの為 にその自覚が無い集団になっていたのであった。
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