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第82話 天空神の加護
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森の騒めきが収まると緑の葉をモチーフにしたワンピース姿の神秘的な女性と岩の肌を持つ筋骨隆々の男がサルビナの前に現れる。
(主様、敵意ある魔物の殲滅は完了いたしました。・・しかし魔人の指揮官は傷を負わせたものの取り逃してしまいました。申し訳ありません。)
〈森の精霊〉ドリアードが申し訳無さそうに軽く頭を下げる。
(しかしながら主様、指揮官の傷は浅いものではありません。右腕を肩から無くしております。戦力にはならんでしょう。)
〈大地の精霊〉ノームが得意げに胸を張る。
「流石ね!2人共ありがとう!助かったわ!またよろしくね!」
(お安い御用ですわ。)
(また何なりとお呼びください。)
ドリアードとノームはその場から消えるのであった。
サルビナは皆に振り返る。
「森のお掃除は終わったわよ!さあ!行きましょう!!」
サルビナの陽気な声が響くが兵士達の中には一体何が起こったのか分からない者が多くいた。
(森の掃除が終わった・・・?!どう言う事だ?!)
(た、多分、待ち伏せしていた敵を倒したって事じゃ無いのか?!)
(どーやってだよ?!みんな何もしてない様に見えたぞ?!このまま森に入って大丈夫なのか?!)
(馬鹿!!知らないのか?!サルビナ様は精霊使いなんだよ!奴等は精霊が棲む森の中で俺達に敵意と悪意を向けたから全滅したのさ!)
(なっ?!そ、そんな簡単にか?!悪意か・・お、俺・・飲み屋の女の子と・・よ、嫁に向けた悪意は関係無いよな・・・?)
(そ、そうなのか?!そ、それじゃあ・・お前死ぬんじゃね?!・・でも・・す、凄い・・・俺・・今度から森の木におしっこするのやめよう・・・)
兵士達はサルビナの力に尊敬と怯えを感じて複雑な感情を覚えるのであった。
「流石ね。奴等はいきなり森と大地に襲われたのね・・・考えただけでもゾッとするわ・・・」
アリナスが森を見ながら肩をすくめると皆も森に入る時は精霊達を怒らせないようにしようと心に決めるのであった。
メイシスも森ごと攻撃を仕掛けようと考えた自分に反省していた。
(危なかったわ・・サルビナが言ってくれなかったら・・2度と森に入れなかったわね・・・私はもっと皆んなを頼りにして良いのかな・・・)
メイシスは自分が1人で戦っていた時の事を思い出していた。全て自分で決めて良くも悪くも行動していたのだ。
そして同じ志の仲間が出来てからもその癖が抜け切らずに度々皆から怒られていた。
そしてメイシスは改めて思う。肩に入った力を下ろそうと・・・そして皆と仲間として同じ目線で語り合おうと思うのであった。
「おう!!俺は〈天空神の加護〉ローグだ!お前が俺の子孫か?!よろしくな!!・・・と言いたい所だが・・お前は俺の子孫じゃ無いんだよ!」
ライナードは突然現れた赤毛の男の勢いに押されて唖然としていた。
しかし“子孫じゃ無い“と言われ聞かずには居られなかった。
「それはどう事ですか?!貴方の子孫じゃなかったら僕は何ですか?」
「まあそう興奮するな!今から説明してやるからよ!!」
ローグは笑顔を絶やさず意味ありげにニコニコ笑っていた。
「取り敢えずお前の名前を聞いていいか?」
「僕はライナードです。それより説明をお願いします!」
「お前はせっかちだな?!いいか?〈天空神の加護〉を持つ者は天界の守護者〈大天空神〉フェリオス様の加護を受けているんだ。・・・って・・立ち話も何だから座れよ。」
気付くと公園にある様な水色のベンチが置いてあった。
「あ、はい。ありがとうございます。」
ライナードが座るとローグは勢いよくドカッと隣りに座り話を続けた。
「あの1200年前の戦いでな、大勢の人間が死んだんだよ。その時に何が起こったかと言うと、冥界に人間の魂が大量に殺到して大混乱を起こしたんだ。
普通は冥界で天界と獄界へ行く人間を49日間かけて振り分けるんだが、〈大冥界神ハーデス〉様は処理が追い付かずに事もあろうに大量の人間の魂に〈神の加護〉を付けて纏めて転生させてしまったんだ・・・」
「待った!ローグさん。い、今の話だと・・人が死んだ後の話だよね・・」
「そうだぞ。それがどうした?」
ローグは当然の様な顔をしてライナードを見る。
「い、いえ・・僕は人が死んだらどうなるんだろうってずっと考えていたんです。人の死が平等に訪れて死んだ後も平等なのかなってね。」
「はっはっはっ!それは無いな!神はちゃんと見ているぞ!?」
ローグが天を仰いで笑いライナードの顔を“お前はどうだ?“と覗き込む。
はは・・やっぱり・・死は平等だけど死んだ後は平等じゃ無いんだね。なんか少しホッとしたよ。
・・・悪党は死んだら地獄に落ちないとね。
「まあ、そこでだ。天界に行くべき魂は〈大天界神〉ゼロムス様がその魂の生前の行いに応じてステータスを増やしたりスキルを増やしたりするんだよ。さらに行いが良ければ〈神の加護〉を付けて生まれ変わらせるんだ。
だが、ハーデス様の行いによって良い魂も悪い魂も平等に転生されちまったんだよ。それにはゼロムス様も憤慨したが冥界の有様を見たゼロムス様はハーデス様を責められなかったんだ。そこで〈暗黒神ルビラス〉を止める為に天界から地上に転移したのが俺って訳さ。」
ローグは胸を張って親指を自分に向ける。
「えぇっ?!天界から?!じゃ、じゃあローグさんは神様なの?!」
「いやいや!俺はゼロムス様の側近であるフェリオス様の部下だ。神ではないんだ。」
「そ、そうなんだ・・・でも僕達とは違う世界の人って事だよね・・・じ、じゃあ僕はローグさんの子孫じゃ無かったらどう言う存在なんですか?!」
「ふ、ふ、ふ・・・それはな、さっきゼロムス様が魂を判別するって言ったよな?その魂の中でゼロムス様が目を見張るほどの素晴らしい魂が二つあったんだ。その魂に出来得る最高のステータスを与えて〈天空神の加護〉で転生させたのがお前だよ・・ライナード。そして〈天空神の加護〉を持つ者は地上の監視を宿命としているんだ!数年後に復活する〈暗黒神ルビラス〉を再び封印する為にもっと力を付けるんだ!!」
ローグがビシッとライナードを指差す。
ライナードは取り敢えず言いたい事はわかったが気になる事はそこでは無かった。
「な、何となく分かったよ。要するにこの力で〈暗黒神ルビラス〉を倒せって事だよね・・で、所で・・もう一つの魂はどうなったの?」
「ふふっ・・・やっぱり気になったか?そいつには・・もうお前達は会っているんだよ・・」
ローグは顎をしゃくりニヤリと笑うのであった。
(主様、敵意ある魔物の殲滅は完了いたしました。・・しかし魔人の指揮官は傷を負わせたものの取り逃してしまいました。申し訳ありません。)
〈森の精霊〉ドリアードが申し訳無さそうに軽く頭を下げる。
(しかしながら主様、指揮官の傷は浅いものではありません。右腕を肩から無くしております。戦力にはならんでしょう。)
〈大地の精霊〉ノームが得意げに胸を張る。
「流石ね!2人共ありがとう!助かったわ!またよろしくね!」
(お安い御用ですわ。)
(また何なりとお呼びください。)
ドリアードとノームはその場から消えるのであった。
サルビナは皆に振り返る。
「森のお掃除は終わったわよ!さあ!行きましょう!!」
サルビナの陽気な声が響くが兵士達の中には一体何が起こったのか分からない者が多くいた。
(森の掃除が終わった・・・?!どう言う事だ?!)
(た、多分、待ち伏せしていた敵を倒したって事じゃ無いのか?!)
(どーやってだよ?!みんな何もしてない様に見えたぞ?!このまま森に入って大丈夫なのか?!)
(馬鹿!!知らないのか?!サルビナ様は精霊使いなんだよ!奴等は精霊が棲む森の中で俺達に敵意と悪意を向けたから全滅したのさ!)
(なっ?!そ、そんな簡単にか?!悪意か・・お、俺・・飲み屋の女の子と・・よ、嫁に向けた悪意は関係無いよな・・・?)
(そ、そうなのか?!そ、それじゃあ・・お前死ぬんじゃね?!・・でも・・す、凄い・・・俺・・今度から森の木におしっこするのやめよう・・・)
兵士達はサルビナの力に尊敬と怯えを感じて複雑な感情を覚えるのであった。
「流石ね。奴等はいきなり森と大地に襲われたのね・・・考えただけでもゾッとするわ・・・」
アリナスが森を見ながら肩をすくめると皆も森に入る時は精霊達を怒らせないようにしようと心に決めるのであった。
メイシスも森ごと攻撃を仕掛けようと考えた自分に反省していた。
(危なかったわ・・サルビナが言ってくれなかったら・・2度と森に入れなかったわね・・・私はもっと皆んなを頼りにして良いのかな・・・)
メイシスは自分が1人で戦っていた時の事を思い出していた。全て自分で決めて良くも悪くも行動していたのだ。
そして同じ志の仲間が出来てからもその癖が抜け切らずに度々皆から怒られていた。
そしてメイシスは改めて思う。肩に入った力を下ろそうと・・・そして皆と仲間として同じ目線で語り合おうと思うのであった。
「おう!!俺は〈天空神の加護〉ローグだ!お前が俺の子孫か?!よろしくな!!・・・と言いたい所だが・・お前は俺の子孫じゃ無いんだよ!」
ライナードは突然現れた赤毛の男の勢いに押されて唖然としていた。
しかし“子孫じゃ無い“と言われ聞かずには居られなかった。
「それはどう事ですか?!貴方の子孫じゃなかったら僕は何ですか?」
「まあそう興奮するな!今から説明してやるからよ!!」
ローグは笑顔を絶やさず意味ありげにニコニコ笑っていた。
「取り敢えずお前の名前を聞いていいか?」
「僕はライナードです。それより説明をお願いします!」
「お前はせっかちだな?!いいか?〈天空神の加護〉を持つ者は天界の守護者〈大天空神〉フェリオス様の加護を受けているんだ。・・・って・・立ち話も何だから座れよ。」
気付くと公園にある様な水色のベンチが置いてあった。
「あ、はい。ありがとうございます。」
ライナードが座るとローグは勢いよくドカッと隣りに座り話を続けた。
「あの1200年前の戦いでな、大勢の人間が死んだんだよ。その時に何が起こったかと言うと、冥界に人間の魂が大量に殺到して大混乱を起こしたんだ。
普通は冥界で天界と獄界へ行く人間を49日間かけて振り分けるんだが、〈大冥界神ハーデス〉様は処理が追い付かずに事もあろうに大量の人間の魂に〈神の加護〉を付けて纏めて転生させてしまったんだ・・・」
「待った!ローグさん。い、今の話だと・・人が死んだ後の話だよね・・」
「そうだぞ。それがどうした?」
ローグは当然の様な顔をしてライナードを見る。
「い、いえ・・僕は人が死んだらどうなるんだろうってずっと考えていたんです。人の死が平等に訪れて死んだ後も平等なのかなってね。」
「はっはっはっ!それは無いな!神はちゃんと見ているぞ!?」
ローグが天を仰いで笑いライナードの顔を“お前はどうだ?“と覗き込む。
はは・・やっぱり・・死は平等だけど死んだ後は平等じゃ無いんだね。なんか少しホッとしたよ。
・・・悪党は死んだら地獄に落ちないとね。
「まあ、そこでだ。天界に行くべき魂は〈大天界神〉ゼロムス様がその魂の生前の行いに応じてステータスを増やしたりスキルを増やしたりするんだよ。さらに行いが良ければ〈神の加護〉を付けて生まれ変わらせるんだ。
だが、ハーデス様の行いによって良い魂も悪い魂も平等に転生されちまったんだよ。それにはゼロムス様も憤慨したが冥界の有様を見たゼロムス様はハーデス様を責められなかったんだ。そこで〈暗黒神ルビラス〉を止める為に天界から地上に転移したのが俺って訳さ。」
ローグは胸を張って親指を自分に向ける。
「えぇっ?!天界から?!じゃ、じゃあローグさんは神様なの?!」
「いやいや!俺はゼロムス様の側近であるフェリオス様の部下だ。神ではないんだ。」
「そ、そうなんだ・・・でも僕達とは違う世界の人って事だよね・・・じ、じゃあ僕はローグさんの子孫じゃ無かったらどう言う存在なんですか?!」
「ふ、ふ、ふ・・・それはな、さっきゼロムス様が魂を判別するって言ったよな?その魂の中でゼロムス様が目を見張るほどの素晴らしい魂が二つあったんだ。その魂に出来得る最高のステータスを与えて〈天空神の加護〉で転生させたのがお前だよ・・ライナード。そして〈天空神の加護〉を持つ者は地上の監視を宿命としているんだ!数年後に復活する〈暗黒神ルビラス〉を再び封印する為にもっと力を付けるんだ!!」
ローグがビシッとライナードを指差す。
ライナードは取り敢えず言いたい事はわかったが気になる事はそこでは無かった。
「な、何となく分かったよ。要するにこの力で〈暗黒神ルビラス〉を倒せって事だよね・・で、所で・・もう一つの魂はどうなったの?」
「ふふっ・・・やっぱり気になったか?そいつには・・もうお前達は会っているんだよ・・」
ローグは顎をしゃくりニヤリと笑うのであった。
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