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第65話 正面から
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謁見の間に男が飛び込んで跪く!
「報告します!」
「うむ。何事だ?」
セルフィア王が背もたれに身を任せる。
「はっ!クラインド王国からアンリル親子が到着しました・・・」
「何?!来たか!!よし!早速捕らえてここへ連れて来るのだ!!」
セルフィア王が嬉々として捲し立てるが、男は目を泳がせて悪い報告をする覚悟を決め兼ねていた・・・
「どうした?!何をしておる?!」
男は仕方なく意を決して口を開く・・
「あ、あの・・・け、警備隊が捕らえようとしましたが・・・あの・・その・・・」
セルフィア王は男の歯切れの悪い動揺ぶりに嫌な予感に襲われる・・・
まさか・・・
「おい!!貴様!!はっきり言え!!どうなったのだ?!」
男が肩をビクつかせる!
「は、はいぃぃ!!け、警備隊隊長キース殿と副隊長ドミル殿が・・両腕切断の重傷です・・・」
セルフィア王の悪い予感が的中する。
「なっ?!なっ?!なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!!あの2人がか?!一体女子供に何を手こずっておるのだ?!」
セルフィア王は玉座から立ち上がり男を怒鳴りつける!!
「は、話しによれば警備隊の全力の魔法も届かず、特に子供の剣技は誰も目視出来なかったそうです・・・」
セルフィア王の眉間に皺が寄る・・・
なに?!け、剣技だと・・・?!魔法では無いのか?もう訳がわからん・・・
「そ、それと・・賢者アンリルが魔力測定をした所・・・石板が金色に光り砕けたそうです・・・」
「な、なんだとぉぉぉぉぉ!!!!何故それを早く言わんのだぁぁぁぁぁぁ!!!!何が何でもここへ連れて来い!!絶対連れて来いぃぃぃ!!!手段は選ばん!!ここへ連れて来い!!!」
セルフィア王は男の目の前まで駆け寄り胸ぐらを掴んで揺らした!
「お、落ち着いて・・ください!アンリル親子は・・真っ直ぐ・・ここへ・・向かって・・います・・・」
男はカクンカクンと揺らされながら報告を続ける・・・
「何?!」
セルフィア王は動きを止め男を放すと冷静に考える・・・
そうだ・・・わしが呼んだのだ・・・捕える必要は無かった・・・つい・・頭に血が昇って・・・わ、忘れておったわ・・・そうなれば奴等は敵意を持ってここへ来るはずだ・・・
セルフィア王はその場で叫ぶ!!
「今から警備レベルを最高レベルまで引き上げよ!!これは訓練では無いぞ!!
今からここへ得体の知れない力を持った2人がやって来る!慎重に!厳重に!警戒しながらここへ連れて来るのだ!!良いな?!」
「はっ!!!」
そこにいた文官や護衛達がその場で跪くのであった。
ミハエル達はサーシャを家まで送って来ていた。
「ねえ、ミハエル君。家によって一息付かない?疲れたでしょう?」
「うーん・・僕も出来ればそうしたいんだけど・・あの騒ぎでセルフィア王がどう動くか分からないからね?
だから先にセルフィア王に会って来るよ。」
呼んでおいて捕らえようとする王だからね。サーシャの家に居れば押しかけて来るかもしれない。
それなら先に話を付けた方がいいよね。
サーシャは少し残念な顔をするが納得した様に顔を上げる。
「うん!じゃあ終わったら来てよね!待ってるから!・・気を付けてね・・・」
「うん。それじゃあ行ってくるよ。」
ミハエルは上目使いでもじもじしているサーシャに手を振りながら歩き出すのだった。
アンリルは少し寂しそうにするサーシャを横目で見ていた・・
はぁ・・ミハエル君は女の子の扱いはまだまだのようね・・・女心が分かってないわね・・・
アンリルはミハエルの背中を見ながら軽くため息をつくのだった・・
「うん?誰か来るよ・・3人・・悪意は無いね・・・」
ミハエル達の正面から女性が男を両脇に連れて近づいて来る。
(アンリルさん知ってる人?)
(えぇ・・何処かで会ったような気がする・・・)
女性は茶色の長い髪で身長がすらっと高く見た目はきつそうな性格を思わせるが口元には笑みを浮かべていた。
「お久しぶりねアンリルさん。その節は助かったわ。」
「・・・えぇ・・お久しぶりね・・・」
えっと・・・誰だっけ・・名前が・・・出てこない・・・
「こちらがミハエルく・・いえ・・ミハエル様ですね?私はリベルナと申します。
ロゼルド様から報告を受けております。こちらにお越しになるとの事でしたのでご挨拶に参上いたしました。お見知り置きを。」
リベルナと男2人が深々とお辞儀をする。
あーーーっ!!そうそう!!あの時の!あの頃はまだ若くて下っ端だったから印象が薄かったのよね!!
「あー!ロゼルドさんのお仲間さんね!!こちらこそよろしくね!
僕達は今急いでいるからまた後で顔を出すよ。」
綺麗な人だね。胸も大きいし・・・
「はい。王宮に行かれるのですね。しかし今、王宮の入り口は物々しい雰囲気で警備が厳重になっています。少々危険かと思いますが・・・」
すると名前を思い出してスッキリしたアンリルが胸を張る!
「リベルナ!私達はセルフィア王に正式に呼ばれて来たのよ!コソコソする理由が無いわ!それに・・・怒らせたらどっちが危険か教えてあげないとね?」
広げた手の平から魔力が溢れ出す。
「聞いての通りだよリベルナさん。僕達は堂々と正面から行くよ。・・もしこれ以上ちょっかいを出してくるなら・・・降りかかる火の粉を払うだけだよ!」
ミハエルがニッと笑うとリベルナは少し驚いた顔をする。
王宮の厳重な警備は警備隊の比では無いのである。門兵1人とっても警備隊長以上の実力者であり、特に宮廷魔道士の〈八星魔道士〉は〈神の使人〉の中でも選りすぐりの実力者達である。
そんな敵意剥き出しの猛者達が警備する王宮に知ってか知らずか正面から乗り込もうと言うのである。
リベルナは無謀な選択ではないかと心に思うのであった。
しかし、リベルナは何処かで期待している自分が居た。
ロゼルド様が惚れ込んだミハエル様の実力・・見るにはいい機会かも知れないわね・・・面白くなって来たわ・・・こんなに早くクラインド王国で噂のミハエル様の力を見られるなんて・・・
王宮に向かって歩き出したミハエル達の背中を口元を緩めながら眺めるのであった。
「報告します!」
「うむ。何事だ?」
セルフィア王が背もたれに身を任せる。
「はっ!クラインド王国からアンリル親子が到着しました・・・」
「何?!来たか!!よし!早速捕らえてここへ連れて来るのだ!!」
セルフィア王が嬉々として捲し立てるが、男は目を泳がせて悪い報告をする覚悟を決め兼ねていた・・・
「どうした?!何をしておる?!」
男は仕方なく意を決して口を開く・・
「あ、あの・・・け、警備隊が捕らえようとしましたが・・・あの・・その・・・」
セルフィア王は男の歯切れの悪い動揺ぶりに嫌な予感に襲われる・・・
まさか・・・
「おい!!貴様!!はっきり言え!!どうなったのだ?!」
男が肩をビクつかせる!
「は、はいぃぃ!!け、警備隊隊長キース殿と副隊長ドミル殿が・・両腕切断の重傷です・・・」
セルフィア王の悪い予感が的中する。
「なっ?!なっ?!なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!!あの2人がか?!一体女子供に何を手こずっておるのだ?!」
セルフィア王は玉座から立ち上がり男を怒鳴りつける!!
「は、話しによれば警備隊の全力の魔法も届かず、特に子供の剣技は誰も目視出来なかったそうです・・・」
セルフィア王の眉間に皺が寄る・・・
なに?!け、剣技だと・・・?!魔法では無いのか?もう訳がわからん・・・
「そ、それと・・賢者アンリルが魔力測定をした所・・・石板が金色に光り砕けたそうです・・・」
「な、なんだとぉぉぉぉぉ!!!!何故それを早く言わんのだぁぁぁぁぁぁ!!!!何が何でもここへ連れて来い!!絶対連れて来いぃぃぃ!!!手段は選ばん!!ここへ連れて来い!!!」
セルフィア王は男の目の前まで駆け寄り胸ぐらを掴んで揺らした!
「お、落ち着いて・・ください!アンリル親子は・・真っ直ぐ・・ここへ・・向かって・・います・・・」
男はカクンカクンと揺らされながら報告を続ける・・・
「何?!」
セルフィア王は動きを止め男を放すと冷静に考える・・・
そうだ・・・わしが呼んだのだ・・・捕える必要は無かった・・・つい・・頭に血が昇って・・・わ、忘れておったわ・・・そうなれば奴等は敵意を持ってここへ来るはずだ・・・
セルフィア王はその場で叫ぶ!!
「今から警備レベルを最高レベルまで引き上げよ!!これは訓練では無いぞ!!
今からここへ得体の知れない力を持った2人がやって来る!慎重に!厳重に!警戒しながらここへ連れて来るのだ!!良いな?!」
「はっ!!!」
そこにいた文官や護衛達がその場で跪くのであった。
ミハエル達はサーシャを家まで送って来ていた。
「ねえ、ミハエル君。家によって一息付かない?疲れたでしょう?」
「うーん・・僕も出来ればそうしたいんだけど・・あの騒ぎでセルフィア王がどう動くか分からないからね?
だから先にセルフィア王に会って来るよ。」
呼んでおいて捕らえようとする王だからね。サーシャの家に居れば押しかけて来るかもしれない。
それなら先に話を付けた方がいいよね。
サーシャは少し残念な顔をするが納得した様に顔を上げる。
「うん!じゃあ終わったら来てよね!待ってるから!・・気を付けてね・・・」
「うん。それじゃあ行ってくるよ。」
ミハエルは上目使いでもじもじしているサーシャに手を振りながら歩き出すのだった。
アンリルは少し寂しそうにするサーシャを横目で見ていた・・
はぁ・・ミハエル君は女の子の扱いはまだまだのようね・・・女心が分かってないわね・・・
アンリルはミハエルの背中を見ながら軽くため息をつくのだった・・
「うん?誰か来るよ・・3人・・悪意は無いね・・・」
ミハエル達の正面から女性が男を両脇に連れて近づいて来る。
(アンリルさん知ってる人?)
(えぇ・・何処かで会ったような気がする・・・)
女性は茶色の長い髪で身長がすらっと高く見た目はきつそうな性格を思わせるが口元には笑みを浮かべていた。
「お久しぶりねアンリルさん。その節は助かったわ。」
「・・・えぇ・・お久しぶりね・・・」
えっと・・・誰だっけ・・名前が・・・出てこない・・・
「こちらがミハエルく・・いえ・・ミハエル様ですね?私はリベルナと申します。
ロゼルド様から報告を受けております。こちらにお越しになるとの事でしたのでご挨拶に参上いたしました。お見知り置きを。」
リベルナと男2人が深々とお辞儀をする。
あーーーっ!!そうそう!!あの時の!あの頃はまだ若くて下っ端だったから印象が薄かったのよね!!
「あー!ロゼルドさんのお仲間さんね!!こちらこそよろしくね!
僕達は今急いでいるからまた後で顔を出すよ。」
綺麗な人だね。胸も大きいし・・・
「はい。王宮に行かれるのですね。しかし今、王宮の入り口は物々しい雰囲気で警備が厳重になっています。少々危険かと思いますが・・・」
すると名前を思い出してスッキリしたアンリルが胸を張る!
「リベルナ!私達はセルフィア王に正式に呼ばれて来たのよ!コソコソする理由が無いわ!それに・・・怒らせたらどっちが危険か教えてあげないとね?」
広げた手の平から魔力が溢れ出す。
「聞いての通りだよリベルナさん。僕達は堂々と正面から行くよ。・・もしこれ以上ちょっかいを出してくるなら・・・降りかかる火の粉を払うだけだよ!」
ミハエルがニッと笑うとリベルナは少し驚いた顔をする。
王宮の厳重な警備は警備隊の比では無いのである。門兵1人とっても警備隊長以上の実力者であり、特に宮廷魔道士の〈八星魔道士〉は〈神の使人〉の中でも選りすぐりの実力者達である。
そんな敵意剥き出しの猛者達が警備する王宮に知ってか知らずか正面から乗り込もうと言うのである。
リベルナは無謀な選択ではないかと心に思うのであった。
しかし、リベルナは何処かで期待している自分が居た。
ロゼルド様が惚れ込んだミハエル様の実力・・見るにはいい機会かも知れないわね・・・面白くなって来たわ・・・こんなに早くクラインド王国で噂のミハエル様の力を見られるなんて・・・
王宮に向かって歩き出したミハエル達の背中を口元を緩めながら眺めるのであった。
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