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第54話 理由

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「ミハエル君、ヴェイグ君、アスラン君、私の生徒達を守ってくれてありがとう。」

3人纏めてサリエル校長に抱きしめられた。

「校長先生!そんなの当たり前だぜ!学園にいる全員が仲間なんだ!!それを守るのがSクラスの義務なんだ!!だから礼なんか要らない!!」

そう言うとヴェイグが胸を張った。

サリエル校長は嬉しかった。最初はヴェイグはクラスで1番の問題児だと思っていた。
だがミハエルと南の森で戦ってから変わったのだ。
クラインド王がミハエルを学園に入れたがった理由が分かった気がしたのだった。

「ヴェイグ君・・あなた変わったわね。あなたは私の誇りよ。これからも弱い者の味方であって欲しいわ。」

「おう!!任せとけ!!」
ヴェイグが胸を叩くのであった。

サリエル校長は微笑みながら立ち上がると、だらしなく汚物に塗れた3人を見下ろす。

「さて。あの馬鹿共をクラインド王に突き出しに行きましょうか。ミハエル君は付いて来てね。


クラインド学園を襲撃した3人は警備隊に装備と衣服を剥ぎ取られ両腕を後ろで縛られると川に突き飛ばされて汚物で汚れた身体を洗われていた。
その後薄い灰色の囚人服を着せられてクラインド王の前に引きずり出されたのだった。

クラインド王は3人を見下ろし怒りを滲ませて静かに口を開いた。

「貴様等・・・よくも我が国の民を・・・それも子供達を・・・許さんぞ・・・。
誰の差金じゃ?!今のわしは気が短い。今すぐ答えねば、民衆の前に引き摺り出して晒し首にしてくれるわ!!3秒だけ待ってやる!!
1・・2・・さ・・」

「セ、セルフィア王です!!!」

「レイヤ!!お前!!!」

レイヤは後ろ手に縛られ床に頭をつけたまま叫んだ。

「私はこんな所で死ぬのは嫌なの!!こんな恥を晒して・・・惨めに死ぬのは嫌!!」

「私も嫌よ!!あんな国の為に死ぬのは嫌よ!!私は〈召喚士〉は魔法じゃないって蔑まれて生きて来たのよ?!なのに都合良く使われて捨てられるのは嫌!!」

やはり・・セルフィア王の差金か・・・

「ほう。お前等2人はわしの質問に嘘偽りなく答えるのじゃな?」

「は、はい!知っている事は全部お話しします。」
「私も嘘、偽りなくお話しします!!」

2人は必死に答えた。セルフィア王国での肩身の狭い生活、末端の尻尾切りのような仕事しか与えられず死んだとしてもなんとも思われない扱いを受け続けた国に義理立てして死ぬつもりは無いのだった。

「うむ。分かった。して、セルログ。貴様はどうじゃ?」

「くっ・・・」

セルログはセルフィア王国の騎士団の1人である。国を売るわけにはいかない。ここで口を割れば裏切り者となり騎士団にも居れなくなるのだ。

「・・・俺は・・何も知りません・・」 

クラインド王は目を細める。

「ほう・・忠義じゃのぉ・・・じゃがの・・・貴様は晒し首じゃ!!!警備隊!!連れて行け!!」

「はっ!」

警備隊6人がセルログの両脇を固めて引きずって行く。

セルログは忠義を貫けばどこかで助けてもらえると淡い期待していた・・・しかし無情な判決に今更ながら動揺する。

「まっ、待ってくれ!!俺は!俺は!命令されただけなんだ!!サ、サリエル殿!!同郷のよしみだ!!助けてくれ!!何か言ってくれぇぇぇ!!!」

サリエル校長は鼻で笑い見向きもしなかった。
あんなクズと同郷と言われる事すら恥と思ったのだ。

セルログはみっともなく叫びながら部屋から連れ出されて行くのだった。

「さあ。知っている事を全て話せ。」

レイヤは顔を上げて静かに話し出す。

「はい。私はレイヤと申します。発端はアーバンス伯爵の長女がクラインド王国で見た魔法の話しでした。
彼女は自分を助けてくれたミハエルと言う少年が見た事もない魔法を使っていたと周りに話していたのです。
その話がセルフィア王の耳に入り彼女から詳しく話を聞いた後、私達が集められました。
我が国でも使える者がいない魔法を他の国で使われるのは魔法国家として都合が悪い。
調査してそれが本当なら・・・始末しろ・・と・・・」

レイヤはクラインド王の反応を予想して俯いた。

クラインド王の顔色が真っ赤に変わっていく。

「ふ、ふざけおって・・・自分が使えぬから使える者を殺せじゃと!!
ミハエルを招待したのはお前等が失敗した時の保険か?!もしくは隠れ蓑か?!
セルフィア王・・・許さんぞ!!目にもの見せてくれるわ!!」

クラインド王が勢いよく立ち上がると、それを制すようにミハエルが手を挙げる。

「はい!王様!!僕・・セルフィア王国に行ってみようと思います!!」

クラインド王は突然の事で目を丸くしてミハエルを見る。

「な、なじゃと?!ミハエル!お主、罠と知って行くのか?!」

すると、ミハエルの全身から魔力が滲みでて悪い顔になる。

「王様。僕も王様と同じぐらい怒っているんです・・・でも国同士で争うのはこっちにも被害がでるから良くないと思うんです。だから・・・僕が直接会って・・・僕の魔法をその身体に教えてあげようと思います・・・ふふふっ・・・」

その場にいる全員がミハエルから滲み出る魔力に触れ嫌な汗が背筋を流れて行った・・。

「そ、そうか・・ミハエルがそう言うなら・・・セルフィア王に存分に教えて差し上るのじゃ!このクラインド王の分まで頼んだぞ。」

「はい!ありがとうございます!」

ミハエルは魔力を収めてニッコリ笑った。


(セルフィア王よ・・・覚悟しておれよ・・お前が怒らせた者の力を存分に味わうがよい・・・)
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